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2022.04.29
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カテゴリ:帝銀事件
今回はゼロ年代最後の年の話である。2009年だ。ってゆーか、確かその年だったと思うんだけどテレビで、
 

 
こんな番組をやった。『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』。渡辺謙が平塚八兵衛を演じるもので、おれは何かでそれを知って「ほう。そいつは見なければ」と考えた。
 
考えたけど2夜連続の第1夜をなんとなんと見逃してしまった! おれはその頃毎日のようにパチンコを打っていたのだが、その日もまた打ちに出かけて戻ってみてから、「ああ、しまった。今日だったのか!」。このドラマ化について知るまでおれは平塚八兵衛が帝銀事件の平沢逮捕にもかかわっていたというのを知らず、これで積年の不明が晴れるかもしれないと期待しただけにガックリきた。
 
しかたなく、次の晩のをちゃんと見る。第2部は〈吉展ちゃん事件〉の話となっていて、これが実におもしろかった。ノラリクラリの小原保を落とすべく、八兵衛は自分の脚でアリバイを洗い直してこのような、
 

 
ものを何枚も書く。そうしてネタを頭に入れて期限付きの取り調べに臨み、小原がポロリと漏らした言葉の矛盾を突いて全面自供を取り付けるのだ。
 
すげえ! と思ったおれは返す返すも1夜目を見逃したのを残念に思ったが、その少し後、古本屋の軒先で100円台に、
 

 
この本があるのを見つけてゲット。すぐ読み、帝銀事件で平沢が捜査線上に浮かび逮捕に至るまでの過程を八兵衛の語る言葉で知ることになる。
 
それはそれまでおれが疑念をつのらせていたことの多くにきれいな答を与えてくれるものだった。だからおれは確信した。八兵衛がする話は本当だと。犯人は平沢で間違いないと。
 
詳しくは長い話になるのでこれから順序だてて書き直していこうと思う。今回はひとつに絞り、「どうして画家が帝銀事件なんてことをやるのか」と考えてそれがピンとこなかったけど、八兵衛の話で合点がいった。それについてだけ述べるとしよう。
 

 
これが平沢貞通で、テンペラ画の大家(たいか)という。それがそもそもよくわからなかったのだけど八兵衛によれば確かに大家なのだという。だが、大家は大家なのだが八兵衛が話すこの男は、
 
 
こんな感じの絵の大家だった。ゼロ年代の人気ドラマシリーズ『TRICK』。その中で野際陽子が演じた主人公・山田奈緒子の母親である。このキャラクターは書道の大家なのだけれども地位を利用したカネ儲けを思いついては詐欺まがいのことをやってタンマリ稼いでいる。
 
このシリーズを見てる人ならわかると思うが、どうも書道の大家であるため豪邸に住んだりなどして身を飾らなければならず、そのためカネを必要として、詐欺スレスレの商売に手を出さなければいけない事情があるような描き方がされている。悪い人間ではないし本当に悪いこともしないのだけど人を騙してカネを得るのをたのしむ性質も確かに見える。それを知る人間の眼にはそのうちとんでもないことをしでかさないとも限らぬ者のように映るキャラクターだ。
 
それが〈山田奈緒子の母〉だが、八兵衛が語るところで初めて知った平沢はどうにもこうにもこんな感じ。と言うかその一端は、
 
 
このようにオーケンと弁護士の対談の中に垣間見えてもいたのだが、あらためて見るにこれは『TRICK』のキャラまんまじゃないか。
 
平沢はそういう絵の大家だった。そしてここで弁護士は「超一流」と言っているがどうやらそれは嘘らしい。嘘と言うか、一流は一流だけど超が付くほどの一流じゃない。〈1.5流〉といったのが本当のところだったようだ。
 
「横山大観に師事した」というが師を超えたわけでなく、足元にも及ばなかった。若い頃には「気鋭の新人」ともてはやされたがすぐ落ち目になっている。つまり1.5流である。
 
その代わり30代で別の才覚を見せ始める。和服など着て歩くことで何も知らない人間に自分を大物に見せる才覚だ。カネは持っているけれど絵などわからぬ人間に絵がわかるフリをさせてあげる。それによって〈名士〉と呼ばれる地位を築く。
 
のはいいけれどその正体を知る者には「あんな野郎は」と陰口を利かれる。それが平沢貞通であり、なんだかまるで、
 
 
この男のようでもある。海原雄山。『美味しんぼ』の設定をおれは知らぬがこのキャラクターは、若い頃に陶芸の道を進んで〈人間国宝〉とされる陶芸家に師事し、1.5流くらいのところまで行くがそれより上には行けなかった人間のように描かれている。その代わりに食通として大成し、〈美食倶楽部〉という料亭を経営するまでになった。
 
までになったがそのようすをつぶさに見てきた実の息子に、
 
「あれは最低の人間です。まるで『ヤマト』のプロデューサー、西崎義展のようなやつです」
 
 
などと言われる。そうは言ってないかもしれんが『美味しんぼ』初期の海原雄山は確かに最低の人間である。岡星の弟・良三というキャラが加わるあたりから少しずつ変わってくるが、それ以前の雄山はひどい。
 
そしてどうやら八兵衛が語る平沢という人間は、〈海原雄山になりそこねた男〉のようにおれには読めた。画家としては1.5流でその先には進めない。だから別の道でなんとか大物になろうとするが、雄山と違って中途半端で欲だけ深く、甘い考えで何かやっては失敗する繰り返し。そして反省というものを知らない。だから海原雄山になれない。
 
そしてほんとにあくどいことにも思いっきり手をつけている。それが昭和日本が帝国主義国家だった時代の平沢貞通の人生だった。戦後になって今度こそ海原雄山になろうとするが、また失敗して多額の借金を抱えることに。拾萬圓からそれ以上のカネがどうしても必要だ。そして手元に青酸カリ。
 
〈毒は青酸パリダカラリー〉というヨタはもうおれには通じない。八兵衛が語る平沢こそおれが考える『第三の男』の〈第三の男〉。おれのジグゾーパズルにピタリとはまる人間だった。八兵衛の話はおれがそれまで読んできたクニャクニャの話がなぜクニャクニャだったのかをすべてきれいに説明してくれるものともなっている。
 
だからおれは確信した。犯人は平沢で間違いないと。拾萬圓のカネが欲しさに毒は少なめで〈荏原〉をやるが失敗する。巡査を呼ばれもしたために「もうやめよう」と一度は思うが、3ヵ月後に毒を増やして〈椎名町〉。
 
それが帝銀事件であり、この考えで全部説明できてしまって別に謎など残らんのだと――けれどもこの本の話はまだまだ続くぞ。次回を待て。
 







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最終更新日  2022.04.29 23:00:07
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