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2006.09.07
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カテゴリ:拙文であそぼ
カナカナカナカナ……



開け放った窓から色づいた西日と一緒にヒグラシの鳴き声が入ってきた。

もうこんな時間か、とカヨコは読みかけの本から目をあげ、傍らのカップに手を伸ばした。

淹れてからずいぶん経つアイスティーは生ぬるくなっていて、

氷の中から溶け出したミントの葉が表面を漂っている。

その中の一つを口に含んで、噛む。



カリ……



葉の端に残っていた氷がかすかな音を立てて喉の奥へ消え、

口の中にミントの苦味と清涼な香りが広がった。

背中はじっとりと汗ばんでいて、その汗に夕暮れ時の風が当たる。

汗にまでミントの香りが混じるようだ。



ただいまぁ。

近所の子供が家の扉を開ける音がする。

夕暮れ時の音、というのはどうしてこうも物悲しい響きをするのだろう。

カヨコはビルに縁取られた空を見上げた。



空は、かすかな夕焼け。

青く澄んだ空、白い雲、縁取りがわずかに赤い。

日中の熱を残した風が、カヨコの髪を撫でる。

耳元の髪がふわり、と風に乗る。



カナカナカナカナ……



また、ヒグラシが鳴いた。

ヒグラシというのは不思議なセミで、山中へ行けば昼日中でも鳴いているくせに、

街中では夕暮れ時にしか鳴かない。

だから、マンションでヒグラシを聞くときはいつも夕焼け空。



この物悲しい声を聞くと、なんとも言えず淋しい気持ちになる。

決して嫌な感じではないのだけれど、切ない想いが湧き上がる。

そして、誰かが一緒に座って、同じ夕焼けを見ているような錯覚。



腰に優しく回された腕の感触と、仄かな汗の匂い。

錯覚に身をゆだねるように、カヨコは目を閉じた。



ヒグラシと夕焼けと錯覚の恋人。

全身が包み込まれるような、大きな抱擁。

実際の恋人からは決して得られない、恍惚。

空想の中の抱擁は非の打ち所無く完璧で、カヨコを体の心からとろけさせる。



けれどその波は長くは続かず、カヨコが追いすがっても消えていってしまう。

今ここで、全身を温かく、激しく、大きく抱かれたい。

それは肉欲とは紙一重の、切実な魂の欲求。



しばらくカヨコは恍惚の名残を味わった。

夏の夕暮れは思いのほか駆け足に去っていく。

カヨコの中に残された、不思議な感覚のように。



自分の体を抱きしめたカヨコが我に返ったとき、部屋は夕闇に包まれていた。

まだ、体の中には熾きのような熱がくすぶっている。



今日は、ニンニクだ。

絶対絶対、ニンニク。

たーっぷりのニンニク。



カヨコは体の芯に残る火を形にすべく、立ち上がった。





☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



トマトのスタミナスープ



玉葱1個 人参1本 大豆水煮1缶 ニンニク1かけ 

あいびきミンチ半パック カットトマト缶1缶

水1カップ コンソメの素 塩コショウ



1.1センチ角に切った玉葱、スライスしたニンニク、ミンチを炒める。

  ちなみにたすく家では、ニンニクチップを常備、1つかみ入れます。



2.玉葱が透き通ってきたら、1センチ角に切った人参追加。

  油がまわったら、水、カットトマト缶、大豆水煮、コンソメの素追加。

  その他、ジャガイモやキノコなどを入れてもOK



3.野菜が柔らかくなるまで約20分煮る。



4.味を見て塩コショウ。出来上がり♪








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Last updated  2006.09.07 11:58:53
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