テーマ:ショートショート。(573)
カテゴリ:拙文であそぼ
山羊さんのコミュ、「同じタイトルで日記を書こう。」から。
あたし自身は、殆ど夢ってものを見ません。 見てるのかもしれないけど、覚えてない。 ぐっすり眠ってるのかもしれないけど、 夜中に何回も目が覚める細切れ睡眠のせいかもしれない。 タロウ&ハナコを両脇に、川の字で眠るから蹴られちゃうし、 子どもは何故か夜中に旅に出ちゃうから、引き止めなくちゃいけないし…… で、なかなか一度も起きずに寝るってわけに行かないのよ。 ええ、寝ても覚めてもハハオヤってのは大変なのよ(笑 というわけで、さっさと諦めて、断片化しました(ヲイ 『夢で見た場所』という言葉に繋がって浮かんできた言葉が、『天空の高み』、でした。 自分でもこの繋がりは良く分かりません。 まあ、要するに、あたしがいるトコはとってもいい天気で、 眠気を誘うぐらい暖かだよってことなのかもしれません。 そんなトコでシゴトするのは辛いっす、とか(笑 そんな断片。 ****************************** 昼下がり。 キョウコはベランダ脇の床に身を投げ出している。 ベランダの窓は細く開けてあり、春風が優しくレースカーテンを躍らせる。 カーテンをすり抜けた風は、キョウコの髪を撫でて室内に舞い込む。 少し埃っぽく乾いた風に鼻をうごめかすと、隣の敷地にある梅がほのかに匂う。 キョウコはうつぶせになって手足を伸ばした。 春の日差しは思いのほか強く、優しく、室内を照らしている。 キョウコの視界を、ひときわ強く吹いてきた風に巻き上げられたカーテンが遮る。 巻き上げられたカーテンで室内が見えなくなる代わりに、 細く空けた窓の隙間から青空が見える。 淡く深い青空に、薄くたなびく雲。 このまま、吸い込まれそうだ。 春の陽光は眠気を誘う。 春の気だるい陽と、柔らかな風、梅香。蒼穹。 このまま眠りにつけるだろうか、とキョウコは思う。 春風は睡魔になって、優しくキョウコの耳朶で囁く。 体内に残るコーヒーの残滓が睡魔の愛撫に抗いながら、 ゆるやかにまどろみの世界に落ちていく。 目を閉じると、体がふわりと浮かび上がるような感覚。 春風に誘われて、高く高く落ちていく。 今、睡魔に身を委ねれば、天空の高みへたどり着けるだろうか。 それはどうしようもなく、甘い誘惑。 全身がとろけるように、春風に浚われていく。 キョウコは睡魔の誘いを聞きながら、落ちてくるまぶたの隅で、もう一度空を見た。 小鳥が一羽、視界を横切る。 ああ、あの鳥は蒼穹へ帰っていくのだ、とキョウコは思った。 思いながら、睡魔の腕に抱きとられていく。 意識の端で、天空を夢見ながら。 春の陽射しは、少し傾きながらキョウコの背を暖めている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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