あたしはあたしの道をいく

帰って、ダーリンに手紙を書いた。

あたし、口で説明するのが本当に下手で、文章にする方が余程楽な人だから。

とりあえず、あたしがどうして煮詰まってるのか知ってほしくて、全部手紙に書いた。

久しぶりに手書きなんてことをして、手が痛くなるくらい、書いた。



じーちゃんがタロウを叩くこと。

それがとっても理不尽なことに感じられること。

じーちゃんに言わせれば、理不尽なことだと思うことが間違ってて、オカシイんだってこと。

親業や保育士の勉強を始めたあたしは、じーちゃんの方が間違ってるって知ってること。

でも、それが言えないこと。

何か言おうとすると、じーちゃんは席を蹴立てて不貞寝に向かってしまい、

とてもとても、話なんて出来る状態じゃないこと。

あたしは、子どもが理不尽に叩かれるのを黙ってみてるか、

それとも必要な手助けを断るかの選択を迫られていること。

子どもが理不尽に叩かれるのを見ているのはとても辛いことだけど、止めさせられないこと。

子どもを守るために手助けを断ったとしても、安全が保障されはしないこと。

それがとても不安なこと。

そして、「働く」という生き方に関わる問題を、

この歳になって親に強制される形で、諦めなくてはいけないことを、とても悔しく思うこと。



書いた。

書いて、書いて、書きながら泣いた。

沢山泣いて、書き終わったときには、机の上がティッシュの山だった。



だけど。



うん、それが最善の方法なんじゃないのって気がしてきた。



あたし、保育士資格を取得して転職するまで、辞めるつもり無かった。

辞めるのはいつでも出来るから、出来るだけ頑張ろうって。

とりあえず、保育士資格を取得するまでは何も考えないで居ようって。



だけど、いろんなトコに無理は来てた。



ばーちゃんの作る料理は添加物タップリで、栄養が偏ってて、メニューも偏ってた。

それをしつけも食育も何もナシで、とにかく与えてた。

飲み物はジュースか、お湯入れて完了のカップスープ。

それが、すごくイヤだった。



今更の子育ては、あたしの両親にはきつくて、

いつもわれ先に横になって、子どもの相手をお互いに押し付けあってた。

あたしは育児方針について口を出す権利を失い、

子育て方針をめぐって、ジジババがケンカを繰り広げていた。



不満だらけの子育てに何もいえないのが辛かった。

オール･オア･ナッシングを求められるのが辛かった。

預けるなら口を出すな。口を出すなら預けるな。

感謝しても、不満を抱くな。

感謝は今返さなくて良い、近々介護が必要になるからよろしく。

ことあるごとに言われるのが辛かった。



タロウとハナコが遠かった。

土日、一生懸命相手をしても、平日の生活は分からなかった。

あまり子育てに関わらない父親並の子育てしか出来ない自分が、歯がゆかった。

保育園で笑うタロウやハナコが見たかった。



たくさんの事柄は、これ以上このペースで働くのは無理だって示してたのに、

それを認めるのが怖かった。



「アナタのせいで働けなかったのよ」笑いながら言った、母の言葉。

「私は出来なかったから、職業婦人になってほしい」そういった、母の言葉。

あたしが縛られているのは、その言葉。



あたしに働き続けて欲しい、という母の願いを裏切るのが怖い。


将来、退職の理由を聞かれたときに、子どものせいだと言ってしまうのが怖い。



もし、本当に自分の意思なら、胸を張って言える。

やりたいことが見つかったから、自分の道を行く。

あなたのためでも、あなたのせいでもなく、あたしが自分の決めたことなんだ。

そうやって、胸を張りたい。

それが出来ないことが、辛くて、哀しくて、怖い。



ああ、でも、もういいや。

それを決めたのは、あたし。

他の誰が決めたのでもなく、あたしが選択したんだ。



これ以上、タロウが叩かれるのを見たくない。

タロウやハナコをＡＣじゃない人間に育てたい。

ＡＣの連鎖を止めたい。

その一つの手段なんだ。



９月いっぱいくらいで、退職させてもらおう。

出来ればパートで働きたいです、って希望付けて。



収入が減るのも、それに伴う色々も心配だけど、もういいや。

正社員に固執して、二人がＡＣになっていったら、もっとつらい。

あたしもだいぶ回復してきたし、たぶん、大丈夫。




ＧＷが開けたら、ボスに相談しようっと。