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Shige's dialy 「食寝遊」

第3部

足音

太郎の冥福を祈りながらシャワーを浴びているうちにみんなそれぞれの家族の待つ家に帰って行ったようだ。

最高の達成感の余韻を残してシュラフに包まると右手に残るバイトの感触。
興奮して眠れそうにないなと寝返りをうった・・・

と思ったらやはり朝になっていた。昨日の黄泉の世界はもう入り口を閉じていた。

イザワさんと山本さんももうここの仲間だ。

安らかに眠る2人を起こしてはいけない。今日は2人とも頑張って帰らなければならない。

転がり込んだ仏間とも今日でお別れだ。

哲哉はガレージにテントを張っている。僕のミクソウィルスに感染しないために非難したのだ。テントは思うより快適でくつろげるものだ。芝生にテントを張る贅沢をしたかったが悪天候に阻まれた。

日曜日の朝は、良太の電話で始まった。
5:30を回った頃だろうか・・・・

すごい風だ。昨日とは打って変わってまた電線がうなっている。
この原理で糸なり現象が起きるのだろうなどと思っていると良太の電話。

「すごい風だね・・・」

「そうだねえ、こいつは出られないか・・・・」

「うまく出来ているもんだよ、昨日の疲れを取れっていうことなんじゃない?」

「そんなところだな、も少し寝ようか」

「9時過ぎには行くから、少しゆっくりしよう・・・」

「わかったわかった、じゃあ後で」

良太の電話で安心してうつらうつらしていると、重厚なドアの音がする。
きっとお客さんだろう。
スポーツカーだ・・・・

何でカバーをかけているんだろう・・・?

またお客さんが来た。今度は明らかに釣り客だ。ワンボックスから4人組が出てきて支度を始めた。

キスでも狙おうというところだろうか・・・・

完全防備で店の方に行った。

行きの笑顔とは裏腹に、すぐ帰ってきた

この風で出撃不能(マコトさんに追い返された)となったに違いない。

後からマコトさんに聞いた話ではわざわざ愛知県からお見えになった(といってもここは浜名湖だが)お客さんだったそうだ。

せっかく来たのだから出してあげたい・・・・しかし、海の風は時として人の命に関わるし、出たところですぐに引き返して来たのではかえって申し訳ないと・・・・

「やらないという勇気」を持ったお客さんと、マコトさんのやり取りが目に浮かぶような瞬間だった。

海で事故ってはいけない。僕らは海のプロなのだ。こういう厳しさがあってもいいんじゃないか。

貴重な日曜日、数名の集まりを作るのも大変な世の中だ。頑張って仕事を終わらせて、約束の日。悪天候に唇を噛んだに違いない。

でも笑顔で帰っていくその一歩先には安全というシナリオが用意されている。フィッシング沖とはそういう店なのだ。

いつもビール飲んで酔っ払っていると思ったら大正解だ。大間違いだ。

風の影響が出るエリアに行きたくなるターゲットを狙いに来たお客さんはそれでも笑顔で帰って行った。風裏の楽しみ方を覚えた頃に、今日のことを思い出してくれるだろう。

狙いは絞られるが、出られないことはない。これが村櫛の底力なのだ。

そんなお客さんが帰ってゆくのを見送っているとこちらも眠くなってきた。まだ6時前だ。

うとうとしてしまったが、またトヨタの重厚なドアの音が聞こえる。さらに日産系の音、どんどん車が集まっている。

「やっぱり悪天候でもお客さん集まるんだなあ・・・・」

「マコトさんもたびたびお客さんを追い返すのは気の毒なことだなあ・・・・」

などと、のんきに考えていたら、全部OOP・Sのメンバーだった(ここも笑うところですのでよろしくお願いします・・・)。

仏間組みとガレージは静かに寝ている・・・・

<想像の会話>

「どうすんだよ、誰もいないジャン?」

「寝かしとけって。」

「風強いけどどうかなあ・・・」

「裏は大丈夫だよ。」

「ってことはアサリジャンねえ・・・」

「昨日、燃え尽きちゃったんかに?」

「なれないからねえ」

「しげちゃんは?」

「まだ寝てるみたい・・・」

「しげちゃん釣っちゃったからもういいってか?」

「3年目でやっと釣ったもんで・・・」

「こりゃあ、横浜営業所も思い出できちゃったかな~?」

「これで黒鯛出ちゃったら最高なんだけどね」

「最初からそんなに出ちゃったらしげちゃん立場無いじゃんか?」

「そうともいうか。」

かなりたってから窓の外を見てびっくり!
僕らの起床待ち?状態で迎えてくれたメンバー・・・・(早く起きろって!!)
チョッとみんな引きつっているように感じたのは気のせいであろうか・・・・

殿様釣師になっちゃった?
やっちゃいました、大寝坊。

「ワリイ、ワリイ、良太が9時まで寝てろって言うからさあ・・・・」
完全に良太のせいにしている僕。

「この風ジャン?どうせダメだろうってことになってさあ・・(汗)」

「良太から電話なかったあ?あれ?おっかしいなあ・・・・(汗By汗)」

あんなに出たがっていた僕を、こうやって集合して迎えてくれる仲間の存在に、ばつの悪い出だしになってしまった。

・・・・・・・・ともあれ、アサリ堀に行くことになった。


今日は横浜にお土産を作らなくてはいけない。僕たちのお土産といえばアサリだ。初回からアサリとハゼはお土産の代名詞なのだ。

このアサリ、魚が釣れようが釣れまいが浜名湖の味覚を約束してくれる。

家に帰っても水管から水を噴出し、たった今まで浜名湖の水中に潜っていたのを連れて来たことが感じられる嬉しい一品だ。

僕なんかしばらく水槽で飼ったこともある。東京湾のアサリは至高の逸品だが、浜名湖のアサリはまた究極の味だ。

海パンは持参していたが、幸二君がウェーダーの支度をし始めたことで安心して僕もウェーダーを履いた。

内緒のウィードポイントへまっしぐら。

幸二は “アサリ・インストラクター”の称号を持つ。
毎回アサリのいる場所を発見するのが早い。生まれつき持つ嗅覚で、アサリのにおいがするのだそうだ。

みんなで掘る。どんどん掘る。ずっと掘る。なぜか同じ場所から移動しない。

「だってここに固まってるんだ」

やっぱり幸二はアサリ族・アサリ目・アサリ科に属する人間に違いない。

あっという間にそれぞれのバケツに半分くらいのアサリが入った。
袖も濡れて、収穫もそこそこになったので上がろうと決めた。

そろそろ良太が現れるに違いない。

たこ焼きマントマン

良太とハロ・フィの取材さんはすでに待っていた。

今日はタコの取材だ。集まるメンバー、高鳴る期待。

配船してポイントへ。
僕は今日から来てくれた去年優勝のサハラ君に乗せてもらうことにした。

去年入れ食いだったポイントへ一直線に向かった。
そこら中「ダイレクト・ライン・スタイル」のタコつりを楽しむボートでいっぱいだ。

タコの糸巻きは正月に見る、あれと同じだからタコ繋がりで面白い。

流し始めてすぐに哲哉に来た。あたりカラーを大声で聞いてみると

「ピンク~!!」

哲哉が言うからまたおかしい・・・・・(爆)(注意:ここ、笑うところです)

当たりカラーの存在は軟体動物をやるときの必須情報だ。しかし今回、浜名湖では絶対的なカラーは存在しないことも分かった。

僕は東京ではイカで大流行のマーブルサクラダイを選んだ。目立つが勝ちといわれるタコの釣りだ。さあかかってきなさい!!

混雑を避けてあちこち流す。

バスなら北浦大橋か、鉄橋か、というポイントへ差し掛かったとき、なにやら怪しい船が良太艇に話しかける。指を指したりしているからポイントでも訊きに来たのだろう。

OOP・Sがこれだけ出撃していると目立ってしょうがない。ただでさえ良太の船が目立っているのに、この船団だ。

「どこで釣れますか~?」なんて、訊かれちゃってもおかしくない。

タマちゃんの船にも、幸二にも来ている。タコはボツボツ釣れて来る。

それぞれカメラマンの餌食になっている。取材は成功か・・・?

ファイティングポーズ、ランディング、ブツ持ち、ネットイン、現物。

僕はせっかくかけた獲物を、「フィルムが切れたから待ってくれ」と言われても待てるわけもなく、がんがん巻いて引っこ抜いた。

幸二君はその悪魔のささやきに負けて1本逃した。

「待てるわけね~って!!」

最後の一流しで、キャスティングで2本立て続けにサハラ君も出すが、取材艇は遥か遠くに・・・・・「でかいのにぃ・・・・・」

帰路、逃げ出すタコの監視ににらみを利かせながら輪ゴムでタコにデコピンをかましてみた。

色が変わってミミズバレになった。急にタコが可哀想になったが、這い上がってきて逃げ出そうとするからやっぱりデコピンでいじめてやった。

帰着してみると、いるわいるわ、タコ大漁。
タマちゃん風に開いてみると、足が絡んできて吸盤のあざが出来る。すでにタマちゃんの腕にはたくさんの勲章が輝いていた・・・・・

そうだ、昨日タマちゃん一人で根性試ししてきたんだ。さすがタマちゃん、伊達に「18時間耐久サービス」の看板を掲げていない。

今回の初物はすでにタマちゃんの手によって昨日捕獲され、テーブルを飾っていたのだ。

塩で揉み、軽く湯どおしして、先っちょ付きの足を食った。



軽くゆでるのがコツ!



そうだ、昨日も食ったんだ・・・・・プラクティスはタマちゃんが済ませていたんだ。

あらためてタマちゃんの恐るべき根性を思い知らされる。

大漁のタコに塩をかけて揉みまくった。一人50回!良太、僕、サハラくんと続き、みんなで揉むこと数百回。昨日のシーバスでいった傷がしみる。日焼けが進んでひりひりしてきた。

そしてこれは昼食のネタになった。

帰還


2日目のBBQは手馴れたもので、みんなそれぞれに準備を始めた。

タマちゃんと僕は食料を調達しに行く。
すぐそこのコンビにはすでに切らしていた。今日は日曜日だ。よし、しょうがない。イッチョイッたるか。

ということで少し離れたお店まで遠征してみることにした。

タマちゃんの車に乗って、少しだけ村櫛ドライヴだ。

来る前からメールでいろいろやっていたが、チャットでタケノコの話があったことを思い出した。

「タマちゃん、あの後、タケノコのメール行ったでしょ?なんだっけ?あの名前。」

「ハチコ、ハチコ。ちっちゃいタケノコね?あれうまいよね~」

「この辺じゃああの時期終わってるんでしょ?」

「こっちと完全に1ヶ月遅れてると思うよ」

「そっか~、先にこっちで収穫して東京は後だね?」

コンビニに到着した。
おにぎり、弁当、ん?弁当?どうしようか・・・・

ま、いっか。おにぎり各種大量購買。鮭と焼き鮭が違うということを知らずに鮭、鮭と選んで買った。

「釣のお供に梅干はダメだって言うことを知らなかったの~?」

「実は昨日釣れなかった人、梅干食ってたりして・・・・」

「そうなんだ?何で梅干が釣れないジンクスになるんだろうね?」

「わからんよね~、世の中にはいろんなことが・・・・・」

みんなには内緒だが、カウンターで売っていたイチゴ味のソフトクリームを仲良く食った。

ランクルに乗ってしばらくすると良太が電話してきた。
アイスを片手に電話に出ると紙コップをリクエストしてきた。

すでに手遅れだ・・・・・もうすぐ到着しちゃう。
味噌汁の椀に使いたいらしいが、予定外だった。

僕の車には必要最低限の支度しか乗っていない。内容によって現地で仕立てる予定だったからさすがに紙コップを人数分は用意していない・・・・

しかし幸い、お椀の変わりになる程度のものは持っていた。

帰ってみるとでかいキビレが黒焦げになっていた。

火が強すぎたらしい。良太が「次はもっと弱い火でやらなきゃダメだね・・・」といっている。

アサリの味噌汁がふるまわれる。

キスの天ぷらを揚げるのはタマちゃんの得意技。タコも茹で上がっている。と思う。

なぜか?僕が食った覚えがないから・・・・・(爆)よっぽどうまかったと見えて、帰ってきたらすでにタコは消滅していたのだ・・・・・

おにぎりの中身が鮭と焼き鮭に分かれていることをこのとき知ってタマちゃんと目を合わせた。コンビニのメニューもマニアックになったものだ。

釣が流行している地域では梅干は売らないほうがいいと思う。

僕はおまけに買ったサンドウィッチをほおばった。満たされていく僕たちのおなかと瞬く間の思い出・・・・・

今日はビールを飲めないから残念だが、「こんなひと時がもっと続けばいいのに」と誰もが思う。


BBQ2
良太の顔が面白すぎたので法に触れないようにカバーしました!(爆)



イザワさんも山本さんも言葉を捜している。

僕はイザワさんの気持ちが少しわかった気がする。

帰らなければならないのだ。もう一つの現実に。

ここにいる僕らはたった今、現実を過ごしている。夢のようなひと時だが現実だ。

帰ればそれぞれの現実が待っているし、ここのみんなにもそれは訪れる。

浜名湖に来て、見送る立場を始めて経験した。

帰るときは目の前にあるものが全て流れていく。景色も時間も。

見送るほうは、その残像を追うのだ。

こんな風に僕らも帰ってゆく。そのときはもうすぐ来てしまう。残りの滞在時間を精一杯楽しもう。

山本号にはすでに全ての荷物が積み込まれ、後は帰るだけになっている。

イザワさん、山本さん、有難う。今日の日の想い出はみんながいたから出来たものです。

またいつか必ずここでこの続きを楽しみましょう。きっとですよ・・・・

心の中でつぶやきが終わる頃、山本号は視界から消えていた。


モチュベーション


横浜営業所はその旅にピリオドを打ちヤサに帰って行った。
さあ、今夜は昨日にも増してランカーをゲットしよう。

良太と午後のひと時を語った。

「東京での生活をしていて、こっちがどんな風に写るんだろう?」

「そうだね、こんな風に写っているよ」

「はは、でも東京の人って忙しいよね」

「そうだね、忙しい。死ぬほど忙しいからここに来たら生き返るんだ」

「ふーん、よくわからんけど・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

うまく表現できないけど、僕の隠れ家は浜名湖で、僕の必殺技も浜名湖の仲間との時間だ。

僕を潤すのはシーバスのバイトで、僕の楽しみはギマやキスの釣だ。
東京でも、浜名湖でも、魚は釣れる。

釣をしていれば自分の手の中に流れる血潮を浜名湖でも東京でも強く感じるんだ。
浜名湖には浜名湖にしかない時間が流れている。

そこに行けばそこの生活があって、それを体感することが旅の本当の姿だ。

旅館に行って、どこの港の水揚げかも解らぬ魚のフルコースを味わって、温泉に浸かり、お土産を買い、写真を撮り、酒を飲み、浴衣を着て寝る。それは観光旅行ではあるが、記念に残る想い出は今書いたことばかり。

多分浜名湖でも旅館に泊まればマグロとイカの刺身ははずさないだろうし、朝はなぜかアジの干物だろう。

そこにマコトさんの笑顔や、タマちゃんの笑顔もない。

良太の眼差しも、幸二の冗談も、サハラ君の声も無い。

僕にはもう、浜名湖とその仲間がいない生活は考えられないから、もはや旅をしているのではないのだろう。

この大切な仲間に恥じないように生きていこう。

だからまた牛丼改め豚丼で頑張っていくのだ。

自分の中の最大にして普遍のイヴェントは「浜名湖に行く」だから・・・・・・・

さて、普段ぐちゃぐちゃしてストレスの塊になってしまうような生活の中で、「やる気」を維持していられる秘密は書いたとおりだが、このときの哲哉のやる気に火をつけたのは他でもない良太だった。

「真剣に釣りに来たわけじゃない」と言い切る哲哉を熱くさせたのは良太のストラテジーだ。

これがなかったらマコトさんと飲み続けることになって、またホゲッチュしちまうところだ。

「物」に弱い哲哉の心を上手に掴んだのはラパラCD-5だった。
僕も50や、へドンに凝った事があるからルアーに寄せる気持ちはよくわかるが、今度のルアーはなかなか手に入らなくなったCD-5の蛍光イエロー。(僕の携帯のストラップはF-5のホットタイガー)

確かに東京ではCD-7でも餌といわれるほどだ。CD-5のこの色ははなかなか販売店で見かけない。

最近になってもっと小さなCD-3?とかいうオモチャみたいなルアーが出回っているが、トラウトミノーは他で間に合っている。

そういえばそんなゾーンのルアーを出してくれたらラパラじゃなくても絶対欲しかったりするゾーンだ。5センチ。微妙に飛ばない目立たない・・・・しかしこれじゃなきゃダメなんだ。

このルアーの登場で完全に哲哉のやる気は急上昇している。

「良太の作戦通りにやってみよう」これが「哲哉の作戦」だ。

オモチャ箱をひっくり返したうえに台風の通過でめちゃくちゃになったフリートでフックを交換するメンバー。

なんだかこれまでとも違う雰囲気だ。

ただでさえぐちゃぐちゃしたフリートが、すでに僕らのオモチャを追加してごみためのようになってきている。

いつの間にかあれだけ吹いていた風がやみ、浜名湖にこれ以上ない静かなときがやってきた。

哲哉と僕を乗せた良太艇を含むメンバーの船はまたそれぞれのポイントに向かうべく準備を始めた。

ガソリンを補給する幸二。ネットを準備する良太。僕の頭の中は昨日の様なバイトの感触。

太郎を失った桟橋は僕らを送り出した・・・・・

湖面は鏡のようだ。

「こんな湖面はそうやすやすと見られるもんじゃないぜ・・・」

「すごくきれいだ・・・」

「こういうときはどうなの?釣れるかなあ・・・?」

哲哉は良太の言いつけ通り、漁多ワンだけを投げ続けた。




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