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主要7カ国(G7)が11~13日に英国で開く首脳会議(サミット)で、研究データの流出を防ぐための共通指針の策定で合意することが分かった。分野を人工知能(AI)や量子といった軍事転用が可能な先端技術などに限って検討する。中国への技術流出を防ぎつつ安全で自由に共同研究ができる環境をつくる。運用は各国に委ねられるため実効性に課題は残る。 サミットの合意文書への明記を調整する。研究成果が他の国に奪われないように担保する仕組みがなければ、科学技術の発展は見込めないとの認識を共有する。 企業や大学、研究機関に所属する研究者の氏名や国籍、外国からの資金提供の状況といった項目からなる共通のチェックリストを作成する案がある。各国が特許制度の拡充など必要な法整備に努める必要性にも触れる。 G7として年内に作業部会を新設し対象分野や運用の具体策を詰める。 背景には先端技術の研究を巡る中国への警戒感がある。米中を軸に開発競争は激しく、国際共同研究でも中国の伸長が目立つ。米国は同盟国などとの協調を強め、優位性の確保を狙う。 自国で開発した技術が連携する相手国を通じて第三国に流出するのを防ぐためにも、基準の擦り合わせが必要となる。 米国にはAIや量子などの先端技術研究に携わる人を限定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」と呼ぶ制度がある。重要情報を閲覧できる人を絞り、軍事転用できる民生技術の漏洩を防いでいる。 日本にこうした制度はない。留学生や外国人研究者を通じて技術が海外に流出しかねないとの懸念が自民党内にある。 さらに英国は今年、先端研究に携わる企業への国外からの投資に関し、政府に事前に届け出る法整備をした。米国は外国から資金を提供された事実を伝えなかった虚偽申告に、研究費助成の停止などの措置を取る。 中国は手厚い資金援助で海外から優秀な研究者を集める「千人計画」を進める。海外にいる中国人研究者に加え、外国人研究者も招致して先端技術の囲い込みを進める。 日本の大学もグローバル化や留学生数の増加を踏まえ、流出防止策を講じてきたが問題も残る。 文部科学省の調査で「輸出管理担当」部署を設けた大学は2018年2月の58%から、20年4月までに72%に増えた。文科省の担当者は「留学生の受け入れや教員の海外での研究など、多くの場面で流出リスクがあると認識すべきだ」と話す。 対策をとっても公開情報の利用は止められない。研究者は成果を論文にまとめて学術誌に投稿し、ほかの研究者による検証に耐えたものが業績として認められてきた。 軍事転用のリスクがあっても公開情報なら海外から合法的に入手できる。軍事機密に直接結びつく研究ならともかく、ほかの成果まで幅広く縛ることへの危惧はある。 玉井克哉東大教授は「成果をオープンにすることには研究の進展に利点もある。日本の研究機関がクローズにするとの判断をできるかというと極めて難しい」と語る。
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最終更新日
2021.06.09 07:38:28
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