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山形達也84歳の心理学

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2021.06.20
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カテゴリ:日本の政治
6月16日に通常国会が閉会しました。野党はコロナ感染、オリンピック対策など問題が山積する中で閉会するのはおかしいと訴え続けたけれど菅政権はこれを無視したのです。菅政権は会期中ガードを固めて150日間の会期を乗り切ってホッとしているでしょう。
 
いまの日本はオリンピック開催する状況にはないと思いますが、政府は強行しそうです。多くの日本人はそれを望んでいないのにね。菅首相は国会の質問や党首討議で、あるいは記者会見での質問に対して、まともに答えたことは一度もなかったと思います。開き直り、ごまかし、言い逃れ、隠蔽、はぐらかし、回答拒否、誠意のある人間なら耐えられない態度でした。
 
6月11日〜13日にG7コーンウォール・サミットが開催されましたが、写真を見ると菅首相はひとりぽつんとして全く存在感がありませんでした。日本でこのように人でなしの振る舞いを続ける人が初対面の各国首脳と心を開いて話ができるわけがありません。誰もが相手にしないでしょう。菅さんが日本の首相で恥ずかしい限りです。それでもこの人でなしを首相として担ぐことに自民党では誰一人異議がないのですね。
 
コロナ感染拡大が始まって一年以上経っても、日本の緊急時の医療体制は全く改善されていません。それなのに二階幹事長は「これ以上何が出来る?」と開き直っています。日本の政治は全く劣化していますね。
 
1960年に米国でケネディ大統領が選ばれたときは米国中が熱狂しました。彼の就任演説の一部は、わたしたちも感激して読んだ覚えがあります。
 
「Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country」
「国があなたのために何ができるかではなく、あなたが国のために何ができるかを問うてほしい」
 
これに比べて、いままでに、日本の首相を誇らしく思ったことがあったでしょうか。毎度毎度のことですが、今回ほど恥ずかしいと思ったことはなかったように思います。






最終更新日  2021.06.20 10:08:43
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2021.05.22
5月14日、80歳以上の高齢者へのワクチン接種の案内が来ました。予約案内が来ても、予約を取るのが大変という話を散々聞いていたのでどうなることかと思いつつ、医療機関に電話をかけ始めました。

大きな病院が良いと思って厚生病院に電話をすると「ホームページがありますので見てください」と言われました。

HPをあけてみるとワクチン注射案内のサイトに飛び、そこには「16歳以上の市民なら誰でも注射が受けられます」と書いてあり、実際そこでは自分のメイルアドレスを登録すれば、予約ができる仕組みになっていました。

他のところでは予約電話がつながらずに大騒ぎになっているようですが、ここでは、一箇所の病院は接種券をもっていれば誰でも受け付けて、それだけの必要な数のワクチンが用意される仕組みを作っていたようで、大いに助かりました。

ワクチン注射は各自治体に任せたもののなかなか進まないので、政府は自衛隊を動員して東京と大阪に大規模接種会場を用意しました。予約はHPでする仕組みで、予約申込の画面で、ワクチン接種券に書かれている自分の地域のコード、自分に割り当てられた接種番号、生年月日を書き込むそうですが、朝日新聞と毎日新聞が試しに架空の番号で申し込んでみたらそのまま受け付けられたので、新聞に接種の資格のない人が予約できる、いたずらでなりすましの予約でも予約できる、これで一杯になったら正規の人が受けられずワクチンが無駄に廃棄される、こんな予約システムで良いのかと記事を書いので、大騒ぎになりました。

防衛大臣はこれらの新聞は世間を騒がせるものだ、訴えるとカンカンに怒り、他方で立憲民主党は「欠陥を気づかせてくれたのだから感謝してよいのに」と述べました。

世間はこれらに賛否両論が沸き立ってにぎやかです。どちらかというと、新聞が欠陥を指摘したのは良くないという意見が多く、これは驚きでした。

私は立憲民主党のいつもの政治主張は支持できませんが、大規模接種システムのとんでもない欠陥を暴いて新聞に載せて何が悪いか、欠陥システムで作業を開始して、欠陥をつくのは犯罪だと開き直るほうがおかしいと思っています。もちろん、朝日、毎日は政府を叩き続けているので政府としては許せない気持ちなのでしょうけれど。

こういうシステムとなってしまったのは、各市町村の発行した接種番号がその人本人であることが確認できない仕組みだからだそうです。こういうときこそ、マイナンバーの出番なのにそれが使えないという情けなさは、マイナンバーを鳴り物入りで発行しながら未だに役立たずのままにしている政府の責任なのでしょうね。

その後、大規模接種予約システムに正しく入力しても、受け付けられないということが発覚しました。これは各市町村が発行する接種番号は任意に決められたものなので、市町村をまたぐと同じ番号を持つ人がいるわけです。同じ番号が重なるとあとで申し込んだ人は拒否されるという仕組みになっているようです。同一人物の二重申し込みを避けるという観点からすると、それはそれとしてOKでしょう。

でも、市町村が違えば同じ接種番号でも受け付けてもよい訳ですから、この予約システムではこの2つが連関するシステムになっていないのでしょう。これはごく初歩的な、しかし簡単に避けることのできた設計ミスですね。間違いだらけのシステムを作って、早急に働くようにしたのだから欠陥があっても当然だ、善意を持って利用すべきだと開き直るのは、どうかと思います。オリンピック開催をしたいがために、7月末までに接種を行き渡らせることに必死の政府が、なりふり構わず、奮闘している感じです。

しかし65歳以上の接種すら7月末までに終わらせる予定の市町村の数は約85%です。大都市では接種に時間がかかるでしょうから、人数で言えば85%に届かないはずです。それでもオリンピックを強行するというのは、普通の神経では理解できないことですね。それで日本経済が立て直せるというよりは、海外から多くに人達が来ることでコロナ感染が拡大する可能性を考えるほうが、普通の神経の持ち主ではないかと思うのですけれど。。。






最終更新日  2021.05.22 21:46:28
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2020.12.21
カテゴリ:日本の政治
​先日ドイツのメルケル首相が国民にロックダウンの必要を訴えました。その演説が科学的根拠に基づいた分析の上に立つ素晴らしいもので人々の胸に染み入るものであったのに対して、日本の首相のそれは、原稿の棒読みで何ら訴求する力を持っていないと酷評されています。

菅首相は人の上に立つ立場なのに、日本の方向に対し何らの考えもないみたいに見えて、実に情けない思いです。

今日Yahooニュースを見ていたら、「今、国民に語る真実の言葉」というブログがありました。読んでみてなるほどと心底から感心しました。菅首相の置かれている立場に反する内容は何一つないのです。このような演説が出来るはずですね。もしこのような演説をしたら、菅首相の支持率は下がることはないでしょう。

書いている人は青山まさゆきという知らない人でしたから、調べたら衆院議員で日本維新の会所属でした。2017年に立憲民主党にいたのが2020年に日本維新の会に移ったみたいです。

ぼくは2008年には民主党に初めて投票したのですが、あまりの無定見の素人政治に呆れてそれきりで見放しました。野党になってからの民主党の後継となった立憲民主党は民主党よりも更に悪くなったと思えるので、立憲民主党を見限った青山さんはまともな見識をお持ちと思います。ぼくは現在少しでもましな党は維新の会だけだと思って応援しているので、このような見事なブログを書いている人が日本維新の会の議員であることを嬉しく思いました。

ここに再録しておきます。


ーーー ーーー ーーー ーーー

https://blogos.com/article/505176/
青山まさゆき


2020年12月21日 07:11

『今、国民に語るべき真実の言葉』

盛んに医療態勢の逼迫・医療崩壊の危機を訴えておられる東京都医師会尾崎会長が、テレビに出演され、「メルケルさんのようにリーダーがしっかり国民、都民に訴える時期がもう来ている。ぜひお願いしたい」と訴えられたと報じられている。


私もそう思う。ただし、その内容は、尾崎氏やマスコミがイメージするものとはおそらくだいぶ違っている。

そこで、仮に私がスピーチ・ライターであったとしたら、菅総理に語ってもらいたいことを書いてみた。

国民に伝えなければならないことの数々。今起きていること、なぜそれが起きているのか、そして今後について。正直に、魂を込めて。



「今、多くの国民の方々に、とても多くの不便をお掛けしています。
特に、お子さんやお孫さん、ご家族と会えずに孤独な療養生活を送っていらっしゃる病院入院中の方々・施設入所中の高齢者の方々。
政府や自治体の呼びかけ、またGoToキャンペーンの突然の全国一斉停止により営業上のご不便やご迷惑をおかけし、そのことによって苦境に立たれておられる飲食業、宿泊業などのサービス業の方々、そしてそこで働かれている多くの従業員の方々。

 また、心からのお礼を申し上げなければなりません。
過重な負担に耐えながら、重症者の方の治療・看護に当たられている医療従事者の方々には衷心より感謝を申し上げます。

 さて、今このとき、私は正直に申し上げなければなりません。今、日本の本当の状況はどのようなものであり、なぜ今、このような混乱がおきてしまっているのか。そして、どのようなことを国民の皆様方にお願いしなければならないのか。

 まず、日本の現状です。日本には3ヶ月ほどの周期をおいて感染の波が訪れています。これは実は隣国、韓国と同じです。また、ヨーロッパ諸国においても、日本に先んじて訪れる寒い季節の到来と共に、第2波が訪れ、未だに収束はしていません。
したがって、マスコミや野党の皆さんが訴えるGoToキャンペーンと感染の拡大は、おそらくはあまり関係がないものと考えています。ただし、感染拡大時期において人の移動を積極的に広げることについて、抵抗感のある方もおられるでしょう。
このため、今回はいったん停止をさせていただくことにしたのです。

 私たちの政権が、そもそもGoToキャンペーンをさせていただいたことには2つの理由がありました。
その1つは、日本の感染状況は、実のところ欧米など諸外国に比較すれば大変少ない状況で推移してきたからです。今現在においても、100万人あたりの新規陽性者数はドイツ286人、イギリス398人、アメリカ571人に対し、日本は23人。10分の1程度にとどまっています。
100万人あたりの重症者数も16〜4分の1程度。
実は日本は、感染症の蔓延という点に関しては、欧米に比べて格段に少ないダメージしか受けてこなかったのです。 したがって、経済を通常の状態に戻すチャンスに恵まれていたのです。
 
 もう一つの理由は、日本においてサービス業に従事している労働者の割合が22%と欧米諸国に比べても多く、このままの状態を放置しておけば、中小事業者を中心として倒産、廃業が相次ぎ、それが多くの労働者の方の失業や収入減に直結し、新型コロナウイルスのリスクそのものは低い多くの方たちに多大な影響が及ぶこと、そしてその影響で命が失われる方も増えるとの強い懸念があったからです。

 さて、GoToキャンペーンとの相関関係の問題はさておいても、現在のいわゆる第3波が起きていることへの対処はしなければなりません。そこで大きな問題となっているのが、医療の逼迫、医療崩壊への懸念です。ではなぜ春先にも、そして今現在においても欧米に比べれば圧倒的に少ない陽性者数、重症者数しか存在しない我が国において、医療崩壊への警告がなされてきているのでしょうか?

 この点につきましては、国民の皆様に心よりの謝罪を申し上げなければなりません。その原因は、実は新型コロナウイルスなのではありません。10年以上、病院勤務医不足・看護師不足は叫ばれ続けてきたのです。しかし、医療者の受給の将来見通しや、私たちの支持団体である医師会などの意向を配慮して、病院勤務医不足の解決策である医学部定員増はわずかしか行ってきませんでしたし、看護師不足にも有効な手立てを打つことができていませんでした。

 私たちの落ち度はそれだけではありません。
ドイツでは、2012年にパンデミックについてのリスク・シナリオが立てられ、それに対応するために着々と準備を行い、ICU病床などの整備を行ってきたため、日本をはるかに上回る数の自国患者を余裕で対応しただけではなく、他国の患者まで受け入れを行ってきたのです。

 ところが、日本では、都道府県の間に見えない壁があるかのごとく、同じ日本国内でさえ都道府県の境を越えて患者を相互に受け入れることさえできていないのです。
そして、スウェーデンで行われているような、同一地域の病院で、垣根を取り払ってある病院は専門病院とし、他の病院はその病院の患者を引き受ける、といった柔軟な対応を取ることも出来ていません。

 こういった、課題の放置、パンデミックへの備えの欠如、縦割り行政に類似した自治体間の壁、医療機関相互の調整を図るシステムの欠落などにより、ガラスの城のように脆い医療システムになっていたことが、医療崩壊への懸念を招いている真の原因であったのです。

 そのような真の原因は放置したままで、医療崩壊を防ぐために、国民の皆様に対し、外出や営業の自由という憲法上保障された権利を制限するようなお願いをしてきたことを深くお詫びすると共に、真の問題点について全力を挙げて改善に向けた努力をすることをお誓い申し上げます。

 その上で、国民の皆様方に置かれましては、人の密集し、換気が不十分な場所におけるマスク着用、また、頻繁な手洗いとうがい、免疫力の基礎となる体力を維持するための規則正しい生活を今しばらく続けていただきたいと存じます。

 そして、英米などで先行して接種が始まっているワクチンにつき、特に重大な副反応がみられず、かつその有効性が期待どおりのものであるとご判断された場合には、リスクの高い高齢者や持病をお持ちの方におかれては、あくまで自己判断の上接種を検討していただきたいと存じます。

 また、報道機関などを含め国民の皆様全体へのお願いとして、単に新型コロナウイルスの恐怖ばかりを思い描くのではなく、例えば2月から6月の時期は致死率が5%であったものが、直近では0.5%にまで低下している事実など、この疾患の現実の姿を改めて検証していただきたいと思います。

 もちろん、その検証をするに必要な出来るだけのデータ開示を、各自治体にもお願いして政府が一丸となって進めて参ります。

 最後にもう一つだけ、どうしても申し上げておかねばならないことがあります。
新型コロナウイルスに対する医療その他諸方面の対策及経済的困窮についての対策として、2020年は政府として膨大な資金を使うことが出来ましたし、これから予算が審議される2021年も同様となるでしょう。国民の皆様の苦境に対し、出来るだけの財政支出をしてこれを和らげていくことが、今喫緊の課題であり、政治として最優先としなければならないところだからです。

 しかしながら、これは私たちが近年、財政的に最悪な状況であったので財政ファイナンスを始めたからできたことであり、赤字国債の発行を気にしなくなったことによるものです。ですから、現在、日本の借金はG7だけでなく世界中で最も多いのです。
しかし、この赤字国債の累積は、少なくとも将来の財政の手足をきつく縛るものになります。

 将来への重い、極めて重い負担を残しつつ、今の苦難を救っていく、その相矛盾した政策を取ることについて、政治家として深い苦悩をもって決断していくものであるということを国民の皆様にお伝えし、そのすべてを私の責任として背負っていく覚悟であることもまた申し上げ、結びとさせていただきます。」






最終更新日  2020.12.21 19:35:34
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2020.12.15
 
 
政府は昨日、Go To Travelキャンペーンについて、今月28日から来年1月11日まで、全国一斉に利用を一時停止すると表明したそうだ。コロナウィルスの感染拡大を阻止するために外出自粛を呼びかける一方で、金を出すから旅行してくださいと言いつづけるのは、誰が考えても馬鹿げている。短い期間だから、統計的に有意な効果が出るかどうかわからない。
 
今の感染者急増を思うと、おそすぎたきらいがある。感染者拡大の時期にそんなことに金を使うよりも医療体制の強化に金を使うほうが先だろう。
 
昨日、Go To Travelで旅行する人たちはコロナ感染症状を呈しやすいという研究の結果についてブログに書いたけれど、政府が「査読前の論文だから」と言って無視した問題の論文は、
に載っているのが元のようだ。
 
これに対してこの調査方法に疑問を呈するブログがあった。
 
Go Toトラベル利用者とそうでないグループ(Go Toトラベル非利用者)で風邪症状を比べています。私はこの論文を読んでいないのですけれど、この説に対して、そうでないグループ(Go Toトラベル非利用者)はもともとうちに閉じこもって出歩かない人たちなのに対して、Go Toトラベル利用者は外出に積極的な人たちなので、比較するグループの基本が違う、したがって:
 
「Go Toトラベル利用者の方が、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験していることが明らかに」は事実であったものと評価できますが、本研究発表について査読を受けることなく公表し、「 Go Toトラベル・キャンペーン 」という公共政策により新型コロナ感染症の感染が拡大している(因果関係がある?)かのように公表することは、不正確/ミスリードと言わざるを得ません。という内容だ。
 
このブログを書いている人はこの論文の査読者ではないが、査読をするということはこういうことなのだ。比較するグループは本来厳密に同じでないといけないことを指摘している(二つのグループの間では、性別、年齢の分布、経験、収入、職業などが同じようなものでないと意味がないとされている)。
 
この点に問題があるのでこのブログは、この問題の論文では「Go Toトラベル利用者の方が、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験していることが明らかに」とは言えても、Go Toトラベル利用者だから、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験している」とは言えないよということだ。
 
全く同じ状況下の日本が二つあって、一つでGo Toを行い、ひとつでGo toを行わないということをしないと、答えは出ないが、そのような実験は不可能である。日本の中に二つのグループを作って比べることもできません。せいぜい、この論文でやったようなグループの間での比較しかできないだろう。
 
おそらく、今調べることが出来て、しかも意味のある大事な調査は、Go Toに行く人、来た人の人数と、コロナ感染者数との相関関係を県ごとに書いてみることだ。誰かがもう調べているだろうか?このような統計を取ると、Go toと感染者数の増減との関係がかなり明瞭に出るに違いない。






最終更新日  2020.12.15 08:40:29
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2020.12.14
日本でコロナウィルス感染の第三波が広がったのは政府主導によるGo to Travel と、Go to Eatの両キャンペーンがその原因としてあげられている。ところが政府はGo To の参加者の感染者は少ないと言うだけでこの政策を見直そうとしない。

これに対して、東大の研究者がGo To キャンペーン参加者と感染には相関関係があるという調査結果に基づいた論文を書いて科学雑誌に投稿したが、受理される前に発表をしたという。つまりGo to キャンパーンがコロナウィルス感染拡大を助けている可能性を早く世間に発表して、政府に見直しをうながしたものと言える。

しかし厚生省の役人はまだ査読前の論文だから(投稿された論文は査読 Review を経て受理され、そして出版・公表される)とその内容を無視してしまった。もちろん菅内閣への忖度であろう。然るべき権威のある科学雑誌に発表される論文がそれなりに受け入れられるのは、その論文が査読(Review)を受けているからである。この査読が、その論文は科学的に正しいものとして信頼できるという保証を与えている。したがって「査読前の論文だから」という理由で無視したのかもしれないが、コロナウィルス感染拡大という状況下で一顧だにしなかったのは為政者・行政責任者として正しいことだろうか。

ここでは、私の経験に基づいて査読について書いておこう。

私たち研究者がが研究をして論文を書くとそれを発表するためにしかるべきJournalに送る。しかるべきJournalとは査読体制がしっかりして信頼できるところ、したがってそのJournalは研究者仲間では信頼されていて、高く評価されているということであり、研究者はそのJournalに毎月(あるいは毎週)必ず目を通してめぼしい論文を読んでいるということである。

論文(まだこの段階ではManuscruptと呼ばれていて、Paperとは言われない)が投稿されると、編集主幹はその分野の権威(別に権威者として威張っているわけではなく、その領域の研究内容に特に通暁しているという意味)である研究者3名を指名して行われる(同業者による査読であるのでPeer Reviewerとよばれる)。査読者は用いられている実験手法は信頼できる妥当なものであり、間違いも、手抜きもないか、実験は妥当な論理に基づき行われているか、実験から得られた結論は適切であって今までに発表されたことのない新しい情報が得られているか、過剰な結論は引き出していないか、を徹底的に匿名で審査する。

査読者はOKかどうかだけではなく論文の細部にわたり注文をつける。ここはおかしい、ここはこう直せ、ここは先行研究から見ると誤りの記述だから直せ。あるいはおそらく査読者の出している論文が引用されていないのを、ちゃんとここで引用しろとか。更に確証のための追加の実験も求められることもある。投稿者はこのような注文をつけられて、たいてい追加の実験も求められるので結構面倒なのだが、それにしたがって論文を書き直せば受理(Acceptである。論文を出版社に送ったときにはReceiveである)されるので、たいてい従う。査読者の意見や、注文に文句があれば反論してもいいが、面倒を起こすよりも注文に従うことが多い(私は、査読者の立場の方が強いということを忘れて、時には査読者の意見に文句を言って論争をしたことがある)。

編集主幹から査読者に求められる審査期間は普通2週間である。3名の査読者のうち2名がOKで編集主幹がOKならその論文は採用される。1名しかOKでないときにはたいてい駄目。断られたときは、査読者の拒絶意見を参考にして論文を書き直して、別のJournal に再投稿することになる。

書かれた論文が当時の研究水準から大きく飛び抜けているときには、論文は拒絶されることがある。査読者の科学的常識が、その投稿者の知能に及ばないときに起こる。自分の分野ではないところで起きたことなのですぐには指摘できないが、今までにそういう例がいくつか知られている。

科学の世界では、査読の前に一般に公開されるということは決してない。科学論文は誰がそれを最初に主張したかが大事であって、内容が漏れて他人がそれを盗むことがあってはならないからである。

論文の査読はその内容を理解できる査読者が行わないといけないので、しばしば研究のまさに競争相手のもとに送られることがある。

私たちが1986年に糖脂質を糖と脂質に分解するという全く新しい酵素を見つけて論文にしてJBCに送ったところ、受理されるまで数ヶ月待たされた。そして受理されて発表(出版)されたときには、同じ号に、同じような作用をする酵素をヒルから見つけたという短い論文が一緒に載ってた。後でわかったが、送った論文は査読者として同じ分野の、しかも同じ興味を持つ競争相手に送られ、その人は驚愕してすぐに手に入りそうな材料を端から調べて同じような酵素を見つけて発表したのだった。査読者の不正である。その人の研究室にその時在籍していたポスドクが、その後私たちの研究室に滞在したときにいろいろと話してくれたのだった。

というわけで査読前の論文が、一般の人たちの目に触れて、ひとびとがそれに基づいてあれこれと言うことがあってはならないが、今回はおそらく著者が査読前にも関わらず、内容の持つ意味に鑑み内容を公開したのだろう。

論文を読んでいないので詳細は知らないが、「Go Toが行われてからの期間と、コロナ感染者数増大に相関関係を見つけた」という内容なら、調査の結果、相関関係があることを見つけたというだけであって、Go Toを行ったことが感染者の増大につながったことを論文の著者が主張することはありえない。

Go Toに行ったことと感染者増大との間に相関関係があったことは、Go Toに行ったことが原因で感染者増大となったことにはならない。

今の時期では、Go Toを行ったことは感染者増大の一因であるに違いなかろうとは考えたくなるが、この論文からはこの結論を導くのは科学的には正しくない。同じ時期に、同じような条件下の日本人の同じ大きさの地域を選んでGo Toを実施しなかったときのコロナウィルス感染者数を追う対照実験があればいいわけだが、こんなことできない。

日本の医療崩壊については、医療体制を見直して、一部の医療従事者が疲弊することのないように速やかに手を打つのが政治だと思う。菅さんには強く失望している。






最終更新日  2020.12.14 15:37:41
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2020.12.13
このところ国内でコロナ感染者数が急増していたが、昨日とうとう3000人を越したという(資料1)。感染者を隔離して治療するために用意したベッドの半数以上が埋まってしまい、「北海道、東京、大阪、兵庫、高知の5都道府県で感染状況が最も深刻な「ステージ4」の水準に達した」という事態になっている。

2017年の重点国の基礎データ比較 - 経済産業省によると、日本の病床数は人口当たり世界一だ。人口あたりの病床数は世界の中で群を抜いて多く、ドイツの2倍であり、アメリカの4倍である。

医療機関数は、 上位6カ国の中で3位だが、人口あたりにすると日本が飛び抜けて多い計算になる。日本の問題は民間病院が少ないからという説もあるが、アメリカと比べても公立病院とに比率は同じくらいである。

医師数では人口あたり世界一のドイツの半分だが、イギリス、アメリカとほぼ同じである。

日本では看護師が足りないと言っているが、人口あたりではドイツについで2番目の数で、イギリス、アメリカよりも多い数である。

コロナウィルス患者の数は日本では急増しているものの、感染拡大の続く世界各国に比べると日本の感染者は人口あたり130人でアメリカの30分の1、イタリアの20分の1と少ない。

日本の現実を見ると、12月8日時点の日本国内の重症者数は536人(NHK)で、コロナ患者のために用意したベッド数は2万7千床ある。

計算上は、足りている。これで問題になるほど日本の医療崩壊が起きているというのでは、運用に問題があるに違いない。

感染者数を見ると、入院中や療養中の人の数は12月7日時点全国で22178人(NHK)なので、胆汁にはコロナ患者用ベッドの数を超えている。

医療崩壊が叫ばれる一因は、未だに新型コロナウィルス感染者の扱いが混乱しているからだろう。最初は感染者すべてを強制隔離するというものだったが、コロナウィルス陽性者が急増して、2月には自宅待機に改め(とんでもない措置で悪評散々だった)。この基準がその後コロコロと変わっているみたいで全貌は掴んでいないが、無症状感染者については入院できるという規定が今でも生きていて、そのために入院患者が増えて、実際に治療の必要な患者の受け入れ、かつ重症者の治療を圧迫してきていて医療危機が叫ばれているようだ。

1月に問題が起きてから、世界各国の蔓延状況を見れば日本のその先の対応準備ができたはずなのにそれをしてこなかった医療行政、つまり政府と医学界のお偉方の鈍さ(それには利権が絡んでいるに違いない)があるとしか思えない。

医療機関でコロナ禍の中で懸命に働く人々がいる。そのおかげで日本の死者数はかなり低く抑えられている。ありがたいことだ。一方でいびつな日本の医療体制を見直さなければならないのに、医療崩壊間近と叫ぶだけの医療行政の責任者の顔を見ると、実に腹立たしい。

資料1:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG122NN0S0A211C2000000






最終更新日  2020.12.15 08:43:09
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2020.12.01
カテゴリ:日本語
2020年11月30日 今年の“新語”大賞は「ぴえん」と発表

 大賞:ぴえん
 2位:〇〇警察
 3位:密
 4位:リモート
 5位:マンスプレイニング
 6位:優勝
 7位:ごりごり
 8位:まである
 9位:グランピング
 10位:チバニアン

 驚きました。今年の“新語”を見て、確実に内容まで知っているのは「10位:チバニアン」だけでした。

 「3位:密」は三密で、「4位:リモート」はリモートオフィス、リモートワークでしょうね。 

 「大賞:ぴえん」は、まるで見当もつかず調べると、泣いているさまを表す擬態語だそうで、2018年11月頃から女子中高生の間で使用されるようになり、男女問わず幅広い世代に浸透しているそうな。へえー、女子中高生のオトモダチを作らないと、世間についていけません。

 「2位:〇〇警察」はぐぐってみると、自粛警察、マスク警察のように使われたみたいです。

 「5位:マンスプレイニング」という言葉も、初めて聞きました。「マンスプレイニング」とは:

 『男性が偉そうに女性を見下しながら何かを解説・助言すること。man(男)とexplain(説明する)という言葉をかけ合わせた言葉だそうで、相手の女性が既に知っていたり、説明してもらう必要がないと思っていたりするのに、男性が偉そうに説明をするのが「マンスプレイニング」だ。

 とくに女性の健康とか、性差別とか、女性のほうがよく知っている可能性が高そうなことについて上から目線で男性が話す時や、相手が専門的知識を持っているのに自分の知識を無意識にひけらかそうとして話す際によくこの言葉が使われる。

 この概念が広まるきっかけになったレベッカ・ソルニットのエッセイ「説教したがる男たち」(“Men Explain Things to Me”)では、パーティでソルニットが写真家エドワード・マイブリッジについて本を書いたと言った時、話し相手の男性が、自分では読んでもいないのに「今年出たばかりのマイブリッジ関連のとても重要な本を知ってるかね」と、ソルニットの著書について長々と知識を披瀝しはじめ、途中で目の前にいるのがその本の著者だと気付いて驚愕…という話が出てくる』(引用1)

 『男性が必要もないのに、横柄だったり、相手を見下していたりするようなそぶりでものごとを説明すること。とりわけ保護者ぶっていたり、男性優越主義的な態度を示していたりすると思われるような口ぶりの時に使う』という。

 自分はどうかな、こういう態度をとったことがあるかな、と考えてみましたが、思い当たりません。生まれてから偉大な母親と姉に囲まれて育ったし、結婚したサエはIQ、EQともにぼくよりも遥かにレベルの高い女性でしたから、いまだかつて女性を見下したことは一度もなかったと断言できます。ついでながら、女を買ったこともありません。

 「6位:優勝」をネットで調べると:『「~で優勝する」とは「~」には主に食べ物や飲み物が入り、「おいしい料理で幸せになる」「テンションをぶち上げる」のようなニュアンスで使われる。例えば、「肉とビールで優勝する』と言うらしい(引用2)。

 ただ、もうびっくり。ぼくは自分で毎日料理して食べているから、「自分の手作りで優勝する」というところかな。なんだか、一人幸せに○ナニーしているみたいな感じだね。
 
 いや、疲れたな、もう。

引用






最終更新日  2020.12.01 15:22:31
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2020.10.27
カテゴリ:本に一言
最近目を通した書評に刺激されて「太平洋戦争の収支決算報告 戦費・損失・賠償から見えてきた太平洋戦争」(青山誠 彩図社)を読みました。参考にした書評はこのブログの最後に付けますが、驚きの本です。

序章には「日本が戦争をした理由」が書かれていて、この序章の主張は以下のとおりです:

ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー 
日本は第一次大戦の後からアメリカを仮想敵国として軍拡を進め、中國への侵略を始めてからは軍事費が巨額に達した。

私たちの生まれた1936年で対GDP比が47.6%で、1938年で77.0%であった。
(今の日本の防衛費は周知のように1%ですから、当時の軍事費がどれだけ私たちの生活を圧迫していたか想像を絶します)

中國への侵略で世界各国との関係が悪化して米を中心とした包囲網ができ、中国大陸から日本が撤退するよう圧力が強まった。それまで陸海軍ともに莫大な国家予算を使って軍備を拡張していたけれど、対米開戦を始めることには、陸軍も、海軍も積極的ではなかった。しかし、御前会議ではどちらも自分たちが戦えないとは言えなかった。軍首脳はおそらく戦っても、勝てるとは思っていなかったが(当時、冷静に考えればそう思うのが当然だったでしょうね)、巨額な国家予算を使って仮想敵に対して備えてきたから、戦えないとは言えなかった。

そして他方で、軍の首脳が今まで戦いに備えてきた巨大な装備を試してみたい誘惑にかられてしまったというのも、戦いを始めた理由の一つではないか。
ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー 

私たちはこの戦いは、ABCD包囲網で日本には石油が入らなくなった、生きるためにもう止むにやまれぬ戦いだったのだ、と思ってきましたが、通奏低音みたいな軍拡の結果が齎したものというこの本の見方に驚き、著者の見識に感銘を受けました。

もちろん当時、どうしてABCD包囲網ができるに至ったかを反省して立ち止まることも出来たはずですが、巨大な軍備を持ってしまって、もうそれ以外進む方向が見えなかったのですね。

あのころの私たち国民は大したことは知らされていなかったし、朝日新聞などに熱狂的に煽られて、大東亜共栄圏を日本が盟主になって築くのだ、日本海軍には世界に誇る戦艦長門、武蔵があるから勝つに決まっていると沸き立っていましたから、戦いに負けたときのことを考えることもなく一も二もなく大東亜戦争を支持したのでしょう。

世界を相手に孤立した日本は1946年11月、米国からハル・ノート付きつけられて開戦を決意したことになっていますが、現在を生きている私たちは日本が対英米戦争に踏み切って負けた結果のあまりのみじめさを体験しているわけですから、現在の視点でこのハル・ノートの要約を見直すと、これを受け入れても日本に大した損失はなかったと思われます。どうしてこのとき、誰も日本が負けて今でも尾を引く敗戦の結果を考えなかったのかが不思議です。

この本に書かれているハル・ノートは:
1.中國の仏印からの日本軍の撤退
2.蒋介石の中国政府を承認し、その他の政権を支持しないこと
3.日独伊三国同盟の破棄
4.中國における治外法権の破棄

で、Wikipediaのハル・ノートを見てみましたが本質的にはこの通りで、日本が中国大陸に作った満州国については全く触れられていませんから満州国は保持できたわけですね。日清戦争とその後の工作で得た朝鮮も、日露戦争で得た南樺太も、第一次戦争後に委任統治を託された南洋諸島も返せとは言っていません。仏印の石油、ゴムなどの資源を自分のものにしたい日本でしたが、此処で一旦落ち着いて冷静に対処すれば交渉の余地があったと思われます。

しかし、誰もそれが主張できなかったのですね。冷静な頭に戻れなかったのは、陸海軍に巨大な軍備を整えさせてしまった、そしてそのために彼らは今更引くに引けなかったと見るのは本質をついていると思います。

そう思うと、ソ連が核を含めて巨大な軍備を整え、その軍拡コストの増大故に潰れたと言われていますが、その軍備を使って世界大戦を始めなかったのは称賛すべきことでしょう。核戦争の結果を考えれば誰も戦争は始められないということになっていますが、通常兵器を使った戦いは今でも世界のどこかでいつも起きていますから、戦争を始めなかった理由は、日本の惨状が反面教師となったのでしょうか。

日本が戦いに備えた巨大なコスト、そしてそれをすべて失っただけでなく、朝鮮、台湾、中国大陸、南洋諸島で放棄した資産、失われた310万人の命、日本内地の資産財産の空襲による破壊、そして戦後の海外諸国への賠償金、戦没、あるいは生き残った軍人への恩給などなど、そのあまりにも膨大な額に驚き、打ちのめされました。戦いは決してするものではありません。今の日本では日本が攻撃(侵略)されたらどうするかという議論が起きていますが、日本がもし侵略されたならば、必ずその国の中枢に報復するというミサイルを多数備えておくだけでいいのではないでしょうか。



太平洋戦争の収支決算報告
戦争に負けた日本が払い続ける「50兆円」のツケとは?
2020年10月13日 

 戦争を扱った本は多いが、本書『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)はなかなかユニークな視点の一冊だと思った。「戦費・損失・賠償から見た太平洋戦争」という副題がついている。あの戦争で日本は一体どれだけのものを失ったのか。それを多角的に多方面から数字を拾って紹介している。戦争で失ったものの大きさ、戦争のばかばかしさに改めてあきれる。

金銭面から解剖
 著者の青山誠さんは特に現代史研究者というわけではなさそうだ。経歴によると、大阪芸術大学卒。著書に『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉新書)、『戦術の日本史』(宝島SUGOI文庫)、『金栗四三と田畑政治』(中経の文庫)、『戦艦大和の収支決算報告』(彩図社)などがある。ウェブサイト『BizAiA!』で「カフェから見るアジア」、雑誌『Shi-Ba』で「日本地犬紀行」を連載中だという。

 本書は以下の構成。

 【序章】日本が戦争をした理由・・・毎年積み上げられた巨額の軍事費、軍事費確保のために使われたアメリカの脅威、など 【第一章】戦争に費やされたお金について・・・危険領域をはるかに上回る巨額の軍事費、異常事態がまかり通る危険な財政運営、国民への借金はすべて踏み倒された!?......など 【第二章】戦争で失われた人命と財産・・・太平洋戦争の戦没者は310万人、など 【第三章】敗戦で失った植民地と占領地・・・敗戦によって半減した日本の領土、など 【第四章】終わらない償い・・・敗戦後に待ち受けていた〝賠償金〟という責苦、など

 最盛期には800万人を超える兵力を動員し、とてつもない額の戦費を使い、国力を限界まで傾け、持てる人的資源、物的資源を注ぎ込んだ太平洋戦争。3年9か月にわたる戦争で、日本は多くの人命を失っただけでなく、官民の在外資産、海外領土を喪失した。国内外の損失はどれほどのものだったのか。また、戦後に国際社会に復帰するためにどれほどの賠償をおこなったのか。太平洋戦争を戦費・損失・賠償など、金銭面から解剖すると、かつてない戦争の姿が見えてくる――というのが本書の骨子だ。

アメリカが仮想敵国
 改めて、本書を通して「カネ」の側面からあの戦争を振り返ると、いろいろと尋常ならざる実態が見えてくる。

 まず日本はなぜ戦争に突き進んだか。日本はすでに1923(大正12)年に定めた「帝国国防方針」(第2次改定)でアメリカを仮想敵国として重視。軍事費を増大させていた。国家財政に占める軍事費は30%にもなり、本書によれば、昭和16年には前年の倍近くに膨らんでいる。すでにアメリカとの戦争を見込んで、軍は戦争をするために予算を獲得していたわけだ。同年12月8日の真珠湾攻撃直前まで、さまざまな和平交渉が模索されていたが、「カネ」の面では十二分に戦争を想定していたことになる。この辺りは目からうろこだ。

 本来なら、勝算がわからない戦争への突入は躊躇するのが自然だろう。しかし、これだけの金を使って軍備を増強したのだから、「使ってみたい」というのが軍人の性だという。「実戦部隊の提督たちは理性よりも軍人のこの本能が勝っていたように思える」と著者は記す。

 似たような動機は政治家や経済人にもあったようだ。戦前の日本は、1932年の満州国建国後に「日満支経済圏」の建設に取り掛かり、1940年には輸出の51.1%、輸入の21.9%が日満支経済圏の貿易で占められていた。すでに中国の一部は占領していたが、国民党の政府を屈服させて支配を中国全域に広げれば、貿易量はさらに増える。

 くわえて東南アジアにも経済圏を広げようとしていたが、そこは欧州の植民地。思うように進まない。戦争という手段で獲得できれば、軍人にとっては、石油などアメリカとの戦争のための軍事物資が調達できるし、財界人にとっては、経済面での大東亜共栄圏をつくることができるというメリットがあった。

 こうして「カネ」の話を軸に、本書は太平洋戦争に突き進んでいた裏事情を解説する。

インフレ紙くずに
 その結果はどうなったか。まず戦費。通常の予算では賄えないから公債を乱発した。高金利ということで買い求めた企業や国民も多かった
が、戦争でパーになった。正確には戦後のインフレで紙くずになった。軍艦や軍用機などの装備や多数の人命の喪失、空襲などの被害は膨大なものになる。

 さらに本書で再認識したことに、領土の喪失がある。戦前の日本は約67万平方キロの領土を保有していたが、現在は約37万平方キロ。半分近くを失った。台湾、朝鮮、南樺太などだ。南洋群島に保持していた広大な委任統治領も消えた。本書ではこれらの損失にも言及している。

 台湾は、明治時代の併合時は「不良債権」といわれていたが、長年の経営努力で砂糖、バナナ、パイナップルなどの優良産地として発展していた。約40万の邦人が居住し、1833社の日本企業があった。彼らが台湾内に所有していた財産は、終戦時の評価で約425億円。当時の日本の国家予算の約2倍だった。

 朝鮮にも長年多額の資本が投下されていた。まだ独り立ちできるだけの経済力には達していなかったが、南部の米作や北部の工業地帯が発展し始め、特に北部は鉱山資源が豊かだった。終戦時には90万人近い日本人が住んでいた。こちらは台湾の約2倍、約891億円の財産が残されていた。現在の物価水準だと、約17兆円になるという。

 南樺太では炭鉱、鉄道などのインフラは日本が整備し、水産、森林、石炭資源などが豊富だった。戦後になって近隣では石油、天然ガスが出ており、失ったものは大きい。千島列島も失ったが、戦後、ロシアの水域で漁業を行うために払う入漁料などは新たな負担になっている。広大な南西諸島海域はマグロやカツオの好漁場。ここでも戦後は入漁料を払っている。
 
 満州や中国各地への莫大な投資も泡と消えた。本書によれば、海外領土は日本が戦争に負けなかったとしても、いずれは日本の支配から脱却した可能性が高いとされているが、その場合は平和的なプロセスを経たはず。「莫大な投資を回収し、企業や個人資産を持ち出す余裕は与えられただろう・・・石油や天然ガス利権を保有できた可能性もある」と本書は指摘する。

 戦前からの植民地だった台湾や朝鮮半島などにくわえて、中国や東南アジアの占領地に残してきた日本資産を合計すると、その総額は3794億9900万円。空襲で焼け野原にされた日本内地の被害額の約6倍になるという。

支払い義務が後遺症に
 このほか本書は戦後の賠償にも論及している。賠償金を支払う相手は、外国だけではない。自国民に対する戦争の償いも国家財政の大きな負担になった。金額だけでいえば、むしろ、こちらのほうが桁違いに大きいという。動員された800万将兵の大半に恩給受給資格があり、その金額は元の階級が高いと多い。昭和40年代中盤の段階で、恩給受給者は約280万人。年間総支給額は約2300億円。国家予算の3~4%を占めていた。1994年段階では約180万人で年間1兆6400億円。国家予算の2.4%に相当する。

 これまでに日本国内の旧軍人や軍属、戦争被害者に支払われた恩給や遺族年金の総額は50兆円を超えているそうだ。国民年金や厚生年金よりも手厚いという。対外賠償の1兆300億円と比べると大差がある。

 本書はこのように戦争を「収支」という面からクールに見つめなおしている。とにかく、いったん戦争をやってしまうと、戦後も後遺症が「カネ」の形でも残ることが理解できる。令和の今も支払いが続いている。

 こうして振り返ると、単純に言えば、御先祖が獲得した権益や蓄積した資産をすべて失っただけでなく、子孫にも膨大な負債を残した――これがあの戦争の収支決算ということになる。戦争にゴーサインを出した責任者たちは、少なくとも日本国の「経営者」としては失格だ。ところが戦争に深く関与した軍の上位者ほど恩給も多かったというから驚く。こうした側面からあの戦争を問い直すと、結果論とはいえ、多くの日本人にとって、なんとも首肯しがたいものがあるのではないか。









最終更新日  2020.10.27 15:12:59
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2020.10.20
カテゴリ:生き方

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『HSHさんの退職のお祝いの会で、話す機会のなかった私の祝辞』

 これまでの65年の長い間病気もせず、セクハラ、アカハラで訴えられもせず、研究者としても所長としても見事な成果を上げて、一方では自他ともに認めるリーディング・ファッションを着こなす人、当研究所のパンダとして人気と注目を浴びながら、HSHさんがここに無事定年退職を迎えられたことをお慶び申し上げます。

 わたしがこの研究所でお世話になったのは1998年から2003年までの5年間で、東工大を退職したあと行き場のないわたしを前の所長のISIさんが拾ってくださったのです。その時HSHさんをはじめ多くの方々に大変お世話になりました。HSHさんはわたしが前の所長のISIさんには言えない相談を持ちかけると、「フムフム、それで?」と大変な聞き上手で、いつの間にかわたしの思っていることを全部喋らされていて、しかも問題は解決しているのです。このような人柄を持つHSHさんが次に所長になったらこの研究所がますます発展するだろうと思っていましたら、その通りになりました。

 人は退職したあと、平均で15年、事によると数十年をどうやって過ごすことになります。その間、人のために尽くすか、自分を充実させるか、無為に過ごすかでその人の人生の意味が変わってきます。伺ったところ、HSHさんはこのままこの研究所で気ままに研究を続けていくと言う事でした。未完の研究を続けられるということは羨ましい限りですが、いずれそれも辞めて退職する時が来るわけで、いまは退職後の人生をどう生きるかという問題を先延ばししているということでしょう。

 人はその時に自分と向かい合うことになります。心理学者のエリック・エリクソンは人がその人であるためのアイデンティティ(Identity)という概念を提唱しました。人はだれでも自分がやむにやまれずやりたいこと、こういう人になりたいという目的を持って生きています。例えば自分は研究者であるというのも、自分はこの研究所のにとって欠かせない人物であると思うのも、その人のIdentityですが、このIdentityは他の人が認めて初めてそのひとのIdentityとなります。つまり、自分は美人のセレブだと思っても、誰もそう思ってくれなければ、その人にとってのIdentityとはなりません。HSHさんは誠実で立派な研究者で、これが現在の彼の自他ともに認めるIdentityですね。

 私は66歳でこの研究所を最後に日本での仕事は終わりましたが、退職後の自分と向かい合うことを恐れていました。幸い、中國の瀋陽薬科大学に妻とともに迎えられ研究室を持って学生を育てて11年を過ごす頃が出来ました。でもそれは退職後の自分と向き合う時間を先延ばししただけだったのです。

 77歳で日本に帰国して一切の仕事から引退して、さあ何をして生きていくか。自分は研究者だというのはかつてのIdentityです。今の自分は研究者だよとは言えませんし、研究者だったよと訴えても周りは、そう、だからどうなの?というだけです。つまり自分のIdentityは一体なんだろうと悩みます。暇を味方にして色々と資格を取りましたが、大して意味を持ちません。今はやむなく、「可愛いオジイチャンになろう」と思うしかなく、「可愛いオジイチャン」がわたしの目指すIdentityとなりました。

 HSHさんはこの先此処で仕事を続けられるということですが、いずれ本当の退職の時期を迎えます。その後の彼のIdentyは一体何でしょうか。相変わらず乗馬を楽しみつつ、みんなのパンダとして人から愛され続けておいででしょう。誰からも愛されるHSHさん、きっとこれがHSHさんのIdentityでしょうね。どうか、身体をいたわって長生きして「愛されるオジイチャン」となって下さい。​​​






最終更新日  2021.01.06 20:52:55
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2020.10.18
CGTNというTV放送がある。CCTVとして知られる中華人民共和国の国営テレビ局中国中央電視台英語による国際ニュース放送チャンネルである。

このCGTNは放映された10月14日のニュースで、「Former Ukrainian PM pledges to actively promoteinternationalization of traditional Chinese medicine(元ウクライナ首相は、伝統的な漢方薬の国際化を積極的に推進することを誓っている)」と伝えていた。

https://news.cgtn.com/news/2020-10-14/Former-Ukrainian-PM-pledges-to-promote-internationalization-of-TCM-UAusNHGtLG/index.html

今年のコロナウィルスCOVID-19の感染拡大に際して西洋の近代医学がなすすべもない状況に置かれているのに対し、最初にウィルスの広がった中國で中國の伝統医学が感染拡大を抑えたという話を私の中國瀋陽薬科大学研究室出身の学生から聞いている。つまり伝統医学が患者の治療に有効だったようである。しかし、その中國伝統医学の成果を中國が宣伝していないことを不思議に思っていたところだった。

このCGTNのニュースはその後日本を含めて世界中のTVで拾われていない。CGTNは、当然ながら中国政府の宣伝機関だから、信用ならないとみなされているのかも知れない。フェイクとみなされたのかも知れない。

しかし、中國の新型コロナウィルス感染者と死者が政府の発表よりも実際は多いのではないかと疑われながら、それでも中國の人口を考えるなら驚くほど感染率も死者数も低く、今では中國の人たちがマスクも点けずに街を歩き廻っているニュースも目にするから、新型コロナウィルスを抑え込んだというのは確かな事実だろう。有効な治療薬が存在しない以上、中國伝統医学が有効に抑え込んだと聞こえてくるのも本当のことかも知れない。

それでそのニュースを此処にGoogle Translationの助けを借りて、載せることにする。

「ウクライナの元首相ユリア・ティモシェンコは、中国のメディアとの最近のインタビューで、すべての国が伝統的な漢方薬(TCM)を研究し、それを全人類の健康に適用すべきであると述べました。彼女はまた、TCMの国際化を積極的に推進します。

報告によると、8月23日、ティモシェンコはCOVID-19と診断され、重病でした。 8月24日の夕方、彼女は人工呼吸器を使用する必要がありました。ウクライナの中国大使館の助けを借りて、ティモシェンコの医療チームはTCMの中国の専門家と連絡を取りました。 9月5日、彼女は中国の専門家から提供されたTCMを服用した後、改善し始めました。数日間服用した後、ティモシェンコは9月11日にCOVID-19の検査で陰性となり、9月下旬に通常の活動を再開しました。



ティモシェンコは、彼女と彼女の家族の回復に重要な役割を果たしたTCMの治療効果を経験したと述べまし
た。彼女は中国大使館とTCMの専門家の助けに感謝した。

ますます多くの科学者がTCMを研究および開発している、とTymoshenkoは付け加えました。何千年もの間、TCMは豊富な経験と実践を蓄積してきました。関連する知識は中国と世界の連邦です。各国はTCMを真剣に研究し、それを全人類の健康に適用すべきであると彼女は述べた。

インタビューの中で、ティモシェンコはまた、世界のモデルとしてのCOVID-19パンデミックの取り組みに対する中国の戦いを賞賛しました。彼女は、武漢の戦いは、医療を提供する中国の能力と人々を優先する精神を完全に示していると述べた。

COVID-19との戦いにおける中国の開放性、透明性、そして世界との経験の共有は印象的です。エピデミックが抑制された後、中国が他の国々を支援することは印象的な動きだと彼女は言った。

ティモシェンコ氏は、中国の支援により、ウクライナの人々は友人の温かさを感じたと語った。パンデミックが続いているこの困難な時期に、社会は団結することによってのみ生き残り、繁栄することができます。」

中國伝統医学が新型コロナ乾癬患者の健康を取り戻すのにどのように効いたのかははっきりしないが、10日間は人工呼吸器を使ったと言うからその間は近代医学の治療を受けたはずだ。おそらくそれで回復の兆しがなく、つてを頼って中国大使館の助けを得て、中國伝統医学の治療を受けて治癒したように読み取れる。

現代科学の言葉での説明がないのでもどかしいが、中國伝統医学が新型コロナに感染したウクライナの元首相ユリア・ティモシェンコを救ったようだ。だからこそ、彼女は伝統的な漢方薬が世間によく知られるように努力しようと言っているのだろう。

中国政府が伝統医学の効果と成果を科学的なデータで世界に示すことを期待している。






最終更新日  2020.10.19 10:54:01
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