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山形達也84歳の心理学

2014.06.02
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カテゴリ:薬科大学
さえ: 

今は薬学日語の3年生に日本語で分子生物学の講義をしているのですが、話しの始めに笑いを誘って、彼等の気分を柔らかくしてから始めたいと思って、最初の講義の時に「沈没船のジョーク」を口にしました。でも、学生たちは日本語がそんなに自由ではないらしく、口頭で話すだけでは直ぐに分かって貰えないのですよ。それで、次回からはPPTの最初にこれらのジョークを書いて見せています。

前回は「それぞれの幸福」と言うジョークを話しました。講義では毎回終わる少し前に出席を取るという理由で、簡単な設問を出して配った紙に書いて貰いますが、このときはその紙にこのジョークの結びにくる「中国人の幸福は?」に対する自分の考えを書いた学生がいました。

「中国人の幸福とは、お茶を飲んで、本を読むことです」
「中国人の幸福とは、子どもの面倒をみて愛する人と生きるとき」

と、みな大真面目に考えているみたいです。「私にとっての幸福は、分子生物学の試験で良い成績を取るときです」なんてのもありました。実際、学生はそれぞれの科目で良い成績を取るのに必死です。日本では考えられないことですね。日本の就職ですと、何処の大学を出たかが問われていて、成績は殆ど考慮されないみたいですが、中国では大学の成績が一生付いて廻るからでしょう。ここでは、教科書を丸暗記していたら満点が取れる試験ですから、彼等は頭を使って考えることが大の苦手です。

ぼくの分子生物学の講義は、DNAから始まるのですが、ワトソンとクリックのDNAの二重らせんモデルが1953年に発表されるまでの話しに2時間を掛けます。次は、ワトソンとクリックのDNAの二重らせんモデルに行き着くまでの話し。3回目はワトソンとクリックのモデルで遺伝子の複製が矛盾なく証明できることを示したメーセルソンとシュタールの実験の説明から始まります。(資料1)

大腸菌をN15の重い窒素の同位体を含む培地で培養して、親のDNAをN15で標識して置いて(これを0世代とします)、その後普通のN14を含む培地に移して増殖させていきます。半分くらいに増えたとき(0.5世代)、2倍に増えたとき(F1ですね、1世代とします)、2世代になったとき、3世代になったときに大腸菌からDNAを抽出して密度勾配遠心でDNAを重さに応じて分離します。

すると、0世代ではN15の重いところにDNAが来ます。当然ですね。1世代ではN15とN14の間の中間の重さにDNAが一つのピークとして現れます。これは、親の(0世代の)のDNAの二本鎖のそれぞれが鋳型になってDNAを複製したからですね。

次の2世代になると、2つのDNAのピークが現れます。1つのピークはN14の軽いところ、もうひとつは1世代の時と同じ中間位置に、同じ量で現れます。

3世代になると、DNAのピークはN14の軽いところと、1世代の時と同じ中間位置の所に、3:1の量比で現れます。すべては ワトソンとクリックのモデルから導かれるDNAの複製で説明できる、と言うことはワトソンとクリックのモデルが正しいことを示しているわけです。このDNAの複製方式はSemi-conservativeと呼ばれています。

細胞が分裂するときに親の遺伝子を正確に二つの娘細胞に与える仕組みが、このモデルで見事に示されたわけです。ここで、DNAが複製されるときに、親の二本鎖のDNAが適当に娘のDNAに入り込むという(Distributive)方式、それともうひとつ、親の2本鎖を鋳型にして作った新しいDNAが二本鎖となって新しいものだけが娘に伝わる(もう一つの娘細胞は親と同じものを受け継ぐことになるConservative)方式を考えてみようと学生に言いました。

それぞれの仮説が正しいとすると、メーセルソンとシュタールの実実験をしたときにDNAはどのような分離パターンを示すと思うか、と言う質問です。当然、いまここで勉強したパターンとは違うわけですね。

学生はこんな風にものを考えたことなんて多分ほとんどないので、大分面食らっているみたいです。モデルは目の前にあるのに、それがDNAのピークとしてどうなるかと言うだけなのですが、大変みたいです。あれこれ助言して、考えられるように仕向けて、そのために大分時間を使いましたけれど、終わった後、みんなは頭を使った喜びに満ちた顔をしていたと思います。毎回こういう良い設問が出来ると良いのですけれどね。


(資料1)例えば、以下のURLに載っています
http://www.aichi-c.ed.jp/contents/rika/koutou/seibutu/se18/DNA/fukusei.htm
メセルソン・スタールの実験(アニメーション)






最終更新日  2014.06.02 07:53:54
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