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山形達也84歳の心理学

2014.06.18
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カテゴリ:研究室風景
さえ:

前回は修士の学生の一人のPPTの描き方について、発表する学生がこれでも良いと思う表わし方と、ぼくが満足するそれとが大きく違うことを書きました。ぼくは話が一目で分かるように、数字の羅列ではなく、数字の大きさを例えば楕円の大きさで表して比べるような工夫が欲しいと要求しているのでしたが、学生は面倒な計算をしたくなくて、とうとうこれは中途半端に終わりました。

修士の学生としてもう一人がいます。彼女の場合、実験データが結構振れるので、大きな研究構想のあちこちを担当して当たりを付ける仕事を主にやってきましたが、修士論文の発表となるとそれを人が理解できる形にまとめないといけません。一つの本筋のある実験ではないのでまとめるのに苦労しますが、ガングリオシドが制御しているシグナルという意味でまとめました。

最初は実験ごとに、例えば一つの阻害剤を使ったときに、例えばTNFa、MMP9、COX2、NOS2、が上がるか、下がるかでまとめていましたが、これではそれぞれの遺伝子が全体としてどのように制御されるかを理解するのが簡単ではありません。彼女の用意した発表を聞いて、話を遺伝子ごとにまとめ直すように示唆し、かつそれぞれの実験の意味が分かるように、それぞれのスライドの左端にシグナル経路を書き入れるようにしました。

ぼくが示唆したように書き直すためには、先輩である暁艶が全面的に協力しましたが、そのお陰で発表内容が見違えるようにわかりやすく、かつ意義が直感的にスライドを見ていて直ぐに理解できるものになりました。

日曜日に修士論文発表が行われました。この学生は発表の前日遅くまで発表するPPTの作成をしていて、話す内容も十分こなれていないのを修正し続けていたので、当日の朝もこの学生は不安がいっぱいでした。

それで、「言うことに自信を持って話しなさい。もしも不安げに話すと、それは何も言わないと同じことですよ」

「それに、この話をすべて把握しているのはあなた一人で、聞いている方は全く初めて聞くんだから、この領域では自分が第一人者なのさ。前で聞いている人たちは鳩の群れと同じなんだよ、言うことに自信を持っつことだよ」と、ぼくのお得意の台詞を吐いて元気づけました。

日曜日の朝8時から始まった修士論文発表会で、彼女は無事に15分の発表を終えたと思ったのでですが、その後の各審査員の先生たちによる質問に答えているのを聞いたうちの研究室の人たちが、頭を抱えているのがすぐ目に留まりました。

発表も、質疑もすべて中国語なので全くわからないぼくのために、研究室のほかの学生がぼくの周りに座って英語で説明してくれるのです。彼らの説明によると、「FBJ細胞のうちでGD1aがあるのとないのと二種類の細胞を使って比べるのはわかるけれど、肺がん由来のLewis細胞を使うのはどうしてか」という質問があって、これに対して、「Lewis細胞ではTLRが沢山発現しているからだ」と見当違いのことを答えているのですよ。

GD1aの効果がぼくたちが中心的に使っている骨肉腫由来のFBJ細胞に現れるだけでなく、ほかのがん細胞でも同じように現れることを示すために肺がん由来のLewis細胞を使っているのですけれど、まるで方向違いのことを堂々と答えています。

ですから、「それでは、TRLはGD1aによる制御にどのように関わっているのか」なんていうまるで本筋と関係ない質問まで受ける始末です。彼女はこれに対しても堂々と、まるで関係ないことを答えています。

さらに「そのカルシウムチャンネルはGD1aによって発現が阻害されるのか」という質問があって、それに対して彼女は「その通り、うちの研究室の研究で、阻害が既に示されています」と答えたそうです。ぼくたちは、そんなことを調べたこともないのですよ。

つまり、彼女は自信を持って演台に立ちなさいとぼくが指示したのを、「相手は何も知らないのだから、何を言っても構わない。嘘でも良いから堂々と返事をしなさい、と勧められた受け取ったみたいです。

いや、もうぼくは頭を抱えています。相手は何も知らないのだからお前さんがその場を主導できるのだよと言いましたが、まさか嘘を堂々とついて、その場に君臨するとは思いもしませんでした。

こういう思い込みをする彼女はこれで卒業ですから、もう接する時間はありません。どうしたら良いのでしょうね。







最終更新日  2014.06.18 07:35:23
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