心理検査法基礎実習 感想3 高齢者で自尊感情テストが高く出るのは当たり前
(3)高齢者で自尊感情テストが高得点なのは当たり前 自尊感情テストの総合点は一番高い得点でも40点のところ、Aさんは38点でした。その解釈は、自分には見るべき長所があり、人並みの能力に恵まれていて、価値の高い人間であると思って、自分に十分満足し、いつもポジティブに生きている人であるというものでした。 しかし、比較した値は男子大学生という悩みと迷いの多い年頃の人たちの集団なのですね。一方で、被検者のAさんは社会生活も終えた高齢者なので、自分を見つめたとき、自分の現在のありようをそのまま受容している可能性が高いというのは想像に難くありません。 つまりAさんは高齢者であるというそれだけで、この自尊感情テストの総合点は高く出る傾向があると思われます。 さらに一般的には、人は他人がその人に下す評価よりも自分自身を高く評価していることが知られていますし、この傾向は知能指数が低い人ほど顕著であることも知られています。能力の高い人ほど自分に対する評価は低く、厳しく、謙虚であると言えます。 高齢者は年齢に反比例して知能も下がってくるのが一般的でしょうし(いずれ病気にかかって死なずに生きていれば認知症ですものね)、高齢者はここで見るように自分を高く評価する傾向となる可能性があるのではないでしょうか。 高齢者は自分の精神状態を安静に保つため、自分の人生を否定的に見たり、あるいは後悔する反省を避けて、良かったところだけに焦点を当てたり、あるいは全てを受容している可能性が高いのではないかと思われます。これが実際に調べられているかというと、日本では、若者ほど自尊感情が低いという結果が出ているそうです。さらに世界の53ヶ国で調べると、日本が一番自尊感情が低いという結果が出ていると聞きました。 当然、どうしてかという原因も調べられているでしょうし、自尊感情の低いことが問題ならそれを改善する方策も樹てられているのでしょうね。 それにしても、少なくともこの桜井(文献1)のテストは、各年齢で調べられて標準化される必要があるでしょう。(文献1)櫻井茂雄 ローゼンバーグ自尊感情尺度日本語版の検討 Bulletin of Tsukuba Developmental and Clinical Psychology, Vol. 12, 65~71, 2000