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山形達也84歳の心理学

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研究室風景

2014.06.23
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カテゴリ:研究室風景
さえ: 

今年の卒業研究生は二人でした。蘆思竹さんと、秦翌陽くんです。ふたりとも90年代生まれで、中国が豊かになってから育っています。のびのびした明るい性格で、活発で、晩会では舞台でモダンダンスを披露する腕前ですが、成績も優秀、それも試験の成績が良いだけではなく、何時も自分の頭を生き生きと使っていて、付き合っていてとても嬉しい学生です。

蘆思竹さんはFBJ-LL細胞とFlow Cytometryを使って、秦翌陽くんはRAW264.7細胞とを使って、細胞のカルシウム濃度を調べて、見事な結果を出しました。FBJ-LL細胞はカルシウム濃度を測定する色素であるFluo4を取り込ませたあと浮遊細胞にできるのでFlow Cytometryを使って調べることができました。一方のRAW264.7細胞は頑固で培洋皿から離れにくい上に、直ぐにくっついてしまうのでFlow Cytometryを使うことはあきらめ、Fluorescence Variscanを用いたのです。今回の卒研生には研究の方向を指示しただけで、細かなことはポスドクの暁艶に任せました。暁艶はかれらの相談に乗りながら、彼らが主体性をもって考えて実験をすることに主眼を置いて指導し、研究を進めさせました。今回のそれは成功したと思います。

この結果を単独では論文にするにはあまりにも簡単すぎるので、このあとはメカニズムを解明する実験を加えれば良いと思っています。

卒業研究の発表は、本文5分、質疑が3分のところを、蘆思竹さんは11分、秦翌陽くんは14分も演壇に立っていたほど、熱のこもった発表内容でした。

打ち上げの晩会は、東北大学近くの四川料理の店で、お隣の邸老師の研究室と合同で行いました。お隣りは大きな研究室で学生も多いので、ぼくたちの人手不足を時々補ってもらっていますし、ぼくたちに足りない研究費を別の意味でカバーすることでも助けていただいています。最後の晩会が十人では寂しいんじゃないかと言うことで、合同の晩会が提案されました。邸老師の研究室は四十人も学生がいて、その殆どが女子学生です。ぼくの悩みは彼らみんなが若くて、美人で、元気がよいのになかなか顔が覚えられないことです。廊下ですれ違うとき、誰ににっこりしていよいか、悩みです。そうかといって誰にでもにっこりしていたら、頭のおかしな奴だと評判が立ってしまうでしょうし。

1年前の学生を送り出す晩会では、Samuel UllmanのTheYouthという詩を引用して皆に話をしました。でも、誰も覚えていないのですよ。

ま、そんなものですね。ぼくだって新聞に載るくらいの東大総長の式辞の中の片言隻語の一つも、そのときでさえ、覚えていないのですものね。

それでも何か言わないと格好つかないと思って、しかし自分の考えを言える程大して老成していませんから、今回も人の言葉を借りました。自動車王と言われたHenry Fordの言葉です。

Anyone who stops learning is old, whether twenty or eighty.
Anyone who keeps leaning stays young.
The greatest thing in life is to keep your mind young.

というものです。

Next time when we see together, do not be the oldest among us!!! (笑い)

と話を締めくくりました。

学部の卒業生で、蘆思竹さんはUniversity College of London 薬学部、秦翌陽くんは千葉大学医学部、ずっとぼくたちのセミナーに出ていた葉王可くんは名古屋市立大学薬学部、劉順俊くんは九州大学先導物質化学研究所の修士課程に進学します。

修士の卒業生の、張雪城くんは瀋陽の抗体生産の会社に研究員として就職、林音知さんは愛知学院大学の博士過程に進学します。

暁艶さんは日本でポスドク。

王一任くんは張景海老師の研究室で博士号を請求するための残りの研究をします。曹発楊くんは張栄老師の研究室に戻って修士課程を続けます。

全員の健勝と発展を祈っています。






最終更新日  2014.06.23 07:14:37
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2014.06.20
カテゴリ:研究室風景
さえ:

学生の修士論文発表のことを書いてきました。リハーサルで学生の用意した話がそれでは印象が薄いよ、こうしたら良いのじゃないかとぼくは自分の考えを言いますが、学生はなかなか話すときの話し方の良し悪しを理解しません。わかってくれる学生ならば良いのですけれど、わかってもらえないこともあります。こういう時ぼくは、よほどのことがない限り自分の意見が最上のもとして押し付けることはありません。

だから、駄目な教師なんだよな、一番良いと思ったらそれを押し付けても学生にそれを体得させて納得させるのが本当だろ。それをしないことで、自分のことを良い教師と思っているなんて、似非教師そのものじゃないか、と思わないでもありませんけれど、なかなか自分のスタイルは変えられません。人の心の中にずけずけと踏み込める熱血教師にはなれないのですね。元々、原子以外には絶対的なものなどないと思っている人間だからでしょうね。

以前のうちの博士の卒業生で、論文発表のリハーサルを聞いたら、研究の流れが逆になっていて愕然としたことがありました。それじゃ話のインパクトがなくなってしまうじゃないの?

彼女はガングリオシドGD1aがNOS2の発現を抑える研究をしていました。この細胞ではMAPKシグナル経路がNOSの発現を抑えていることをまず明らかにしました。実際に、この細胞は普通の状況でEGFRからシグナルを送ってすぐ下流のGRB2を活性化し、これがMAPKを活性化しています。GD1aのシグナルを調べるとEGFRを通ることなく、直接GRB2を活性化し、引き続いてMAPKを活性化していることで、NOS2を抑えることがわかりました。

これってすごい発見ですよね。GD1aは既存のNOS2発現を抑えるシグナル経路を活性化して、NOS2発現を抑えるのですよ。

ですから発表するときも、このような順序で話せば良いのに、GD1aはGRB2を経由してMAPKを活性化してNOS2の発現を抑えた、そしてさらに調べると、この細胞はEGFRが刺激してGRB2を経由してMAPKの活性を上昇させてNOS2を抑制しているという話です。

なんだか、香辛料の入ってない四川料理、カレーを入れ忘れたインド料理を、ホップの抜けたビール、おととい栓を開けて冷蔵庫に置いておいたコカコーラを飲みながら食べているという間の抜けた話になりました。

ぼくは直ぐに問題点を指摘して、注意したのですけれど、博士論文をこのように書いてしまったから、もう話は変更できないと言い張ります。もちろん、そんなことはないのですよ。話すときは口頭で話す効果の最大を狙って話を構成して良いのですから、変更しても、全く問題ないのです。でも、彼女はそう言い張って変えようとしませんでした。人に言われて直すのは面子に関わるのか、面倒だったのか、話し方の重要性をわかっていないのか。。。

ま、しゃあないよね。最後はぼくの問題じゃない。。。

案の定、審査員の一人から、話の順番を(ぼくがうえに書いたように)入れ替えたら、遥かに内容の価値が伝わるだろうと指摘されました。自分で自分のやった価値がわかっているのかね?とも。

この審査員に拍手。。。

あの、馬鹿奴、と思いながらぼくはこれを聞いていました。せっかく良い研究をしても、ぼくの言う通りに手を動かしていただけで、これが理解できないお前は博士に値しないね、とまで思いながらね。

さてこんなことを書いている今、同世代の人たちがどんどん世を去っています。6月13日にはオペラのバリトン歌手だった平野 忠彦さんが亡くなりました。未だこうやってせっかく生きているのに、人の悪口を言っているなんてもったいない話ですね。さえ。もう、こういうことは終りにしましょうね。







最終更新日  2014.06.20 07:48:49
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2014.06.18
カテゴリ:研究室風景
さえ:

前回は修士の学生の一人のPPTの描き方について、発表する学生がこれでも良いと思う表わし方と、ぼくが満足するそれとが大きく違うことを書きました。ぼくは話が一目で分かるように、数字の羅列ではなく、数字の大きさを例えば楕円の大きさで表して比べるような工夫が欲しいと要求しているのでしたが、学生は面倒な計算をしたくなくて、とうとうこれは中途半端に終わりました。

修士の学生としてもう一人がいます。彼女の場合、実験データが結構振れるので、大きな研究構想のあちこちを担当して当たりを付ける仕事を主にやってきましたが、修士論文の発表となるとそれを人が理解できる形にまとめないといけません。一つの本筋のある実験ではないのでまとめるのに苦労しますが、ガングリオシドが制御しているシグナルという意味でまとめました。

最初は実験ごとに、例えば一つの阻害剤を使ったときに、例えばTNFa、MMP9、COX2、NOS2、が上がるか、下がるかでまとめていましたが、これではそれぞれの遺伝子が全体としてどのように制御されるかを理解するのが簡単ではありません。彼女の用意した発表を聞いて、話を遺伝子ごとにまとめ直すように示唆し、かつそれぞれの実験の意味が分かるように、それぞれのスライドの左端にシグナル経路を書き入れるようにしました。

ぼくが示唆したように書き直すためには、先輩である暁艶が全面的に協力しましたが、そのお陰で発表内容が見違えるようにわかりやすく、かつ意義が直感的にスライドを見ていて直ぐに理解できるものになりました。

日曜日に修士論文発表が行われました。この学生は発表の前日遅くまで発表するPPTの作成をしていて、話す内容も十分こなれていないのを修正し続けていたので、当日の朝もこの学生は不安がいっぱいでした。

それで、「言うことに自信を持って話しなさい。もしも不安げに話すと、それは何も言わないと同じことですよ」

「それに、この話をすべて把握しているのはあなた一人で、聞いている方は全く初めて聞くんだから、この領域では自分が第一人者なのさ。前で聞いている人たちは鳩の群れと同じなんだよ、言うことに自信を持っつことだよ」と、ぼくのお得意の台詞を吐いて元気づけました。

日曜日の朝8時から始まった修士論文発表会で、彼女は無事に15分の発表を終えたと思ったのでですが、その後の各審査員の先生たちによる質問に答えているのを聞いたうちの研究室の人たちが、頭を抱えているのがすぐ目に留まりました。

発表も、質疑もすべて中国語なので全くわからないぼくのために、研究室のほかの学生がぼくの周りに座って英語で説明してくれるのです。彼らの説明によると、「FBJ細胞のうちでGD1aがあるのとないのと二種類の細胞を使って比べるのはわかるけれど、肺がん由来のLewis細胞を使うのはどうしてか」という質問があって、これに対して、「Lewis細胞ではTLRが沢山発現しているからだ」と見当違いのことを答えているのですよ。

GD1aの効果がぼくたちが中心的に使っている骨肉腫由来のFBJ細胞に現れるだけでなく、ほかのがん細胞でも同じように現れることを示すために肺がん由来のLewis細胞を使っているのですけれど、まるで方向違いのことを堂々と答えています。

ですから、「それでは、TRLはGD1aによる制御にどのように関わっているのか」なんていうまるで本筋と関係ない質問まで受ける始末です。彼女はこれに対しても堂々と、まるで関係ないことを答えています。

さらに「そのカルシウムチャンネルはGD1aによって発現が阻害されるのか」という質問があって、それに対して彼女は「その通り、うちの研究室の研究で、阻害が既に示されています」と答えたそうです。ぼくたちは、そんなことを調べたこともないのですよ。

つまり、彼女は自信を持って演台に立ちなさいとぼくが指示したのを、「相手は何も知らないのだから、何を言っても構わない。嘘でも良いから堂々と返事をしなさい、と勧められた受け取ったみたいです。

いや、もうぼくは頭を抱えています。相手は何も知らないのだからお前さんがその場を主導できるのだよと言いましたが、まさか嘘を堂々とついて、その場に君臨するとは思いもしませんでした。

こういう思い込みをする彼女はこれで卒業ですから、もう接する時間はありません。どうしたら良いのでしょうね。







最終更新日  2014.06.18 07:35:23
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2014.06.16
カテゴリ:研究室風景
さえ:

いまは卒業の時期で、修士の学生、卒研生は論文書きに追われています。さらに彼らのメインイベントは論文の発表会です。修士は発表15分、質疑応答5分が与えられていますが、卒研生は発表5分、質疑応答3分という忙しさです。彼らは、そのリハーサルを始めました。

修士の発表では審査員の全員が講師、助教授でできていて、まとめ役の一人が教授です。卒研生の発表では教師の一番下のランクである助手と講師が審査員を務め、ヘッドは助教授が担当します。審査員というのは発表後に質問をする人たちです。面白いことにここでは、質問をするにも教師の間のランクがその順番に反映されています。事大主義ですね。

東工大ではこれらの行事のすべては教授の責任でしたね。

学生の作るPPTはそれまでの先輩たちの発表を見習って、彼らの研究の背景、実験内容、結論が述べられています。それぞれ彼らの研究を映した力作です。でも、話を聞く人たちへの配慮は皆無です。実験内宇土のその結果を、ペラペラと話すだけです。

でも、報告をする人たちはその研究を修士の学生なら3年近く、卒研生でも6ヶ月やってきています。報告を聞く人たちは、それを採点する先生たちも含めて、言って見ればほとんど素人同然です。何年か前のことですが、うちの学生がsiRNAを遺伝子発現阻害の方法として使った研究を話したら、siRNAについてもっと話して下さいと言われました。2年前にぼくたちがやっとReal time PCRを使い始めたときその理論的検考察をしたら、質問が殺到してそれだけで20分を超えました。

ですから素人相手には、言葉で話すだけではなくビジュアルにして、話している意味が一瞬で明確につかめるような図を書くように、いつも指導しています。

でも今年の修士の一人は、PPTには修士論文に載せた図を並べるているだけで、それをわかりやすくすることに抵抗するのですよ。

例えばRT-PCRで得られたCT値の書かれた数字の並んだ表を眺めて、その数値を見比べて、なるほど演者の言う通りこの値が20だから、ほかの30という値に比べて沢山発現されているのだなとわかるのは専門家だけです(CT値は2のN乗の値で表されていて、検出するレベルになるまでにそれだけ増幅したという数値です、数字が大きい程、もとが少なかったことを意味します)。

このRT-PCRの結果は、最初に存在したDNA分子の数でも表すことができます(InitialTemplate Number)。これで表すと、どの分子の発現が元々多いのかが、数値で直ぐにわかります。ぼくはさらにそれを楕円の大きさにして描いて、直感的に最初の量を比べられるようにすることを提案しました。

でもこの学生の言うのは、「だって発表は15分なんですよ」

つまり、たった15分の発表なのに、どうしてそんな手間をかけるのかと、大いに不服です。

発表時間はたった15分しかなく、一つの図は10秒から20秒くらいしか人目にさらされない訳ですね。それだけの時間で話していることを理解してもらうために見せているスライドですから、それを有効に利用しない手はありません。当然、一目で要点が分かるようにする必要があるでしょう?

でも学生はいくら言って聞かせても不得要領です。再計算する手間が面倒なのですね。

それで、学生には、発表する本人だけが内容を良く熟知しているけれど、聞いている人は、そのとき初めて聞く訳だから、素人だったらよほどわかりやすくスライドを作らないと、誰も話を理解できないのだよ。聴衆は、その時間は仕方なくあなたの話を聞いているけれど、鳩の群れと同じことで、つまり馬鹿同然なのだよ。その人たちにわかってもらうためのプレゼンターションなのさ。この先も、人前でプレゼンテーションをする機会は何度もあるでしょうけれど、目的は自分の言いたいことを人に伝えることにある訳ですよね。独りよがりの内容では、職を失うだけです。

ここまで言ってやっと、RT-PCRの結果は、ある遺伝子の発現量は数字の大小で表されるようになりましたが、さらにこの数値を可視化したいですよね。でも、ぼくはもうここで疲れ果てて、もっと内容を良くするよう指導する意欲を失いました。

ここで11年間学生の教育と研究に専念してきましたが、すべて学生を思い通りに染め上げる訳にはいきませんし、もしそんなことをしたら、教育者として増上慢なことこの上ないことです。ぼくたちのできることは、学生が判断できる材料を増やして、彼らが自分で理解して、自分で判断して、選ぶようにすることですものね。思うように行かないのも当然です。






最終更新日  2014.06.16 20:44:35
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2014.04.11
カテゴリ:研究室風景
さえ: 

先週のJOurnal Clubで紹介された論文の図の中に、EDという略語が出てきました。

実験の内容から見て、それは実験で用いられている試薬の濃度が受容できる範囲にあることを意味していることは明瞭でした。普通はEC50 という表現を使いますよね。

『薬物や抗体などが最低値からの最大反応の50%を示す濃度を指す。 EC50は元来英語の"half maximal (50%) effective concentration"の略語』(ja.wikipedia.org/wiki/EC50)

これに対してIC50という言葉もあって、よく使われます。

『IC50は元来英語の"half maximal (50%) inhibitory concentration"の略語である』(ja.wikipedia.org/wiki/IC50)

『この定量的値は、特定の薬物もしくはその他の物質(阻害剤)が注目する生物学的プロセス(もしくはプロセスの要素、例えば酵素、細胞、受容体、微生物)の半数を阻害するにはどれだけの濃度が必要かを示し、より低い値を示す化合物は阻害剤としての活性がより高いと言える。IC50は薬学研究において阻害剤の有効性を示す値として広く用いられている』

演者は汗をかきながらEDの意味を上記のように説明してくれますが、ぼくの知りたいのはこの言葉は何の略語なのかと言うことです。

演者は知らなかったのですがもとの論文には書いてあって、それを調べた学生がEffective Doseの頭文字ですと教えてくれて、ぼくの疑問が解決しました。

中国で分子生物学や、生物化学の講義をしてきましたが、一般に中国の学生は専門用語などに略語が出てくるとその意味だけ覚えて、もとの言葉は何だったかには興味を示しません。時間と頭のスペースの無駄と思っているみたいです。

もとの言葉が分かるとそれから次々と言葉を辿って、知識と理解が広がっていくのに勿体ない話です。

ちょっと大げさな例を挙げると、こういうことです。

生化学で基本の中の基本であるATPも内容をきちんと理解していないので、殆どの学生は論文の中に、AMP kinaseが出てきても、AMPで活性化されるキナーゼだなと言うだけです。AMPが何なのか、それとATPとの関係はどうなのかを理解していません。

ATPが消費されてADPになると、もちろん正常な状態ならこのADPから細胞内でエネルギーを消費してATPが作られますが、それが出来ないときにはADP2分子からATPとAMPを作り、このATPを緊急に使います。

使われずに溜まっていくAMPは細胞にとってはエネルギーソース欠乏の危機を告げるシグナル分子です。それでAMPは特異的なキナーゼと反応して一連の反応を行い、細胞にエネルギー枯渇の危機を伝える訳ですね。AMP kinaseという言葉が出てきたら、ここまで考えられないと勉強は一体何のためにしているのかと言うことになっちゃいますね。

紹介された論文の図の中に出てきたEffective Doseに話を戻すと、ここではEC50を使えばよいケースです。わざわざ馴染みのないEDという言葉を使う必要はないはずです。

それで、集まっている学生たちに、この論文で「わざわざEDという必要はないと思いますよ、EDというのは一般的に何を意味するか知っていますか」と尋ねました。すると、誰も知らないのですね。

「一般的にEDはErectile Dysfunctionの略語で、今は何処でも一般の人に通じる言葉なんですよ。だから、この著者はわざわざここでEDを使ってみたんじゃないかな」

研究室では英語を使っていますが、学生はすべての英語を知っているわけではありません(もちろんぼくだってごく限られた一部の英語しか知らないし、使えませんけれど)。

それで、この説明には直ぐには何の反応もありませんでした。それで「辞書で(みなスマートフォンをもっていますから)調べてご覧よ」と言ってから「男性の10-20%がこれで悩んでいるんだよ。若い男でもね。男性に起こる症状だけれど、女性も無関係とは言えないんだよね。もちろん、申告した人しか統計に出ないから正確な値は分からないわけで、実はもっと多いのではないかな」と、こうなると、ぼくの独壇場です。

「男性は偉そうに振る舞っているでしょ。でも、男性が心理的な原因でEDにおちいった時、女性が一寸でも批判めいたことを言うと、もう立ち直れないほど繊細なものなのなのさ。だから女性もEDをちゃんと理解しておく必要があるんだね」と、ここまでは言いませんでしたけれど。

この著者はわざわざここでEDを使って、一寸したいたずらをしかけたんですね、きっとニヤッと笑いながら。お蔭で、多分このJournal Clubも、退屈なものにならないで済んだんじゃないかな。






最終更新日  2014.04.11 07:52:19
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2014.03.28
カテゴリ:研究室風景
さえ:

瀋陽では、この1週間気温が上がり続けて昨日の最高気温は20度になりました。朝の室内では28度にもなっているのですよ。まだ下着のサーモテックを脱ぐには早いので、汗が出てきます。

窓を開けて風を入れたいところですが、朝から外は真っ白で隣の建物が見えないほどでした。大学に着いてからネットで調べると外のPM2.5は300を超えていて、窓を開けるのは躊躇われます。それで、部屋の冷房をONにしたのですよ。今朝のAQIは209でした。Very Unhealthy ですけれど、これが普通です。

WHOに発表によると中国とインドでは大気汚染のための死者の数が突出しているそうです(資料1)。何とも、やばい国ですね。

昨日はレンギョウが咲いているのを見つけました。ここでは迎春花といいます。今朝は大通りの桃の木が花を付けているのを見ました。例年より早いのではないかと思います。これで長い冬ともお別れで、嬉しいですね。

ところで昨日、密かに(心の中では大いに)自慢できることをしました。

この建物の10階に一つの部屋貰って倉庫にしているでしょ。この頃は頻繁に使うことがなく、4年くらい前に大掃除をしたきり使っていなかったと思いますが、中に入れたものが必要になって出掛けました。以前からドアが開けにくいという話を聞いていましたが、外開きのドアが開きません。

よく見ると、鉄の扉が鉄の枠の中でゆがんでいるのが分かりました。右側が蝶番で、そちら側の上の方には隙間がありますが、ドアの鍵の付いている左側はとくに真ん中から上部がぴったりと枠にくいこんでいる感じです。

鍵は掛かっていないみたいで、少しドアが枠から浮いています。把手がなくなっていて引っ張りようもなく、最初は手の打ちようもないと思いました。

でも、ドアが左にかしいで枠にきつくはまり込んでいるなら、右の方向にドアそのものを動かしてやれば良いのではないかと思いついて、ドアの左側と枠の間にドライバーを金槌で打ち込みました。

打ち込んで、次にやっとの思いでドライバーを抜き取ると、そこに一寸だけ隙間が出来るのですよ。じゃあ、ドアの左側と枠との間に、ドライバーを打ち込んでいって隙間を作ればドアが開くはずだと考えて、作業に取りかかりました。

一緒に行った二人の学生はしばらくの間、ぼくの作業をただ眺めていただけですが、やがて、希望を感じとったようで隙間を広げる作業を代わってくれました。

やがて、この作業が功を奏し、ドアは静かに手前に開いたのですよ。腰は大分痛くなったけれど、大感激の瞬間でした。


(資料1)
「WHO報告の大気汚染700万人死亡、大多数は中印両国」 2014年03月26日
http://blogos.com/article/83111/






最終更新日  2014.03.28 09:34:54
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2013.12.25
カテゴリ:研究室風景
さえ:

いつの間にかクリスマスの当日です。今年も中国にいて年末が近づいたと意識もしないうちに年末がやってきました。中国は9月開始の二学期制の学年歴ですから、前学期は1月半ばまで続くので、今日も朝8時から分子生物学の講義です。明日も、明後日も。。。

日本でクリスマスというと、いつの頃から湾岸あたりのホテルで恋人と過ごそうという意識が若い人たちの間に行き渡り、恋人がいればともかくとして、いない人たちは一夜の恋人探しに狂奔するという話をネットの記事で読みます。

そうやってクリスマス前夜を過ごさないと箔がつかないというか、人生の大事な部分が欠落しているような気分になるみたいです。若い人たちもどうかしていると思いますが、その気にさせる社会も社会です。日本では誰かが流行を作ると、直ぐそれに乗っかるのが格好良いと思う軽佻浮薄な人種に成り果てたみたいです。

ま、そういうぼくも、いま若かったら、どうせもてるとも思えませんから恋人もなく悶々としていて、そうかと言ってクリスマスイブに一人でいる恥ずかしさに耐えられず、必死で誰かいないかと探しまわっているでしょう、一人きりで「寂しく」過ごす人たちを見下したくてね。軽佻浮薄という点では、実は大して変わりはないように思えます。

瀋陽の中国の若者の間には、このような風潮はまだ行き渡っていないので、研究室で日本の若者の流行を話すと皆笑い転げます。

ガールフレンドがいて卒業したら彼女と結婚すると言っている学生も、この日は、瀋陽の繁華街である中街に出かけて、チョコレートケーキを一緒に食べてくるのが夢だと可愛く語っています。

大きな夢は給料の良い企業に就職して稼ぎを貯めてマンションを買って彼女のと結婚することです。中国もだんだん景気が悪くなって、まだ就職先が見つかっていないのですよ。

とても気の毒ですけれど、ぼくは中国の何処の企業にもコネがないので面倒を見てあげようがありません。ぼくたちの研究室に入るのを希望したときに、それは言ってあるので、言ってみれば免責ですけれど、気の毒なことには変わりありません。

就職してしまえば、おそらく彼のためには役に立たない学術的な研究論文を、早く彼の名前で出版することにこぎ着けたいと必死で思うだけです。

昨日の朝は何時ものように朝の挨拶にやってきた林音知さんが、これはクリスマスのギフトですよと言って、ぼくの右手に時計風にしつらえたバンドを巻き付けてくれました。

時計の位置にユーモラスなサンタの顔がついていて、赤いバンドをぱきぱきと折り曲げて手首につけてくれます。そして、何か願いごとを念じると叶いますよと言うのです。いくつ叶うの?三つです。

じゃ真っ先に、あなたの夢が実現するように願いましょう。

林さんは来年ここで修士課程を終えたら、米国の大学院で博士課程の修行を続けたいと言って今交渉中なのですよ。ここにきた頃はどうしようもなかった英語も今はだいぶ良くなったし、うまく見つかるよう、心から祈っています。






最終更新日  2013.12.25 07:42:02
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2013.12.13
カテゴリ:研究室風景
さえ:

例によって朝のYahooニュースを見ていたら、「『疲れた』は禁止、モチベーションを下げる社内ルール」というのがあって、笑ってしまいました。

この頃とみに厳しくなった “法令遵守”に縛られ、『組織内に閉塞感が蔓延。モチベーションは低下し、新しい試みを敬遠する事なかれ主義によって、企業の成長、引いては経済が停滞することを「コンプライアンス不況」と言う』そうです。

『社員のモチベーションを上げるためだろうが、「マイナス発言禁止令というルールがある。「疲れた」は禁止ワード。そんなときは「充実感あった」と言い換える』決まりのある会社があるんですって。(資料1)

「疲れた」なんて実に自然に口から出る言葉ですね。誰が、そのかわりに「充実感あった」なんて、真面目な顔して口に出せるでしょうか。

ぼくのブログに何度も書いていますが、うちの娘が学校で「ちくしょう」を覚えてきて連発するので、かわりに「ふんぎゃあ」と言いなさいと言ったら、彼女はそれを真面目に実行していましたが、そのうち馬鹿しさに気付いて、言わなくなりました。もちろん「ちくしょう」も言わなくなりましたね。

サラリーマンが、疲れて社に戻ってきて椅子にどかっと座って、「充実感あった」なんて口にするなんて、実にあほくさて笑えますね。そう言おうと思うだけで疲れてしまって、元気がなくなるでしょう。沈滞しきった空気の会社の雰囲気が想像できます。

その点、大学での生活は実に気ままなものです。まったく、縛りはなし。うちの学生も、朝8時から11時まで、午後は2時から5時まで実験室にいなさいよ、どこかに用事があるときはその旨ぼくに知らせてから出掛けなさい、というきまりだけです。それ以外はすべて自主的な生き方に任せています。のんびりしたけりゃ、それでよし。やがて時期が来て、研究の結果が出ないで困るのは学生自身ですものね。

ぼく自身に対するルールは、誰に向かっても「忙しい」とを決して口に出さないこと、という一つだけでしょうか。

これはむかしぼくが研究室で宮仕えしていた頃、研究の上の相談で上司(つまり教授や、部長)に会いに行ったとき、その上司が顔をしかめて「とっても忙しい、後にしてくれ」ということがあり、そういう上司に勇を鼓して会いに行ったのに断られて、さらに話をしに行く意欲を失ったことを覚えているのです。

その時、いずれぼくが人に責任を持つようになったら、決して「忙しい」とは口にしないと誓ったのでした。

そして、ぼくは何をしていようと、どんなに仕事の最中で中断されたくなくても、自分の研究室の誰かが会いに来たら、必ず手を休めて話を聞きました。

さらには、研究室以外の人が来ても、同じように決して「忙しい」とは言わずに会いました。これは長く生きているうちに、人は得てして「忙しい」と口にすることで自分を偉そうに見せるものと、学んだからですね。

幸い、この頃は「忙しい」ことは滅多になく、何時でも誰でも来てくれることは大歓迎です。「忙しくない」と嘘をつくこともなくなって、心の赴くまま「充実しない」人生を幸せに生きています。


(資料1)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131207-00527109-sspa-soci

『「疲れた」は禁止。モチベーションを下げる社内ルール』週刊SPA! 12月7日






最終更新日  2013.12.13 08:32:13
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2013.11.29
カテゴリ:研究室風景
さえ:

先週、うちの博士課程の王くんが教授室に来て工具の入っている引き出しを開けてごそごそしているので何しているのかと思ったら、巻き尺を探していたのです。引き出しには一般的な研究室でも必要なドライバーやレンチなど日本で使っていた工具を持ってきてまとめておいてあるのですが、勝手に持ち出されてそのまま戻ってこないことが多いのです。巻き尺も例外ではなく、見つからないようでした。

どうして探しているのかを訊くと、この教授室の広さを測定して知らせろと大学の某所から連絡があったそうです。

この建物は2003年の竣工で、もちろん大学が作ったものなので、設計図は当然あるはずですね。大学当局が部屋の広さを把握していないはずはありません。

ぼくたちはこの建物が出来たときに日本から来て入ったので、建具の残りでゴミだらけの部屋を周囲の学生たちに手伝って貰って大掃除しました。そのあと、書棚や、机を入れるために部屋の大きさを測定しているので、部屋の大きさが、約60平方メートルであることを今でもきちんと認識しています。

ですから、『それなら計るまでもなく部屋の大きさは60平方メートルといえばいいんだよ』

でも、ここでいたずら心が顔を出しました。

大学が部屋の大きさが知りたければ、以前の書類を出して調べれば直ぐに分かるはずだし、それが見つからないときはしかるべき人を寄越して計ればよい、それなのにそれぞれの研究室の学生に頼むのは、その結果がどうであれ、それを受け入れると言うことですね。

それじゃ、50平方メートルと報告して違うと言われても、ちゃんと計ったらそうなったと主張すれば済むことだし、それは違うという根拠があるとすればもとの原図があると言うことだから計る必要もなかったことになるし、隣の教授室と比べて狭すぎるじゃないかと言うことになら、同じ広さだと知っていることになるのだからその数値を使えばいいわけだし、『この際、50平方メートルって報告してみたら』と王くんに言ったのでした。

こんないたずら心をさえに話せば、大いに喜んでくれたでしょうけれど、最終的には「でも、駄目よ、大学をからかったりしては」とぼくを諫めたでしょうね。

王くんはぼくの提案にこにこして頷いていましたが、ここの学生は権威には無条件で従うべしという制度で育っていますから、ぼくの言うことなど気にもせずに、ぼくから聞いた60平方メートルという数値を報告したに違いありません。

なんだか、退屈な毎日が続きます。






最終更新日  2013.11.29 07:28:48
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2013.09.19
カテゴリ:研究室風景
さえ:

ぼくたちが中国に来た十年前は、中国は日本に比べると休日の少ない国のような気がしました。十年前は5月初めの7日間の労働節と10月初めの7日間の国慶節休暇が際だっていて、ほかには休日が殆どなかったと思います。

それでも大学は2月の春節を挟んで6週間、夏も同じく6週間の休暇がありますから、細胞培養が研究材料のぼくたちの研究室は普段は休みのない方が研究に継続的に集中出来るので、ありがたかったですね。

その中国でも休日が意図的に増やされていて、昨年からは先祖の墓にお参りをする清明節が3日間の休暇になりました(旧暦4月の中旬)。旧暦6月の初めの3日間は端午節になりました。

そして今年からは中秋の名月を愛でる中秋節が同じく3日間の国家休日になりました。ぼくたちの研究室では、夏休みはともかく2月の春節休暇は家族が一堂に集まる日として文句なしにフルに休暇を認めているので、それ以外の時期の休暇は公式の休みにしていません。理由は書いたとおり、正直に休んで手を休めていては研究は全く捗りませんもの。

今年の中秋節休暇は、9月19日から始まる3日間でした。

瀋陽に家族がいる学生は普段は寮生活でも帰りたければうちに帰ってよいことにしていますが、故郷が遠い学生は3日間では故郷に帰るわけにも行かないので、うちの研究室では普段通りの研究生活を続けます。

それで、研究室に残った学生を、夜は一緒に食事に誘うのが今までの恒例でした。

今年は瀋陽出身の学生が一人いるのですが、うちに帰らないというので訳を聞いたら、親はその親を訪ねて親のうちに行ってしまったのでぼくは独りぼっち、と言っていました。それで今年は全員揃っているので、材料を買ってきて研究室で日本で言う「しゃぶしゃぶ」、此処で言うと「火鍋」をして楽しみました。

肉は牛肉と羊肉です。羊肉は、ぼくたち日本人は、あの強烈な匂いに辟易していてサッポロビール園の味の付いたジンギスカン焼き以外食べることがないですよね。

でも、羊肉が臭くて食べられないのは日本の羊肉だからです。中国では臭くなくてとても美味しいと言うことを知るまでの二年間、羊肉を食べることを忌避し続けて大分損をしたと思いますね。

スーパーに行くと、肉は凍らしたものをスラーサーで1 mmくらいに切って、そのくらい薄いと直ぐにカールするので、そのまま(嵩張ったまま)凍らせて売られています。ですから1 Kgのしゃぶしゃぶ肉を買うと、凄く嵩張るのですよ。凄く豪勢に肉の買い物をした気になります。

この日の中秋の名月当日は曇で明月が見られないという天気予報でしたが、実際に夜になると、雲が晴れて満月を眺めることが出来ました。今の瞬間、世界のあちこちでこの月を見ているのだなと、思います。

「天の原 振りさけ見れば 春日なる 三笠の月に 出でし月かも」という、壮絶な和歌がありますね。

もう何年も前のこと、「満ち足りて 比翼の鳥の 月見かな」と、まだその時は未婚だった学友に書き送ったことを思い出します。直ぐに家族が一人増え、二人に増え、一緒に月見をしたっけ。

それがまた減って三人になり、二人になり、今やとうとう一人。

今年はまだ、一緒に月見をしてくれる疑似家族に囲まれていますが、またいずれ一人になるでしょう。

「生者(盛者)必滅、会者定離」っていうのは、何も平家のことを言っているのじゃないのですね、人生の真理です。だからこそ、一期一会と思って、今の瞬間を大事にして生きていきましょう。






最終更新日  2013.09.30 15:16:18
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