汚染のひどい日は正常○で行こう
さえ:冬場になって強風に吹かれると瀋陽の空気の質は良くなくなることがありますが、それが汚れた空気を運んでくることもあるわけです。日本の基準値に近いまで綺麗に下がることも年に数回はありますが、最近は200-300位を上下しています。この週末の土曜日の最高値は385だったし、昨日の日曜日の最高値は410でした。日本の基準値(それ以上は好ましくないという値)は35ですよ。この大気汚染は健康に悪いとこの国の政府も言い始めていて、特に生殖にも影響するとも述べているので、それが言える科学的な裏付けがあるか調べていました。ぼくには、もう関係ないかも知れないですけれどね。でも、関ヶ原の戦いで敗れて処刑されることになった石田三成が、のどが渇いて水を所望したところ、柿ならあると言われました。石田三成は柿は痰の毒であるといって断りました。直ぐに首が切られるのにと周りがあざ笑うと「大志を持つものは最後まで命を惜しむものだ」と答えたそうです。ぼくも、この伝でいきましょう。前に、ナノ粒子を吸っていると精子の形成に影響を与えるし、ナノ粒子を吸ったマウスの母親から生まれた雄の子供も生殖細胞に深刻な影響が見られるという論文を11月15日のブログで紹介しました。(資料1)それ以外に説得力のある論文が見つからないので、ぼくたちの研究ではよく使うNCBIのPubMedに代えて、Google Scholarを使ってみたところ、また別な文献に行きあたりました。中には、結構おかしな論文もあるのですよ。ヒトの射出した精子を採取してその後の活動度を追っているのです。PM10の粒子50マイクログラム(以上)を含む液体に入れておくと精子の形が変わったり、活動の元気さがなくなるという論文です。まるで大気汚染の中で性交をすると、元気のない精子になってしまっているぞ、と警告しているようです。(資料2)大気汚染がそこまで影響するでしょうか。それを言うなら、PM2.5という観点で言うと、汚いベッドの中の空気の方がもっと汚れているかも知れませんね。この論文から読み取れるのは、汚れた布団の上でSexすると、出来てくる子供がやばいかもということでしょう。大気汚染のひどいところで、それでも子供作りが必要なら、空気が入るためにポコポコ音のする後背○は使わない方が良いと言うことでしょうか。「汚染のひどい日は正常○で」ってことですね。こんな論文でも、役に立つという例ですね。雄のマウスに汚染空気を吸わせると生まれてくる仔マウスの性比が正常な値から大きく外れて雄が減少するという論文もありました。しかし、本論文が読めないので正確に評価出来ません(資料3)中国では、男女の性比が、ところによっては1.3:1にもなると言うことですから、大気汚染が性比に影響していないか、影響してもものの数でもなく男女産み分けに邁進しているとか、言うことでしょうか。マウスの親と子にディーゼルエンジンの排気ガスを吸わせた実験が発表されています。(資料4)マウスをディーゼルの排気ガス(PM2.5濃度として25 μg/㎥相当)に、1日1時間「暴露」させた環境とフィルターを通した空気で管理した環境「クリーン」で育てるのですが、妊娠中にPM2.5に暴露するケースと出産後の新生児期にPM2.5に暴露するケースで、コントロールを入れて、4群に分けました。CC群(クリーン-->クリーン)、EC群(暴露-->クリーン)、CE群(クリーン-->暴露)、EE群(暴露-->暴露)。生殖期になる生後10週で卵巣と子宮を摘出し、卵胞や細胞の状態を顕微鏡で観察すると、EC群、CE群、EE群では原子卵胞数がCC群の約1/3に有意に低下していたと言うことです。これは汚染空気を吸うと、母体だけでなく、そのあと生まれてくる子供の生殖機能にも影響することを示していて、(資料1)の母体の汚染吸気吸引がその雄の子供の精子に対して影響を与える結果と対となる実験結果です。これらの実験を確認する追試実験を急いで行って、結果が再確認されたら、汚染空気による生殖細胞への影響を人々に徹底して知らせて、一方では大気汚染、もちろん水質汚染、土壌汚染も、万全の対策を急ぐべきでしょう。(資料1)Effect of nanoparticles on the male reproductive system of mice.Yoshida S, Hiyoshi K, Ichinose T, Takano H, Oshio S, Sugawara I, Takeda K, Shibamoto T.Int J Androl. 2009 Aug;32(4):337-342.Effects of fetal exposure to carbon nanoparticles on reproductive function in male offspring.Yoshida S, Hiyoshi K, Oshio S, Takano H, Takeda K, Ichinose T.Fertility and Sterility, 2010, 93(5), 1695-1699. (資料2)Effect of PM10 on Human Spermatozoa: An In Vitro Study.M. Geminiani, F. Moretti, R. Cardinali, P. Lattaioli, F. Cetta, C. Castellini, G. Collodel.The Open Andrology Journal, 2011, 3, 1-5. (資料3)Increased levels of air pollution and a decrease in the human and mouse male-to-female ratio in São Paulo, Brazil. Joabner B. Gomes, Patrícia C. Pieri, Simone G. El Khouri Miraglia, Jorge Hallak, Paulo H.N. Saldiva.Fertility and Sterility, 2007, 87(1), 230–232.(資料4)Intrauterine exposure to diesel exhaust diminishes adult ovarian reserve.Ogliari KS, Lichtenfels AJ, de Marchi MR, Ferreira AT, Dolhnikoff M, Saldiva PH.Fertility and Sterility, 2013, 99(6), 681-688.