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わたしのブログ

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続きです。

このようなことを知らない奥さんたちが来て「まぁ、全部売り切れたの?良かったわね。」ニコニコ顔だ。「いや、違う。開拓団の子供たちに全部食わせてしまった。」と言うと「エー、それじゃ丸損だわよ。ヤーだ-。」・・・何が損だ。俺の金でやったんだぞ。と言ってやりたかったがそこを我慢しどころ。こちらにも弱みがある。「また、やろう。」と言ってその日は引き上げた。アパートに帰ったら皆が「あんた、悪い人じゃないんだねー安心したわ。今日からみんな一緒に寝よう。」と言いながら雑魚寝をした。
 あくる日また皆で海苔巻きを作り、屋台のあるところへ言ってみると、無い。満人に取られてしまったのか?イヤハヤ、これが本との・・・台無し・・・と言うことだろう。仕方がないので海苔巻きは奥さんたちと食べてしまった。私は元来商売が駄目な男だとわかった。
 このようなことがあってから一ヶ月くらいたった十月の末頃。防長といって、内地で言えば隣組の組長から回覧が来た。ソ連軍と保安隊の連名で戸籍簿の検査だ。新しく来た者はもどこから来て、どういう職業で、男か、女か、何歳か、申告せよ。以後、臨検隊が回るが深刻の無いもの及びそのものを匿ったものも同罪に処す。私の一番いやなものが来た。脱走兵狩りである。いつまでもこの家にいられなくなった。奉天と同じことになってきた。
 奥さんたちは「片山さん、申告して籍を作った方が良いんじゃない。)と言うが、私は迷った。うかつに申告して取り調べられたら危ない。日本人の言い訳なんかとおるはずが無い。そのうち、大連にもソ連軍が入り満州婦人も・・された。満人たちも怒り、ソ連兵をターピース(鼻でか)と呼ぶようになった。また、申告には・・本日より日本人は午後五時より明朝七時まで外出及び外泊を禁ず・・・。私はまた放浪しなければならなくなった。


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