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何をしているんだろう

あらイヤダ。脳梗塞になっちゃった。2

その2・正真正銘の時間
脳梗塞と言う病気と知りあって6年が経つ。   
初めて触れて感じた。まるで「恋人」とのお付き合いそのもの。病気だから、良いところなんてないように思える。でも、義父を見ていたら、そうでもないな?と思った。  
自営業でひたすら走ってきた人生。いいことも悪いことも、それこそ振り返る時間もないままに。ある日、字が書けない、まっすぐ歩けない数日を経て、病院で倒れる。3日程深い眠りに付き、脳出血か脳血栓かと言われながら、目覚めたら脳梗塞の入り口だった。自分は三0才独身だ、すぐここ(病院)を出て、幼い頃を過ごした街の、老舗鰻店へ行くのだと大きな楽しそうな声。起きようと試みるが自由が利かない。傍らにいる私が縛っているようだから、早くほどいてくれと、まるで御茶屋のお姉さんに甘えるように言う。心の底から若くなり看護婦さんと私をからかい、シガラミを忘れ、寝入る父。が、見舞いに来室した母から「お父さん」と言われ、その表情が急変した。  
 目に入る情報から、時間の計算を勝手にはじめる脳のどこか。それを阻止する今の心。三〇才は目覚めて数日。七二才だと気が付いてしまった。 
でも長い人生で、心から何の疑いもなく若返った時間を生きることが他にあるだろうか。正真正銘、心から三〇才に戻った時間。病気も捨てたものではない。




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