父と暮らせば・・・こまつ座編
いのうえひさし原作のこの作品。ヒロシマで原爆に殺されたお父さんが、幽霊になって娘と暮らす・・・というか、時々出てきて意見するというお芝居。先ごろ、宮澤りえ主演で映画ができて、話題になっている作品でもある。おととしの夏。「この子たちの夏」という朗読劇にスタッフで参加した。このときは、被爆者の親子の手記を地人会が台本にしてそれなりの理解はしていたつもりだった。が、やぱりつもりだった。父と暮らせば・・・この作品を見たら、被爆したこと事体を忘れたい生き延びた人々の絶叫思い出したくもない惨状とむごさを、その姿で語った亡くなった人たちの無念そして、今の時代に、この作品を作り上演する意味合いこの全部が、あわ立ちながら逆巻く波のように自分にかぶってきて、1時間20分の芝居に釘付けになり終わっても立てないくらいの重圧感を感じた。救いは、いのうえひさし独特の言い回しとユーモアのある場面展開に笑えたこと。娘さん=芳江さんの、恋人を思う=生きる勇気で終わったことだった。太陽の表面温度が6,000度。原爆の爆発時温度はそのざっと倍の12000度。一瞬にしてすべてを溶かして、焼きつくしたことを数字を突きつけられ、再度知る。投下されたその時の姿勢や、どこにいたかどちらを向いていたかそんなことが、生死のハザマを分けた事実も生きながら焼け死んだ父とむごいと叫んで逃げた娘の無念のそのときの回想で知った。なにも知らなかった。なにも知らないで終わらせようと、したつもりはないが実際は、そうなっている。広島にも行った本も読んだ。でも、やっぱり何も解らないまま、42歳になっていた。