水無月と土砂災害

 15.6.4
 
 六月の旧暦名は「水無月」が良く知られている。無は「の」の意味。
 今は水の月と言う方が分りやすい。また、鳴神月、風待月の別称もある。6日は芒種「芒のある穀物の種まきの侯」で、農家の田植えが始まる時期。11日は太陽が黄経80度に達する入梅。北海道を除き日本の雨季を迎える。
 降水の前に種を蒔き、鳴神は雷鳴で、本格的な梅雨の幕開けに備える決意を促し伝承としていたのだろう。風待ちは、じめじめした南寄りの風に飽き、涼しい北寄りの風を待ち望む庶民の気持ちの現れか。これらの言葉から、昔の人々の実体験に基づいた自然や季節の観察力と表現の正確さ・心のゆとりと雅さを思い頭が下がる。

 梅雨は我国の農業・漁業に恵みの雨を降らせるが、集中豪雨も多発し、毎年各地で短時間に記録的大雨による土砂災害をもたらす。防災担当者にとって、最善な情報収集と瞬時の的確な判断を求められる油断できない季節。

 さて、近年頻発している都市部などのゲリラ的大雨対策として、気象庁は新たな情報提供で、防災活動の支援を行うと発表した。
 レーダー・アメダス解析雨量を用いた降水短時間予報を、1時間間隔の発表から30分毎に改め提供する。短時間の降水に伴う、近年の土砂災害や崖崩れ等の自然災害に備える。防災対策に極めて有効なサービスが予定されている。

 土砂災害は降水が直接のきっかけだが、忘れてならないのは地震活動が伏線となったり、前後して発生すること。
 この顕著な例は、平成9年7月10日未明に発生した鹿児島県出水市の大規模災害。この年の春先から付近では群発地震。地質は頑強な輝石安山岩だが地震の影響で地盤が緩んでいた。この地震が遠因で、当時の砂防担当者の想定外の山腹崩壊。付近は急傾斜危険区域に該当。針原川上流の民有地で住宅開発に伴い広範囲で、広葉樹が根こそぎ削り取られていた。ために、本来の保水力が低下。本例は多くの教訓を示唆。

 棚田の保全と保水力の再評価。特に崖・急傾斜地付近の農家や住民にとって、最新の防災情報のタイムリーな活用の是非が明暗を分ける。


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