進化する天気予報

  暮らしの手帖 第10号(2004初夏)     

最近、天気予報がよく当るようになったといわれるのはなぜか。
それは、妙な話だが、予報を利用して、何か役に立ったかいいことがあった人が、
増えてきたからだと言える。

テレビやラジオなど無料の天気予報は、大まかな誰にも同じ内容で、
自分の予定をわざわざ放送時間に合わせる必要があり不自由である。
一方、気象会社は天気、気温や雨量、風の強さなど個別の要望に即座に対応する。
契約者は何時でも繰り返し情報を確認でき、受取る方法もお望みのサービスが基本。

雨か雪、風が非常に強い、または台風の接近など、天気が悪い時に大幅に利用
が増えるのは、使い勝手の良さが買われていることを物語っている。

今では、雨または雪に関する情報が充実し、それこそ10分毎の雨雲の高さや
雨の量や範囲が分るなど、気象庁の観測技術の発達と情報管理が整っている。

まず、アメダス(地域地上気象観測網の略称)で、風向・風速、気温、雨量、
日照時間のデータが、東京に全て集められている。
観測地点は全国で約1350、17km毎に1個所である。

次に、物に反射し戻ってくる電波の特性を利用した気象レーダにより、
いながらにして、雨粒の大きさや雲の状況を判断できる。

この2つの情報を総合し、1km四方の範囲で、
10分毎に雨の量や移動方向を予測できるようになった。
つまり、10分間の余裕があれば、
ずぶ濡れで風邪をひくようなことにはならないのである。

さらに、平成6年5月の気象情報自由化の恩恵で、
面白みのない画一的な予報に代って、
関心の高いピンポイントの天気予報を提供することが可能となった。
今も、防災分野では各社の独自予報が、制限付ではあるが、認められたことが
大きく貢献している。
 

そして、積極的な情報化と最新技術の導入で、業績が上向き、異業種からの参
入や優秀な人材が集まってきたことで、予報精度の向上が一気に進展してきたと
いうわけである。
予報が当るようになった結果、様々な分野や日々の生活の中でも、お役立ち情報
ということで、新しい気象情報サービスが生まれた。

第一に、農業の場合。
真夏の稲の生育と気温や日照時間が、作況に影響するので、自分の田んぼの天
気が知りたい米農家は、野良仕事の手を休め、携帯電話で、絶えずサービスを利
用している。

つぎに、近年の健康ブームの追い風がある。
生活習慣病に良いというイワシや鯖、鮭などの漁労作業の成否は、海の天気が
大きく左右する。
腕のいい漁師は、毎朝必ず天気予報を確認し、安全操業へおさおさ怠りない。

さらに、健康管理や介護現場でも、天気予報の応用サービスが始った。
喘息の発作、いらいらやボケの症状と、前線の通過や気圧と湿度など、気象情
報との関係があるという報告もある。
そして、要介護者の発症原因が、かなりの割合で予測可能となり、適任のヘル
パーの配置など、介護サービスの改善につながると期待もされているのである。 


© Rakuten Group, Inc.