552690 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

風に恋して ~自由人への応援歌~

風に恋して ~自由人への応援歌~

旅 「イスラエル」編 4章

旅~イスラエル編 4章~


平成8年2月22日

ベドウィン氏から電話が入り、ホテルの前にいるから出てきて欲しいとの連絡が入る。マサダ、エンゲディ、クムラン、死海に心を残しながら、車中の人となる。名残を惜しんで身体でその波動を受け止めていると、「どうしたの?今日、君は全く語らないね。」から始まって、「愛しているよ。」「幸せかい?」「なぜキスしてくれない。」……と矢継ぎ早にうるさいこと。彼の名前はアリ。私に名前をつけてくれる。ヘブル語で「ダリア」。とても良い名前だそうだ。昨日より、この男にずっと迫られ続け、もう放っといてと言いたい心境。延々一日中続く、「愛してる。」「君は神からのプレゼント。」「僕は幸せだ。」「愛しているかい?」「幸せかい?」「何かして欲しいことは?」「なぜ抱き合わない?」「なぜキスしてくれない?」……「私は日本人です。日本では人前で抱き合ったり、キスしたりしないのが習性であり、文化なのよ。日本人はとても恥ずかしいと思うのよ。解かる?私はキスが嫌いなの!」と思いっきり答えてしまう。ごめんね。アリはとっても良い人だと思うけれど、私は恋人を求めにこのイスラエルに来たわけじゃない。そっとしておいて欲しい。感じ続けたいの、イスラエルの波動を、と心で謝る。
そんなやりとりのドライブを続けていて、周囲の景色が変わったなと感じると同時に、指先がビンビン痺れてくる。ハートがバクバク脈打つ。苦しいよ、呼吸がしづらいよ、と思うとそこは既にエルサレム。こんなにも波動が違うのか。オリーブ山に登り、エルサレムを見下ろす。ゲッセマネの園へ行く。イエスが処刑の前日に祈り、ユダの裏切りの接吻を受けて、ユダヤの権力者側に引き渡された場所とされており、そこには樹齢3,000年と書かれているオリーブの老木がある。万国民の教会、そしてマリアの被昇天教会へ行く。歴史を知らない私は、ただその場の波動を感じて歩くのみ。
マリアの被昇天教会に入ると、何かが違うと感じるが、そのまま一連の御神業を終え、出口への階段を上っている時、急に哀しみに包まれ足が動かない。よろけて、そのまま階段に座りこむと同時に、声をあげて泣き出してしまった。なぜ哀しいのか、なぜ声をあげて泣いているのか、その理由はわからない。不審に思う顕在意識は戸惑っているが、どうすることもできない。心奥からの衝動。ただ、もう哀しくて、鳴咽する私の声は教会内に木霊する。神父さんが優しく見守っている中、ひとしきり泣きじゃくる。このままでは帰れない。「アリ、ごめんね。もう一度マリアの所へ行くわ。しばらく待っていて。」と再度、マリアの前へ行き、座りこむ。本当に不思議だけれど、ここだよという場所になると、それまで居たたくさんの人々が見事に居なくなる。その場にはいつも私一人が残される。マリアの目を見詰め続ける。「いいのよ。いらっしゃい。私の身体を使って、弥勒の世を共に創りましょう。」と話し掛ける。イエスが苦悶したと言われる万国民の教会では、冷静にその波動を受け止められたのに、なぜマリアは私を呼び止めるのか。マリアの波動は、一種、鬼子母神で感じたものと近く、激しく私の身体を揺さ振り、ハートを締め付ける。波動が落ち着くまで瞑想を続ける。その後、ゲッセマネの洞窟で御神業。

ベツレヘムは美しい落ち着いた街。だけど、エルサレム同様、ユダヤ人地区とアラブ人地区は、はっきりとその様相を異にしている。アメリカの黒人地区と白人地区を思い出す。「人種の垣根、壊そうよ。人種も、国境も、貧しさも、病気もない、幸せな世の中を創ろうよ。」と心の中で語り掛ける。エルヤーベハネハボーダーヨーダー。

今日の最後は、ホロコースト慰霊館。この建物には入りたくなかったらしく、アリは初めて「車の中で待っているから。」と私を解放してくれた。600万人虐殺されたという、歴史上の瞬間を捉えた写真の一つ一つがこれでもかと迫ってくる。ゲットー跡地に作られており、庭には世界各地よりの慰霊の木もあり、無名の犠牲者の碑が特に私の足を止めさせた。内部回廊を歩いている間中「エルヤーベハネハボーダーヨーダー」「光明浄化・因縁消滅・波動浄化」を繰り返す。涙が静かに溢れてくる。「辛かったね。悔しかったね。苦しかったね。でも、もう救われた。過去の苦しみ全てを今日解放して、悦びだけを感じよう。もう、苦しまないで大丈夫。あなたは幸せになった。悦びが一杯の、光の世界に入っていこう。大丈夫だよ。」

内部で迷路に入ってしまった。出口が見つからない。またしても誰も居ない。あれほど居た観光客はどこへ消え失せてしまったのか。たった一人、音のない空間、悲惨な写真がどこまでも続く部屋から部屋へ、ただただ歩き続ける。庭に出る。庭にも誰も居ない。幾つかの慰霊碑がひっそりと私を待っている。それら一つずつ、UFO氏の御札を埋め、祈りを捧げ続ける。心残りなく、浄化してまわる。「さて、帰ろうか。出口を教えてね。」再度、迷路に突入する。「お願い。いつまでもここに居るわけにはいかないのよ。出口を教えて。私を導いて。」と心の中で語り掛けながら、苦しみの無音の写真の中を歩き続ける。同じような所をグルグルまわらされ、やっとの思いで車までたどり着く。人間の愚かさ、すさまじさ、狂気がたまらなく辛い。

街は観光客でいっぱい。バスでいっぱい。世界中から建都3,000年のフェスティバルに人々が集まっている。日本人の団体にも結構出くわした。「今日はまだ一回もキスしていないよ。キスしようよ。」飽きないねこの男は!!「でも、これが日本人のマナーなの。文化なのよ。」「僕は君と朝まで一緒にいたい。信じてくれ。君が望まない限りMake Loveはしないから。」顔を洗って出直しておいで!と怒鳴りたいが、傷つけない様に、優しくオ・コ・ト・ワ・リする。毎日迎えに来るというのも「お願い、私は一人でいたい。エルサレムを歩きたい。この街を感じたい。だから一人にして。」と、3日後ガリラヤ湖に向けて出発するまでアリの申し出を断った。良い人なんだけれど、私は一人でいたい。バスでまわったり、探したりは大変疲れるとは思うけれど、明日からのエルサレム2日間は一人になりたい。過去生でどんな関係だったのか知らないけれど、抱きつかれる度に波動が違うと感じる。体臭もちょっと辛い。安心できる波動ではないから、近いけれど、あまり良い関係ではなかった様に思うよ。今日は疲れたな。死海とは異なる波動のオーバーチャージをしてしまった。頭がクラクラしている。死海の波動は強烈だったけれど、ここエルサレムの波動は複雑だ。ミックス波動で、どれも重い。

2月17日、イスラエルへ旅立つ私の歓送会をやろうということで、UFO氏、森本康彦氏、昌美嬢、昌美嬢の友人 田中氏、1月22日に我が家に現われてそのまま住み着いてしまった千亜紀嬢、それに息子の友人 今村興一君と娘の理恵のメンバーでカラオケに行ったのだが、その時の写真を今日、エルサレムで現像した。どのプリントにも興一君の笑顔がある。なぜか興一君の笑顔を見ていると、身体から重い波動が消えていく。「ありがとう、興一君。」と言葉にしてみる。理恵がどんどん美しくなっていく。この所、そのスピードが凄い。写真に写る我が娘の愛らしさに、つい顔が緩む。「理恵さん、とっても綺麗だよ。ママの誇りだよ。愛しているよ。」と口に出す。この気持ち、娘に届くだろうか。何度か理恵と話したくて、国際電話にトライするが、どうもうまくつながらない。今日のホテル、YMCAでもトライしてみるが、寝ぼけた男で駄目だった。直接ダイヤルインできない。何度かオペレーターにつないでも、待たされるのみ。旅はまだ続く。日本を忘れろということか。

月がとっても綺麗。絵に描いたような月で、思わずカメラのシャッターを押す。朝は雲一つない空なのに、午後からは常に鳳凰雲が出てくる。大勢の人の祈りによるものであろうか。アリがカメラを扱うのが面白いらしく、手放さない。彼の所有物の中には、どうやらカメラがない様子。私の手にカメラが戻ってくるのは別れる時だけである。今日、別れ際、アリはまるで父親のように私を心配してくれる。「スリが多いから気をつけなさい。」「お金はホテルのセーフティボックスに預けなさい。」「道端で売っている奴等から物を買わない様に。」「バッグに気をつけなさい。」「何かあったら、すぐ僕に連絡しなさい。必ず僕がヘルプするからね。」「日曜日には朝9時に迎えに来るから。待っていなさい。他の車に乗らない様に。」「ガリラヤ湖では誰に会うの?その時、ドレスを着るのかい?」いい加減にして欲しい。私が誰に会おうと、ドレスを着ようが着まいが、(ドレスなど持ってきていないけれど)あなたから指図される覚えはない。放っといてよ!と言いたい。

心配の仕方や気の使い方が、今、こうして書いていて気になった。浩さんに似ている。父親のように私の行動の小さなことまで、一つ一つ注意して見ているし、自分が私に変わってやろうとする。これって浩さんだ。もしかして、浩さんがアリにウォークインしたの?確かに、この旅に出る時、「浩さん、ずっと私についてきて、私を守ってね。」とはお願いしたわよ。でも、ネ…。まさか!?常に私の側にいて、それこそ私の箸の上げ下げまで面倒を見て私を守る役割は、ガイド兼ドライバーはまさに打ってつけのポジションだ。
「君は特別の人。」「君を愛している。」「君は幸せかい?」「キスしておくれ。」「僕を信じて。」「僕達の心はお互いに深くつながっている。」「今、何を考えているの?」「何を祈ったの?」「僕のことを祈っておくれ。」「君が望まない限りMake Loveはしないから、朝まで君の側にいさせて欲しい。」「僕は眠らないで君を守っているよ。」「僕はマッサージが上手だよ。やってあげる。」「身体には毎日ボディクリームをつけなさい。ここは乾燥するからね。」「良いアイクリームがあるよ。目の周りにつけた方がいいよ。ほら、見てご覧。こうするんだよ。」「水を持ち歩かなきゃ駄目だよ。」「アラブ地区には入っちゃいけない。とても危険だよ。」「なぜキャッシュばかり使うの?クレジットカードを使った方がいいよ。」「君と僕は一つだよ。心でつながっているよ。」・……………………。
浩さんが18歳から19歳の頃、私に迫っていたのと同じパターンだ。浩さんからの愛があまりにも濃密で、やりきれなくて逃げ出したことがあった。毎日毎日、愛の集中攻撃を受け、疲れ果てた思い出。「少し私を一人にして。」「私を放っといて。」高校生の時、浩さんに対して口にしてしまったこの同じセリフを、今日、私はアリに対しても口にしている。あのマサダの砦で浩さんがアリにウォークインしたとでも言うの?それとも、ただの偶然?何とか言ってよ。違うよね?私の思い過ごしだよね。浩さん、返事をしてよ。泣きたくなってきちゃった。寂しそうに帰っていったアリの後ろ姿。違う。浩さんじゃない。マサダで何度も抱きしめられた時、私のハートは何かを感じて脈打ったけれど、安心感はなかったもの。もし、浩さんなら、安心感があった筈。違うよね。単に良く似た行動の男だよね。浩さん、私はあなたを愛している。アリは愛せない。でも、アリの言動はあなたにそっくりだ。この2日間、もう1週間も一緒に行動しているのじゃないかと錯覚するくらい、アリは私を包み込み、濃密に愛を口にし、私を呼吸困難に追い込んだ。まるでその当時の浩さんのように―。やめてよ。よして!私を混乱させないで。浩さんは浩さんのままがいい。昌美嬢のチャネリングで「浮気するなよ。」とあなたが言ったとき、「そんなに心配なら、誰かにウォークインして私を愛してよ。」とは言ったわよ。でも、料理をしながらのほんの戯れ言。本気で言ったわけじゃない。アリはその骨格、身長、体型、今思えば、浩さんに似ている。言動だけじゃなく、似ている点はかなりあるけれど、私は浩さん、あなたを愛しています。アリではなく、あなたが欲しい。

To be continued



© Rakuten Group, Inc.