最新情報 前立腺がんの診断と治療

2022/01/17(月)03:46

転移性前立腺がんの患者さんに対する前立腺への放射線療法

前立腺がん(330)

​​◆◆ 転移性前立腺がんの患者さんに対する前立腺への放射線療法 ◆◆ 9月から10月の電子配信では、転移性前立腺がんの患者さんに対する前立腺への放射線療法について解説しています。 ヨーロッパ泌尿器科学会やNCCNのガイドラインでも、最新バージョン2020では、転移性前立腺がんに対する治療の1つとして組み込まれています。​ (https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/prostate.pdfより引用、一部改変) ところで、 ​前立腺がんに対する治療には、大まかに6つあって、 1. 経過観察 2. 監視療法 3. 手術(根治的前立腺摘除術) 4. 放射線療法(外照射/内照射) 5. 内分泌療法(男性ホルモンを下げる治療)6. その他(抗がん剤治療、放射線同位元素治療など)があります。 お示しした6つの治療法の中で、根治療法と考えられるのは、手術療法と放射線療法です。 根治療法としての手術療法と放射線療法は、前立腺がんの患者さんであれば、誰でも受けられるというわけではありません。 前立腺がんが前立腺内に限局している、もしくはそれに近い状態の時に、根治療法としての手術療法と放射線療法は考慮、選択されます。 それが、いままでの泌尿器科医の常識です。 逆に言うと、骨や内臓などに遠隔転移がある場合や明らかにリンパ節転移を認める場合は、手術療法と放射線療法はお勧めではないということです。 しかし、少しずつですが、考え方に変化が出ています。 根治療法としての手術は、私自身は~75歳ぐらいまで、放射線療法は80歳ぐらいまでは、お元気であれば選択しています。 ただし、遠隔転移や明らかな骨盤リンパ節を認める場合は、そして病状が進行中の場合は、前立腺全摘や前立腺への放射線療法は患者さんには、積極的には勧めていません。 <他のがんでの局所療法> ところで、 『腎癌、卵巣癌、大腸癌では、原発巣の摘除により、生存率の改善や全身療法への反応性が改善する』 と言われています。 日本では、腎がんであれば、遠隔転移があっても、体力が許せば、腎臓摘出は普通に行われてきました。 おおもとのがんがある腎臓をとることで、きちんと診断できるだけでなく、治療成績が上がって、長生きできる可能性があるという理由です。 おおもとのがんのある腎臓をとることで体内のがん組織の量をできるだけ減らし、免疫力を上げて、寿命を延ばす可能性があるといわれているのです。 ものすごい効果があるとはいえないのですが、基本的に行っています。 前立腺がんでは、どうでしょうか? 前立腺がんでは、上でお話ししたような、腎がんのような話はないと考えられています。 手術を受けられる患者さんはお元気で若いということかもしれません。 前立腺がんも腎がんと同じく原発巣である前立腺をとることや放射線をあてることで、それ以後の治療にいい影響を与えることができれば、今後は治療を見直さなければなりません。 もちろん体力的に手術や放射線療法が可能な患者さんしか、このような治療は受けないので、今までの研究で成績が良かったのは、比較した、患者さんのグループに偏りがあったためかもしれません。 私Uromasterは、遠隔転移のある患者さんに、すぐに手術を勧めたり、手術を実際行ったことはありません。 ただし、比較的若い50~70代の患者さんで、遠隔転移やリンパ節転移が1、2個ある方で、内分泌療法で効果が比較的長く得られた場合に前立腺に放射線療法を行うことはよくあります。 転移のある前立腺がんの患者さんで、前立腺に対する手術や放射線療法はまだ一般的ではありませんが、今後は患者さんによっては、手術や放射線療法は有益である可能性もあるかもしれません。 転移性前立腺がんでも、原発である前立腺のがん組織が、身体に悪影響を及ぼしている可能性があります。 また去勢抵抗性前立腺がんになったときに、前立腺から新たな転移を起こす可能性があります。 転移性前立腺がんの前立腺だけへの放射線療法は、効果があるかどうかはまだ不明ですが、じっと悪化、再燃するのを待っているのは、嫌ですよね。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 ​​ ​​ ​​ ​​​​前立腺がん治療の最前線の電子配信​​​​​​​​​​この配信は、 進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。 ​ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。​​​​​​​​

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