前立腺がんとコーヒー
◆◆ 前立腺がんとコーヒー ◆◆ 9/4の電子配信で以下のような内容の解説をしました。前立腺がん患者さんにとって、『エクササイズ、定期的な運動は、そして筋肉量の維持と増強は、、前立腺がんの治療中に行う価値がある』 前立腺がんの治療中であっても、いいことは、どんどん取り入れたいものです。 人間は誰しも、健康的な生活をして、長生きしたいと思います。さらに健康に良い生活様式や食べ物やサプリメントがあれば、生活に取り入れたいと思うのは、自然です。 私Uromasterは、毎日乳酸菌製剤を服用し、ココナッツミルクを飲用しています。これもできるだけ、身体にいいものを取りたいということから行っています。 ただ、どこまで身体にいいかは、どれが身体にいいかは、なかなかわかりません。 それでも、健康にいいものは摂って、悪いものには手を出したくありません。できるだけ、きちんとしたエビデンス(証拠)があるものを選ばないと、健康食品やサプリメントでお腹いっぱいになってしまいます。そして、結果として、何がよくて、何が悪かったかわかりませんね。身体は1つきりです。人生も1回きりです。お試しするには、時間も限られています。 できるだけ信用できるものを摂りたいものです。よくないものは、生活から取り除きたいです。 例えば、喫煙は、身体によくないことはよくわかっていて、発癌性や心臓病の原因であることは、衆知のことです。今は、たばこは吸わない、吸っているのなら禁煙するのがいいということは、様々な研究からわかっています。 がんの発症と喫煙が強く関連していることから、喫煙はしないほうがいいという推奨・結論が導きだされています。 食べ物や生活様式と前立腺がんの発症との関連に関する研究は、たくさんあります。しかし、担がん患者さん(がんを患っている患者さん)、前立腺がん患者さんにとって、どういう生活を行うことがいいのかという研究は、あまり多くありません。 前立腺がんであれ、他のがんであれ、なってしまうと、いい治療を受けることは重要です。しかし、患者さんにとっては、どういう生活をしたらいいのか、身体にいい食生活とは何かということも興味があると思います。 つまり、がん治療にいい影響をあたえる生活をしたいと誰しも願います。どういうサプリメントを摂ればいいのか、お茶はたくさん飲んだ方がいいのか、いけないのか。コーヒー、紅茶はどうだろうか。 例えば、毎日コーヒーを3杯から5杯飲んでいるけれど、前立腺がん治療にいいだろうか?悪影響を及ぼすだろうか?飲む量を少なくした方がいいだろうか、飲まない方がいいのだろうか、今のままでいいだろうかという疑問があります。毎日の生活で、日本茶、紅茶、コーヒーは普通に、取り入れられています。朝のコーヒーや紅茶、日本茶から生活がはじまる方も多いでしょう。緑茶に含まれるカテキンが健康にいいと一時期もてはやされましたね。紅茶もいいという話もあります。 イギリス人は、紅茶が大好きです。紅茶はどうでしょうか?Tea Consumption and All-Cause and Cause-Specific Mortality in the UK Biobank : A Prospective Cohort StudyMaki Inoue-Choi他. Ann Intern Med 2022 Aug 30. Online ahead of print. イギリスからの498,043人の研究報告では、1日2杯以上紅茶を飲む習慣のある人は、がんや心臓病や呼吸器疾患を含むすべての疾患による死亡率を下げることがわかりました。日本人は、コーヒーが大好きです。街のカフェはどこも盛況です。朝のコーヒーがないと、1日が始まらない方も多いと思います。 コーヒーはどうでしょうか?前立腺がん患者さんにおけるコーヒーの飲用は、治療に影響するのでしょうか?コーヒーに含まれているカフェインは前立腺がんにいいのでしょうか? <前立腺がんの発症とコーヒー飲用との関連>前立腺がんの発症、つまり、なりやすさとコーヒーは、以前から研究がなされています。例えば、Coffee consumption and prostate cancer risk and progression in the Health Professionals Follow-up StudyKathryn M Wilson 他 J Natl Cancer Inst 8;103(11):876-84, 2011. 47,911人を研究対象にしています。前向きに経過をみて、コーヒー飲用と前立腺がんのなりやすさを研究しています。コーヒー飲む量が多い人は、致死的前立腺がん(悪性度が高く、死亡リスクが高い前立腺がん)には、なりにくいという結論です。非進行性の前立腺がんや悪性度の低い前立腺がんと、コーヒー飲用量との関連はみられなかったとのことです。つまり、コーヒーをたくさん飲む人は、前立腺がんとくに悪性度の高い前立腺がんにはなりにくいという結論です。 <監視療法を行っている前立腺がん患者さんとコーヒー飲用との関連>Coffee, Caffeine Metabolism Genotype and Disease Progression in Patients with Localized Prostate Cancer Managed with Active SurveillanceJustin R Gregg他 J Urol 201:308-314, 2019グリソンスコア6もしくは7で、監視療法(無治療で厳重にみている)を行っている411人でコーヒーと前立腺がんの進行を研究しています。少量から中等量のコーヒー(1日~3.9杯)を飲んでいる患者さんでは、進行が少ない、安全という結果です。ただ、1日4杯以上コーヒーを飲むのは、前立腺がんの進行が多いとのことです。この研究では、少量から中等量のコーヒーはいい効果があるけれど、飲みすぎはよくないかもという結論です。 実際に前立腺がんの治療中の患者さんで、コーヒー飲用の影響はどうでしょうか? 前立腺がん患者さんに、焦点を当てたコーヒーの影響に関する研究は少ないようです。 すでに前立腺がんと診断を受けて治療している患者さんにとって、コーヒーを飲むことがいいことかどうかという研究が、今年2022年の8月に発表されました。対象は、5,727人の前立腺がん患者さんで、コーヒー飲用の効果を調べています。 興味のある方は、電子配信で解説しています。月4回の発行で、最初の月は、無料です。お試しで是非読んでください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。