天使の図書館

2011/03/01(火)17:20

政府は宇宙政策に確固たる軸を持ってほしい

未来産業(11)

宇宙ビジネス、商機拡大 資金供給で国際条約、参加に期待フジサンケイ ビジネスアイ 3月1日(火)8時15分配信 宇宙ビジネスをめぐる国際的な枠組みが動き出す。高額な人工衛星などの資金調達を円滑化する「ケープタウン条約の宇宙資産議定書」が、年内にも採択される見通しだ。手持ち資金のない途上国が衛星やロケットの購入に乗り出す動きを後押しする仕組みで、商機拡大が見込める。日本政府は議定書への態度を決めていないが、インフラ輸出の重点分野の一つに宇宙産業を据えるだけに、民間からは参加を望む声も出ている。  ◆「登録機関を誘致」  ケープタウン条約の宇宙資産議定書は米、露、仏、独などの"宇宙ビジネス先進国"政府が中心となって、10年にわたり議論を続けてきた国際条約だ。  条約の最大の目的は、宇宙ビジネスに対する資金供給を拡大すること。人工衛星など高額な宇宙資産を対象にした世界共通の登録制度を構築し、それを担保にすることで金融機関などが国境をまたいだ投融資をしやすくする。  途上国や民間事業者などによる宇宙ビジネスの資金ニーズは高くても、資金回収が不透明なため金融機関などは投融資に二の足を踏んでいた。国際的な法的インフラが整備されれば市場への参入機運が高まるとみられる。  日本の宇宙産業にとっても好機だ。固体燃料ロケットなどを製造するIHI子会社「IHIエアロスペース」の石井潔社長は「(条約が批准されれば)販促につながる」との期待感を示す。ケープタウン条約をめぐる会議に出席してきた学習院大の小塚荘一郎教授は「登録機関を誘致し日本を宇宙ビジネスの聖地にすべきだ」と意気込む。登録制度を監督する機関を日本に置けば、毎年の参加国会議が日本で開かれる機会が増え、衛星の販売だけでなく関連産業の商談も活発化するとみている。  宇宙産業の世界市場規模は2008年で約15兆円。過去5年間に年平均14%のスピードで成長してきた。さらに、今後10年間で地球観測衛星は、過去10年間と比較して2倍超の260機が打ち上げられる見込みだ。資金調達の国際ルールができれば、今後さらに高い成長が見込める。  ただ、宇宙ビジネスにおける日本の存在感は決して大きくないのが実情だ。宇宙機器産業の売上高は、日本が年間2600億円に対し米国は3兆8000億円、欧州連合(EU)は8700億円。経済産業省宇宙産業室は「日本のメーカーは高い技術力をもつが、国内の官需が9割で海外での受注はとれていなかった」と分析する。  ◆経産省は中立姿勢  昨年2月、IHIエアロスペースの石井社長が官民の訪問団長として訪れたアフリカでは、欧州諸国や中国がエジプト、ナイジェリアなどから人工衛星を相次いで受注する一方、日本はゼロ。「日本はまだ緒についたばかり。政府は宇宙政策に確固たる軸を持ってほしい」(石井社長)と話す。  こうしたなか、政府は昨年6月に決定した新成長戦略で、インフラ輸出の重点分野に「宇宙」を指定。新興国を対象に小型地球観測衛星を売り込むため、南米やモンゴル、カンボジアに相次いで官民合同の訪問団を派遣し、官民一体で宇宙ビジネスの"海外営業"を開始した。  ケープタウン議定書への参加が、そうした官民営業の後押しになる可能性もあるが、宇宙産業政策を担う経産省は「実効性を見極めながら、情報収集をしていきたい」と、現在は中立姿勢。必要性が未知数で、リスクも高いという理由だ。  人工衛星や衛星管理システムで国内首位(世界8位)の三菱電機は「(条約は)政策の話。決められた枠組みの中で、技術革新を進めるしかない」と成り行きを注視する構え。同社は20年をめどに宇宙関連ビジネスで現在の2倍の1500億円の売り上げを計画するが、先行する米ボーイングやロッキード・マーチンの背中は遠い。  7年もの宇宙の旅を経て、世界で初めて小惑星のサンプルを持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ」は世界を驚かせた。この高い技術力をビジネスとして花咲かせ、宇宙産業分野で日本勢が巻き返しをはかるため、議定書への参加が今後、一つの選択肢になることは確実だ。

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