2009/09/15(火)04:09
職業学校と職業専門学校
職業学校(berufschule)
まず、いわゆる「職業学校」とは、デュアルシステムのなかで、職場での修業と並行して「見習い生」が行くところであるので、この「職業学校」のみに通う事は出来ない。
よって、入学資格は、「職人養成をしている企業に『見習い』として就職していること」になる。
金銀細工師の職業学校の科目は、
専門テクノロジー(物理 化学)
数学
宝石学
宝飾史
製図
ジュエリーデザイン
実技
国語
宗教
現代社会
で、学期ごとに期末試験が全教科あり、年に2度成績表がでる。(そのほかに、修業期間中に2回総合試験が有。)
専門テクノロジーでは、金属加工におけるテクノロジー全般、化学反応、薬品、技法などを、宝飾史は、古代メソポタミア文明から現代までの宝飾の歴史を学ぶ。(貴金属細工師は世界最古の職業のひとつなので、勉強しなければいけない歴史は長い)
宝石学では、宝石の成分(化学式から、屈折率、産地、取り扱い法、など)を徹底的に学び、理論の授業とは別の実技の授業では実際に顕微鏡などの機材を使って、宝石の鑑別もする。
2回ある総合試験は、資格試験と同じ形式で行われ、筆記全教科&実技(8時間の課題)からなっている。
それプラス、資格試験では、「マスターピース」ならぬ、「職人ピース」と呼ばれる卒業作品と、訓練内容報告書(注1)を提出しなければいけない。
この作品の条件は、貴金属を材料とする、指環、ネックレスなどのジュエリーで、どこかに金具のような接続部、または取り外しが出来るようなジョイント部分がなければいけなく、(ワックスでつくったようなジュエリーは不可)ジュエリーデザイン画、設計図を審査委員会に提出し、許可を得てから、マイスターの監視のもと、32時間以内に完成させる。
採点基準は、技術的な精巧度であり、デザインの善し悪しはこの場合あまり問題とされない。
最終的な成績は、筆記の点数の平均点とこの卒業作品の採点点数が明記される。
(職人資格証明書に、この点数も書かれているところが、なんともドイツらしい)
この資格試験の最低合格ラインは100点満点の50~66点と、極めて低く設定されているが、職人資格証明書に成績も明記されている(注2)上に、ドイツでは履歴書の他に最終成績書も提出しなければいけないので、かろうじてギリギリで卒業しても就職活動の際にかなりのハンディーキャップになることは間違いない。
資格と成績が後々まで大きく影響するのが、ドイツ、と言っても過言ではないだろうと思う。
授業料は、公立校なので無料、道具、教科書等も学校から貸し出される。
そのなかで、一番お金がかかるのは卒業作品で、これはすべて自己負担。
素材は貴金属であればどんなマテリアルでも良いわけだが、やはり一生に一度しかつくらない作品、ということで、各自高価な宝石や、ゴールド、プラチナを使ったりする為に、材料費だけで、少なくとも20万~50万(もっとかける人ももちろんいる)はかかる。
ここであまりお金をかけれない場合、企業によっては材料を提供してくれるところもあるが、この場合採点後はその企業の所有物になってしまうために、少し無理をしてでも、(銀製とかで)自分の手元に残る作品をつくることが多い。
以上、職業学校と資格試験。
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職業専門学校(berufsfachschule)
さて、金銀細工師養成専門学校は、というと、まず入学試験がある。
10~12枚のデッサン、水彩画、コラージュ。工芸、造形の作品(写真)
最終成績表
履歴書
を提出した後、審査されるようだ。(ノイガーブロンズの場合)
教科は、
専門テクノロジー
造形
美術史
書道(カリグラフィー)
数学
実技
国語
宗教
現代社会
体育
で、卒業まで2~3年半。
授業料は、他のドイツの公立校と同様かからないが、道具をそろえる際に10万弱くらいかかるらしい。(それ以外には年間の諸経費をおさめる)
はじめの半年の「お試し期間」の成績次第でそのまま進学出来るかどうか、が決まる。
(判断基準はテストの合計平均点のみ。)
卒業試験は、上記した「職人資格試験」と同等と見なされるのために、その試験内容もほとんど同じである。
と、ざっとこのようなカリキュラムになっているわけだが、日本人がこの貴金細工師の職人資格を取ろう、とした場合に一番の問題となるのは、ドイツ語であろうと思う。
経験上、少なくとも、大学入学資格程度の語学力がなければ、授業についていけない。(貴金属細工師という職業の場合は特に)
いままでにも、何人かトライした日本人に出会ってはいるが、ほとんどの場合この語学的なハンディーキャップで苦労されていた。
注1の訓練内容報告書についてはまたの機会に。
つづく
職人資格証明書。パスポートのようで少しかっこいい。↓
注2