テーマ:今日のワイン(6005)
カテゴリ:Degustation
日本人に生まれて良かったなと思う事は侘び寂びに代表される儚さを理解する能力が有る事であろう。人生は有限で有る事を悟り、簡素、貧素、枯槁、幽玄なものを愛でる美意識。大玉の打ち上げ花火は美しいが、線香花火の一瞬の煌めきの儚さに真理を見る事が出来る。平家物語や枕草子に代表される諦観がDNAに入っているのだろう。この価値観ばかりは西欧の絢爛豪華を旨とする価値観とは全く対極にあるように思える。この儚さという言葉一つを取ってみても英訳するのは難しい。fragility、transience, transitoryなどという言葉が浮かぶがどれも表面的で精神性、美意識には言及しない唯物的な表現で有るように思える。
閑話休題、今日のワイン。有り触れたレジョナルだが、中々素晴らしかった。10余年経っているが元々抽出が弱めだったのだろう。淡いがクランベリーを思わせるチャーミングな酸が有る高いトーンの赤果実。キノコや下草、エピスのようなニュアンスは全く無く、素晴らしく純度が高い。あくまでもフェミナンで他の凡庸なレジョナルのように鈍重さはない。良い意味で線が細く儚さを感じる。少し感動してしまった。
普通CdNのレジョナルと言えば大抵は国道(県道D974)の反対側に有る畑から作るのが殆どだが、そういえば、ここのレジョナルはVougeot、NSG、Chambolle村の畑をブレンドしていた筈。それが故に出自の良さ、バランスの良さが感じられるのだろう。作りも他のキュベと全く同じ(多分新樽は違う)だ。個人的にはVTによってはここのVR村名を凌駕するように思う。
侘び茶の開祖とされる村田珠光によれば「茶の湯を学ぶ上で一番悪い事は慢心、我執の心を持つ事で有る。」との事だ。彼の書を読むとかなりワインにも通じるものがある。裾物にもきちんと向き合い、その儚さを慢心なく尊ぶ事が出来て初めてワインは精神性を持ちワイン道となるように思える。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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