テーマ:今日のワイン(6005)
カテゴリ:Degustation
これを飲んで驚いた。この作り手、アペラシオンの呪縛から解き放されたと。
アペラシオンの呪縛は飲み手だけではなく作り手にも適用される。実際、多くの作り手はテロワールという名前の元でアペラシオンに呪縛を受けているように思える。具体的な名は挙げないが、上はきちんと作れるが下が疎かになったり、その逆に下はまずまずだが上は今ひとつとかいう作り手は多い。レジョナルから一級、特級に至るまできちんと作れる人は中々いないように思うが、この作り手は多分そういう数少ない作り手の一人であった事は間違いない。トップのRocheは元より(滑る時も有ったがそれはそれでご愛敬だ)、Volpatoから引き継いだパスグラまでどのキュベも素晴らしいと感じられた。
2000年代後半からドメーヌと並行して自分の名前でミクロネゴシアンを始め、Montrachetを始め、Clos Vougeotなどトップアペラシオンでワインを作り出していた。ドメーヌの畑だけではなくブルゴーニュの超優良アペラシオンでワインを作ってみたいという夢を追い求めているのだろうと思っていたが、何とドメーヌを出て自分のミクロネゴスに注力することになったと聞いた時には驚いたものだ。仄聞した事情はここには書けないが、長年積もっていたものが突然爆発したのだろう。
さて話は本題のワインに戻るが、最初は還元的で赤の果実味が前面に出て、軽快で溌剌。自然派ワインファンが好きそうな味筋だと感じる。ただ適度な深みも有り、自然派ワインにありがちな雑味や軽薄さは全くない。なによりもピュア。ワイン通が通常知っている典型的なジュブレの片鱗はなく、これをジュブレと呼ぶのに抵抗は有る向きもいるだろうが、30分後時間が経つにつれより深みが増してくるように感じられ、徐々にテロワールの片鱗が見えてくる。下山中の身だから判る素晴らしさだ。同時に飲んだブル白もかなり良かった。
珠玉のGCを擁する家族ドメーヌを捨てて自らの名で裾物で自分の信念に基づいたスタイルでワインを作る。ある意味で彼もまた下山をしているのだろう。
値段も下山に相応しく、下山の伴に最適な1本となるだろう。
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Last updated
2020/10/20 08:35:09 PM
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