2023/08/14(月)09:15
Corton Blanc 2013(J. Gagnerot)
決して悪いワインではない。いや寧ろ良いくらいだ。少し樽のマキアージュがきついがきっちりと出た果実の中に綺麗に溶け込んでいる。その果実はコルシャルのような南方系ではなく良質のCdBの淡い白果実。樽から出たバニラや少しヘーゼルナッツが混じりそのマキアージュが複雑味を出している。エレガント。推測だが畑はLadoixなのだろうか。
と感じたのだがこのワインにどうも違和感を感じる。
それは単にこのワインが「匿名」だからであろう。Louis JadotやFaiveley等の一流ネゴスではやらないがちょっと落ちる(超)大規模ネゴスではサブブランドとして別名で出しているところが多い。勿論シャンパーニュやローヌ、ボルドーでも有るがこの慣行はブルゴーニュの方が頻発しているように思える、しかも一つのネゴスが複数のサブブランドを持っていて非常にややこしい。まあその理由は買収の歴史と複雑な内部組織、節税のためのトリック、マーケティング等なのだろうがそんな事はどうでも良い。結局のところは「匿名」、顔の見えない作り手だ。
このエチケットに書かれた「ネゴス」はNuitsに本拠地を置くそうしたネゴスのサブブランドの更にサブブランド、まあ孫ブランドだ。誰が醸造しているかもわからないしスペックも全くわからない。瓶買いかもしれない。
ブルゴーニュワインの楽しみはバーチャルであっても作り手を知り、作りての思い入れを理解し、歴史ある畑に思いを寄せ、ワインを味わいVTの違いを感じる事に思う。勿論出来の良い作り手やmediocreな作り手もいるし、クリマの優劣、VTの強弱もある。それを全て知った上で違いを愛でる。
JadotやFaiveleyのように自社の名前を刻みある意味コミットしているのならネゴスでも意味があると思うが超がつく大規模ネゴスこういう孫ブランドでサイトも無くネットにも殆ど情報がないワインはやはりIndustriel、心のこもらない工業製品のカテゴリーなのだろう。
そう、匿名のワインにやはり愛着は湧かない。例えそれがどれだけ美味しくても、それは「一夜限り」の関係でしかない。作り手も飲み手に思いを寄せず、飲みても作り手に敬意を払わない。極論するとコンビニで買うワインと同じかもしれない。
ブルゴーニュのワイン、例えネゴスでも最低限の愛着は見せてほしいと思う。それがグランクリュともなれば尚更だ。
まあ、言えない事情があるのかもしれないが。