有機リン中毒について有機リン中毒 毎年有機リン製剤を飲んで自殺を計る人が後を断ちません。 毒性も強く死亡する場合もあります。 では、有機リン中毒はどんなものでしょうか? 1,有機リン中毒ってなんですか? 有機リン剤(organic phosphorous insecticide)は大部分が殺虫剤 として使われております。 殺虫剤としては有効な薬で、世界中で使用されております。 この有機リン剤を間違えて・または自殺目的に・服用すると、 有機リン中毒となります。 2,どんなものに含まれておりますか? 有機リン系殺虫剤は農業・園芸・防疫・家庭などで病害虫駆除 に使われております。 製剤としては次のようなものがあります。 パラチオン・EPN スミチオン・バイジット マラソン 3,有機リンの成分ってどんなものですか? リン酸、ピロリン酸のエステルまたはチオエステルで、 構造式がアセチルコリンと似ております。 そのため、コリンエステラーゼと結合しやすくなります。 4,有機リンは体にどんな作用をしますか? 人(動物も)のからだは神経を通して命令が伝達されておりますが、 その伝達物質としてアセチルコリンが使われております。 そして、このアセチルコリンはコリンエステラーゼによって分解 されます。有機リンはこのアセチルコリンエステラーゼの活性を 阻害する働きがあります。このため、神経の終末にアセチルコリン が溜まってきます。有機リン中毒はこの溜まったアセチルコリン によって引き起こされます。 アセチルコリンが活動する神経終末は副交感神経節後線維終末 と神経筋接合部にあります。 自律神経の一つである副交感神経節後線維終末にある ムスカリン様受容体と神経筋接合部にあるニコチン様受容体と でコリンエステラーゼの活性の低下(消失)が起こります。 *伝達物質アセチルコリンの作用を受ける細胞の表面には受容体 (レセプター)があって、これはアセチルコリンとだけ特異的に反応します。 このアセチルコリン受容体には二種類あって、それぞれムスカリン様 受容体・ニコチン受容体といいます。 このムスカリン受容体のアセチルコリンに対する作用はアトロピンで 遮断されます。また、ニコチン受容体のアセチルコリンに対する作用 はクラーレで遮断されます。 5,有機リンの致死量はどのくらいですか? 製品によって成分が異なりますので、はっきりとはしません。 市販の乳剤原液(50%前後の濃度)大さじ1杯で中毒を起こします。 6,有機リン中毒の症状にはどんなものがありますか? ムスカリン様症状ーー副交感神経優位の症状を示します。 発汗 気道分泌亢進・喘鳴 呼吸困難・肺水腫 流涎 徐脈・血圧低下 縮瞳・視力低下 嘔吐・下痢 ニコチン様作用ーー神経筋接合部が関与 筋線維束攣縮 筋弛緩 筋力低下 呼吸筋麻痺 7,有機リン中毒の検査にはどんなものがありますか? 血清コリンエステラーゼ活性(ChE) 低下 血中有機リン剤濃度 8,有機リン中毒の治療法はどうするのですか? a,胃洗浄 活性炭投与 下剤、グリセリン潅腸 b,呼吸・循環の維持 人工呼吸管理 c,拮抗薬投与 硫酸アトロピン 0.5mg 静注 追加投与も パム(PAM) 500mg 静注 追加投与も 9,有機リン中毒の予防にはどうしますか? 有機リン剤で自殺を計る例がおおくみられますので、その製剤 の取り扱いには細心の注意が必要です。 少なくとも、鍵のかかった場所への保管が必要とされます。 幼少年はもちろん精神的に不安定な人の手の届くところには 置かないようにします。 |