ペットロスとは愛するペットを失う体験のこと。また死別(病死、事故死、安楽死など)や生別(行方不明、やむなく手放すなど)といったペットとの別れを原因として起こる心理的プロセスを総称してペットロスと呼びます。 しかし一般的には、死別によるペットロスでつらい体験をするケースが圧倒的に多いようです。 「ペットと暮らしていれば、誰もが避けることが出来ないつらい体験です。ペットを失えば悲しいのは当然。あなたの1番愛する対象を失った時のことを想像してみてください。」と吉田先生。 通常起こるペットロスによる悲しみや落ち込みは、ごく自然な反応で、それ自体は異常なことであったり、病的な事ではありません。むしろペットロスに対する社会の無理解によって、ペットロス体験者が自分の悲しみを押し殺し、泣いたりしてはいけないなどと感情を抑圧してしまうことが問題なのです。 ペットロスという言葉は、1970年代の半ば頃から欧米の一部の関係者によって使われ始め、1982年には米国の臨床心理士H・A・ナイバーグ博士が、一般の人にも読みやすいガイドブック「ペットロス」(邦訳名 ペットロス・ケア)を出版。そして現在米国では、ペットロスを社会的な問題ととらえ、ケアする体制も確立されています。 では、日本はどうでしょう。ペットロスという言葉がマスコミで紹介されたのは、3~4年前のこと。獣医療の現場では、ペットロス・ケアの必要性は十分分かっていました。しかしこれについてまとまった知識がなかったのと、ケアのためのサポートもほとんどないような状態でした。 そこで、吉田先生が1996年11月にホットライン「ペットロス110番」を開設する事に。先生は、心理臨床の経験からいち早くペットロス問題に着目し、研究を進めていました。動物医療の現場からの相談も多く、誰かがやらなくては!という思いから、自らが立ち上がりました。 たかがペットの死ととらえないで 相談者の9割以上が女性で平均年齢は50歳弱。そのライフスタイルを見ると、夫は仕事で不在が多く、子供は精神的な親離れ、または独立しているという核家族の主婦だといいます。 この調査結果が示すように、核家族化が進むとともに、社会の中で人が感じる孤独感、疎外感や生きがいの喪失などを解消し、生活に充足感を与えてくれる存在であるペットとの暮らしは、今後重要なテーマになってくるでしょう。 またこの相談者の中には、近親者の死に一度も遭遇したことがなく、ペットの死によって初めて死というものを現実に知った、という人もいます。大家族で暮らしていた時代は、死をどう受け止め、対処していくかということを経験の中から学ぶ事ができました。 しかし、死別の悲しみを経験することが非常に少なくなってきている現代社会に生きる私たちは、ペットの死によって人の死、そして自分の死についても考える機会を得ているのです。 「とくに、子供がペットロス体験をすることは、教育的にとても大きな役割を果たしています。ペットは身をもって死や命の尊さ、生きる事の大切さを教えてくれます。だからこそ、たかがペットの死というふうにとらえてほしくないのです」。 |