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スタンフォードの図書館は強い冷房が効いていた。西海岸の南丘陵に広がるキャンパスのなかで、この国のハイテクエリートの生産工場、その若き天才たちの図書館にNETはなく、彼らや彼女たちはその空間を愛していた。
そういった運命的なと感じざるを得ないことが、そのビジネスで訪れて印象に残る図書館にハイスクール時代の彼女が、美しい黒髪をゆらしてホームワークをこなし ている風景がそこにあった。西海岸の友人は名門の淑女たちのなかで、彼女の美しさは群を抜いていた。彼女は三年飛び級して、ここに入学をした。 彼女の研究はmarketmakingの分野だった。彼女の嗜好は天才的な商業主義の市場創生能力だった。彼女の好むものは時代がもとめるものだった。彼女は同世代がpartyに生きがいを感じる時期に、スタイルをつくることに熱心だった。彼女の事業計画はいくつもの企業が採用し、その契約自体は株価にさえ影響を与えた。彼女は15歳にして億万長者になり、自身の市場調査会社をつくり、大手リサーチ会社の業務委託契約を行っていた。 彼女自身、経済に興味はあったが、お金にはなかった。時間の対価としてお金は時間の代わりにはなったが、彼女の精神構造にそれはなかった。お金よりむしろ図書館を好んだし、彼女は億万長者になる必要もなかった、なぜなら彼女の父親がそうだったから。。 やがて彼女はその図書館に膨大な寄付をし、彼女の名前を冠した、棟さえできた。しかし時代はそれを彼女の父の力だと彼女を揶揄した。 そこで彼女と彼は会った。 「あなたになりたい」 彼女はそういって彼の心を掴んだ。 彼女のほしいもので手に入らないものはなかった。しかし彼は特別だった。 仄かな明かりの中で、理恵は明るすぎるといった。祐介がBEDサイドの照明を消すと彼女は激しく彼を責め始めた。 この情事の結末はわかりすぎるほど、祐介が満たされれば、理恵は彼の人生から不要になるリスクを犯してまで、祐介の週末の時間を占有する意味がわからなくなっていた。 理恵は祐介を自分のものにして、美しさを増していた。祐介は漠然とした不安な愛情のなかで、彼女が忘れ去ろうとしている男のことを考えている。 祐介が抱かれている、理恵は彼を必要としないことのそういった情事に体を落とし込むことで、自信を回復して、男に依存しない強さを身に付けていく。 いつでも祐介を抱ける立場にあって、理恵はそれまでの情事の深いなさを消去する、その抱かれたい男に初めて抱かれる時間を、明け方まで、繰り返し責め続けた。 すべてが手遅れだった。必要なものは必要なときにはないものだし、かけがえのないものは失わないとわからない。 愛していることは、執着を生む。執着は、固執し、妬み、恨み、嫉み、を生む。多忙なスケジュール中毒者たちのように10分単位で今日を消化することが何になるのか。私を愛してくれている人々は、私のそういった経済活動に関心があるだけなのに疲れてしまった。 愛していることでさえ経済活動なら、私のこの渇きを静めるのは、無知な女の体だけなのか、私は便宜的にBEDROOMで人間を止めて、獣にもどる。彼女たちの関心は、シャワーのあとのドンペリニオンしかない。 テーブルに置かれたままの280万円のダイヤモンドが愛の証なら、それはそれでいいだろう。ただまごころをこめてつくったクッキーとおなじくらいそれは尊いものだろう。 「そばにいたいだけなんだ、きみの笑顔以外なにもいらない」 「どうかしたの?」 理恵は私に戦いを、戦い続けることを要求する。理恵は人生の勝利者になることを彼に強いていく。彼女は私を支え、育てていく。やがて、私はだれといても、だれろ寝ても、理恵のことを考えている自分に驚愕している。 「私のなかに、理恵がすんでいる」 「お酒がたりないみたいね」 彼女は新しいピンクのコルク栓を器用に抜いた、ラムネのような脆弱なポンという音がして、ふたり笑った。 彼女はサンフランシスコとロサンゼルスを往復しながら、研究を続けていた。大学に残るかどうかを迷っている。私は理恵がンシ海岸にいるから、NYへ拠点を移せないでいた。むろん100万回プロポーズしたが、回答保留のままだった。そういった彼女のキャリアの邪魔をしたくはなかったし、彼女はいわゆる女にしておくには経済界の損失だったので、私は婚期が遅れるままになっていた お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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