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山崎貴之

山崎貴之

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Dec 5, 2005
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カテゴリ:モデル系
朝方の雨が降っていた。美樹は、ベランダの窓を閉めて、空調を入れた。キッチンから飲物をもってきて、ベットにすわり、低い位置からの部屋を眺めた。
 外付けの階段から、雨音が部屋に入り込んでくる。ベランダを吹き込んだ雨が、窓ガラスに水滴をつくっている。雲の流れが速く見えた。週末に聞いた長期予報によると、長引いた雨がちの季節のあげくの冷夏が、始まりかけている。シャワーを、うっとうしく感じる。キッチンのテーブルに、卵料理の皿があった。ネクタイして、卵を焼いている男の、オフィスと同じ後ろ姿を、思い浮かべた。
 彼は出かける前に、上着をきて、寝室のようすを見にきた。眠ったふりでいると、しばらくしていなくなった。
 ながくなるとは、考えていなかった。これまでだと、何度か思った。そんな風に続いていくのは妥協と、思っていた。そして妥協した。ただ変わって行くのを、眺めていたい気がした。理由は分からなかった。
 絨毯にパジャマを脱ぎ捨てた。シャワーをあけて、朝食のしたくをしてから、下着を脱いだ。足でペダルを踏むと、上面の蓋の部分が開くカートンボックスに、その下着を抛りなげて、バスルームに入った。
 後ろ手にドアを閉め、鏡を少し眺めてから、歯ブラシを口にくわえて、バスタブに入った。膝まで水位が上がっている。水に打たれる姿勢のまま、歯を磨いた。時々白い歯磨きが、一瞬、胸に落ちたが、すぐに洗い流されて、覚醒していない視野に、それは残像のように残っていた。
 水をマグカップに受けて、口をすすぎシャワーを止めたあとに、バスタブに沈み込む姿勢で髪を洗った。液体石鹸で体をブラシして、もう一度シャワーを開け、洗い流した。
 バスルームが静かになる。手をのばして、濡れた躰のままバスローブを身に着けた。競技の後の運動選手..のように、タオルを肩に掛けて、それは彼に禁止されていた。二人だけで会った日、美樹がタバコを出したとき、あいにくライターはもっていないんだ、と言った。
 彼は幾つか忠告を美樹に与えていたが、喫煙に関しては、何も言わなかった。彼は習慣に長けているタイプだった。女の部屋に外泊するていどの落度しか、彼にはなかった。
 水を滴らせて歩いた後を消すために空調を強にして、テープレコーダーをまわした。彼好みのオーケストラが流れだした。
 バスローブのまま、レンジから皿を取り出し、コーヒーをカップに空け、皿にトーストを移して、テーブルにアプリコットのジャムとケチャップを並べた。そして禁止されているフォークだけの食事にとりかかった。


 手にしたスプーンから、スラックスに紅茶の滴が落ちた。
 美樹はKに暮らしていた。去年の夏に会った時、転居先の住所が、判りしだい知らせるといって別れた。二ヶ月後に転居したが、忙しさに紛れ連絡もせず、仕事でKを訪れる事もなかった。
 夏祭りが近づいた、七月の終りに、空いてないと思いながら、気紛れにホテルに電話をすると、空室があった。少し迷った後で予約した。美樹は申し出に抗わなかった。抗わない理由が、気になった。それを語れないなら、立ち入らないほうがいいと考えた。応じられない申し出は、待つ気配を匂わせた。
 数日後、旅行の準備を終えて、玄関に小さなトランクを運んだ。そして部屋に引き返すと、デスクにすわり、タバコを吸った。約束は、すべて旅先から断わりを入れるつもりでいた。ソファに横になり、受話器のコードをひっぱって、ビールのグラスを手に、もうしわけをしている、その様子を思い浮かべた。
 出る直前に、旅行を止める気になった。背広をベッドの上に投げ、ネクタイを力任せに引き外しながら、バスタブに湯を注いだ。長い時間、バスタブの中で目を閉じていた。
 深い蒸気の中で、握り締めた受話器に、冷たい滴が、幾つも滲んでいる。遮閉された狭い空間に、若い女の声が、入り込んできた。否応なしに、それは、話すことを強いた。恭子の声は、部屋に招き入れられ、まちがいなく、恭子以外の女を抱いているのを、見届けるのだろう。部屋にいるときは、女を抱いているか、原稿を編んでいるかしかないと、恭子達は考えていた。たしかに、恭子達がこの部屋にいるとき、抱くか、デスクに向かっているかの、いずれかだったけれども。
「旅行にでるところだったんだ」
「誰と」
「一緒に行くのでなく、会いにいくんだ」
「女を連れてあいにいくのでしよう」
「そんなに熱くないよ、昔ね、愛してた女の今のステディが口あんぐりするところが見たくてね。いま愛し合っているより、昔愛し合っていたという、いわゆる、ほら大人達が困った時良くいうだろ、世の中は甘くないって」
「へえ、でも私、いま欲しいの、言って、もし今誰かがいるなら」
「ひとりだよ」
「いま、近くなの、私もシャワー浴びたいな、ね、いいでしょう、旅行に連れていってって言わないから」
「シャワーなら貴之のを借りたら。それとも、塞がってて私にきたのかな」
「ひどいのね、昔は回るのまっていたくせに。だからあなたって、いわずもがなの多いひとなのよ、だからね、不用意なこと話せないのよ」
「いわずもがな」
「そう、自分で良く分かってらっしゃるでしょう。だからつかれるの」
「それはひどい言い方だね」
「そしてあなたは私にステディができればいいと思っている」
「どうして」
「捨てる必要がなくなるからよ」
「これ以上話さないほうがいいね」
「そう」
「ではまた」
 電話を切る。西に向いたバスルームは、夕闇が始まりかけていた。貴之は眠りに奔ばれていた。そのために疲労を必要とした。眠りが必要な夜更けには、女を抱いた。ようやく夜明けまでに、浅い眠りに入る。
 それでも覚醒した暗がりで、隣に眠り続ける女を、眠ったまま、神経が鎮まるまで求めた。女を疲れさせ恭子より浅い眠りを貪った。厚手のカーテンの向こうの気配の、遠く走る車の音の刺す感じに抗って、薄い意識を眠り続けようと試みる。不調をこの眠りのせいにできた。
 台所に行き、冷えたカン詰めのトマトジュースに、穴をあける時、エアの抜ける音を聞く。グラスに注ぎ、赤い握手の抱丁で、レモンを輪切る。グラスに斜めに入れたレモンはトマトに紛れて見えなくなる。少し迷ってから、流し台の下の扉を開け、ウオッカをだしてそそぎ、氷の音をたてながら、寝室に戻る。
 女は、規則的な吐息を、繰り返している。
 深夜に、外に出ると、アスファルトがぬれて、信号の色を歩道に映いている。
窓辺のベットで、不意に男が起き、窓をあけて言った。
「雨だ」
 むしあつい外気がはいりこんでくる。
「すこしは涼しくなるかな」
「出掛けない人がどうして天気の心配するの」
話が妙な方向にむかうのは避けたいと思った。

 強く降り出した雨音で、眠りが浅くなったころ、夢を見た。貴之が久しぶりに、実家に突然帰ると、既に夜になっていた。父母は、意外な顔の喜んだ様子だった。
 父が応接室のドアを指で示して、貴之はその部屋に入った。洋室特有のひんやりとした空気を感じた。庭に面した壁に沿って、ソファーがいくつか並べてある、その奥まったところに、欝向いて美樹は浅く座っていた。人の気配にふと顔を上げ、貴之を見いだして、不思議そうな表情をした。ゆっくりと美樹の方に歩み寄った。
 貴之に向かって、両手を支しのべて、強く抱いた。
「僕の帰るのを、君は知っていたの」
「いいえ」 
「偶然なの」
「はい、お母様に、会いに来たのです」
「あの駐車場の車は、君の」
「そうです」
「母と何を話したのかい」
「はい、あなたが、」
「ぼくが」
 時計は四時だった。夜明け前の、まだ暗いベランダの籐椅子に、外を眺めた。暗がりは一瞬で目を離すと、朝になってしまう。こらすようにして、タバコを吸った。小さなテーブルに乗せた灰皿に、麻美の吸殻が、一本長い影を引いていた。貴之がシャワーを浴びている時間、麻美はここに来て、タバコを吸って風景を見ていたのだろう。明けかけた白い空気のなかで、フィルターの口紅の色が、彩やかさを増しはじめた。






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Last updated  Dec 5, 2005 10:19:54 AM
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losartan cozaar@ Hi:) Test, just a test q1 I need to say, as very much as I enjoy…
山崎貴之@ Re[1]:22万アクセス(05/26) 姫。さん >おめでとうございます。 > …
姫。@ Re:22万アクセス(05/26) おめでとうございます。 もっとたくさ…
山崎貴之@ Re:まもなく218888だね(04/23) いつもありがとう 218891 2008-04-27…
山崎貴之@ Re:検索にでてこない新検索サービス会社?(03/31) いらっしゃいませ  おまちしておりまし…
山崎貴之@ Re[1]:バニラはお好き(04/17) 姫。さん >「いろこいかるた」の ま …
姫。@ Re:バニラはお好き(04/17) 「いろこいかるた」の ま 待ちくたび…
姫。@ Re:バニラはお好き(04/17) 今夜は あいしてるって いってあげ…
山崎貴之@ Re[1]:雑談(04/10) 午後に雨はあがりました。
夏川結女花。@ Re:雑談(04/10) 雨が降っています。  

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