カテゴリ:恋愛都市
すこしうつむき加減で、彼はアタッシュケースから、ワインとPCを取り出して、そのホテルの回線につないで、かたかたとひとしきり、暗くなりかけた部屋で、なにかしてる。
わたしはワインクーラーのそばにBEDでその眺めを眺めている。 そして待ちぼうけ、放置された恋心が、去年の夏のまま、静まることをしらない。 それでもわたしは疲れ果てて、BEDを動くこともできないでいた。 「夕食どうしようか」 「そのへんに出かける?」 わたしをさらして連れ歩きたいのだ。その午後の憂鬱を靡かせながら、わたしは彼のものとして、彼の空気にさらされていくのだ。羞恥というものの正体は、隠微な午後の時間の、くすぶったままの気配を、置き去りにしたままで。 「このまま、ここにいよう」 「そうね、時間はたっぷりあるわ」 陳腐な言葉であるほど、饒舌に濃密な関係を物語るかもしれない。 ふたりは食事することよりも、その芳醇なワインの虜になることを選んだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 6, 2006 06:46:43 PM
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