カテゴリ:だから
寝室をぬけだすと、僕はバスルームにおりていった。 ひんやりとした空気の中で、浴槽の湯は冷たくなっていた。 だれも入浴した気配のない、その空間の湿度の思いのほか低いのが意外な感じがした。
湯をあつくしてみようかとしばらく考えたが、浴槽の蓋を閉じると、チンチラの眠っている廊下をぬけて キッチンにいった。
壁に備え付けの食器棚の収納から、白いジューサーをだすと、六人掛けのテーブルに置いた。 テーブルの上のオレンジを輪切りにして 機械的にその容器に放り込み FLASHとかいていあるボタンを押した。
明けたままのカーテンの向こうの庭の風景のガラスの その内側にジューサーを操作する僕が映っている。 十分すぎる量のそのジュースを切り子のグラスにそそいで、唇をつけて、ため息をついてみた。 ミキサーの音が止まると、テーブルの下の室内犬の眠る寝息と、微かな時計の音だけが 深夜のキッチンの気配のすべてだった。
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