恋に落ちた日
無邪気な冷たい微笑み。それが恋に落ちた理由。 ふたりで日本蕎麦を食べて、川原町のケンタでチキンを食べて、31アイスを食べながら、鴨川の夜を歩いた。 僕たちはラブを見つめて、大きな柳の下で、キスをした。 きみは肩が凝るといって、僕にそのざっくり割れたイブニングの背中を見せたね。 洛西のバス停できみを見かけた日、それは雨の日で、霧のような纏わりつく雨が、秋の気配のそのバス停で、きみに惚れた。僕の頬は高潮しているのがわかったし、薄いピンクのコートのきみは、そういった僕の視線に、恋の予感を感じたはずだ。 桂駅で乗り換えても、僕たちは同じ方向へ、なにかに導かれているように、ふたり阪急電車の、窓際に立って、見詰め合っていたね。だれかがそれをみていたら、恋人に見えただろう。 僕たちはそういった時間の、雨上がりの河原町についたころには、夜になっていた。 「おそばでもたべない」 僕は改札の渋滞の、雑踏の中で、初めて姫に声をかけた。 そう彼女は絶対的な、ひれ伏すべき”姫”という存在にすでになっていた。僕は、彼女の悲しげな美少女の風情は、この世のものとは思えない麗わしい、そういう、ただならぬものを感じさせた。 彼女はラフマニノフとこうだくみちゃんが好きで、ブラスバンドでなぜかトランペットを担当していた、18歳をいう制約の中で、背伸びをせず、美少女の位置のまま、僕の姫になった。