カテゴリ:ヒライシュンタ
キィ・・
ジョンは木製の扉を開けた。 羽織っていたベージュのコートをそそくさと脱ぎ、黒と濃紺のストライプのマフラーを取った。 『いらっしゃいませ』 ヒゲをたくわえたマスターの声が聞こえる。真っ白なシャツが彼の誠実さを表しているようだ。 ジョン『今日は冷えるねマスター。この時期になるとリヴァプールを逃げ出したくなるよ。』 茶色いレンガで敷き詰められた細長い店内は、漁師や紳士で入り乱れて賑わっている。 ジョンは店の奥に進み、L字型のカウンターの前に進んだ。 カウンターの1番隅、ジョンがいつも座っている席に、黒いシャツを着た男が座っていた。 ジョン『ちっ、先客か・・』 ジョンは仕方がないので、黒いシャツの男を一つはさんだ席に腰を降ろした。 ジョン『マスター、ビールを頼むよ。あとマグロのカルパッチョもね。』 マスター『かしこまりました』 運ばれてきたビールを一口飲み、大きく溜め息をついた。ほんのりとビールの香りが鼻をつき、少し寂しいキモチになった。 黒いシャツの男は一人ぽつねんと、カクテルを口に運んでいる。よく見ると、垂れ目でサラリとした栗毛が魅力的な男だった。 ジョン『やぁ、君ここは初めてかい?』 黒いシャツの男は、カクテルを口に運ぶ手前でジョンのほうを向いた。 黒いシャツの男『あぁ、今日越して来たんだ。いい店だね。』 ジョン『そうか、僕はジョン。ジョン・レオン。ここの常連さ。』 黒いシャツの男『はじめましてジョン。僕はポール・マッカートナー。』 ジョン『乾杯ポール。会えて嬉しいよ』 二人は、ホカホカに蒸したソーセージを食べながら話をした。するとポールの足元に黒い長細いケースを見つけた。 ジョン『君ギターやるのかい?』 ポール『あ、あぁこれかい?ほんのたしなむ程度さ。』 ジョン『僕もギターをやるんだ。ほら。』 そう言って、左手の指をポールに見せた。指先が潰れて硬くなっている。 ポール『ははっそうなのか!いやぁ奇遇だな。』 店内にリトル・リチャードが鳴り響く。 ジョンはカウンターを叩き両手でリズムをとった。 ジョン『ポール、今夜どうだい?』 ポール『いいね。チャックベリーでもやろうか。』 こんな会話の似合う、飲み屋に昨日真也と飲みに行った。 (注:ここで出てくるジョンとポールはビートルズではありません) シュンタより お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.11.29 20:28:13
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