「悪人」本も読んで映画も観ました
最初に本を読みました。全く、予備知識なく映画や本を楽しみたい方は読まないでください!!清水祐一に殺されてしまう石橋佳乃は実家が老舗旅館の増尾圭吾に好意をよせていた。出会い系にハマっていて、祐一にも出会い系で知り合った。会社の仲が良い2人の同僚には、増尾と付き合っているとウソをつき、このウソと偶然が重なって、増尾に殺人容疑がかけられ増尾は逃亡者となる。そして、佳乃を殺害した後、祐一は、同じく出会い系で紳士服の店員をしている馬込光代と知り合い、一緒に逃避行する。この本を読んで思ったことは、「若いってバカ」いつか銀座の美容師が「若いってバカだなぁと若い子の行動を見ていると思っちゃうのよねー」と言っていたのですが、それをふと思い出しました。「若いってバカ」というのは、「最近の若い子は・・・」ということではなく、自分も若い時、そういうことをしてバカだったなぁという自戒の意味がこもっている。多分、あの美容師さんも、そうだったのだろう。佳乃は、出会い系で売春まがいのことをして、同僚には見栄をはって、好きな男を目の前にすると舞い上がって、ウザイくらいの態度をとる。売春は、いきすぎだとしても、若い女なら友達に見栄をはったり彼氏がいない寂しさに負けて、好きでもない男と遊んだり多少なりともして、同じような行動をとっているのではないだろうか?もちろん、そんなことをしない、強くて若い女性もいると思うけど・・・。私が学生の頃、周りにはお金欲しさに、水商売や風俗でバイトしている子もたくさんいた。でも、そんな子も、今は結婚して子供を産んで、若いころが信じられないくらい、普通の主婦で、お母さんになっていて。挙句の果てに、若い女性が殺されて、水商売などをしていたことがニュースで流れると、「そんな商売しているから事件に巻き込まれるのよ」と被害者の批判までする。自分のことを棚にあげてとは思うけど、あまりに平凡な日常を長いこと送っていると、若い頃のことなんて、すっかり忘れちゃっているのかもしれない!?私自身も、子供を産む前の私の行動や言動は別人のことのようだし・・・。佳乃は、祐一に殺されてしまったから、出会い系などにハマっていたことが世間に知られてしまうが、生きていれば、そんなことが明るみに出ることもなく普通に結婚して、子供を産んで、若いころのことを忘れて平凡に暮らしていたかもしれないと思うと安易な言葉だけど、「運が悪い」の一言につきる。そして、祐一と一緒に逃避行を繰り広げる光代。30歳過ぎで、独身、恋人なし。お店にくる男性は、みんな既婚者。光代が住んでいる佐賀は、みんな結婚が早いみたいで、30歳過ぎの独身女性は、かなり寂しい思いをするのだろう。あまりの孤独から、まじめに出会い系に希望を抱き、知り合って、好意をもった祐一が殺人者。でも、殺人者だと知ったころには、すでに祐一に執着し自分の幸せは祐一だけだと思い込んでいた光代は離れたくないため、バカな真似をしてしまう。若い時は、孤独が一番の敵。この孤独を埋めるため、女は一人の男にすがったり、不特定多数の男性と関係をもったりしてしまう。男と一緒にいないと、幸せを感じない。これから先が不安で仕方なくなる。映画は、祐一と光代の逃避行がメイン。佳乃も増尾も、その他の登場人物の情報はほとんどない。そのでも、一瞬で人物の背景を表現している増尾役の岡田将生や佳乃役の満島ひかりの演技力はすばらしいし、佳乃の父親役の柄本明や祐一の祖母役の樹木希林も最高だった。祐一役の妻夫木聡は、本を読んでいて思い描いていた祐一像そのものだったし、光代役の深津絵里は奥に秘めた女の情念のようなものを、見事に表現していたと思う。本では、佳乃と同僚2人の関係や、増尾の詳しい人物像、祐一の過去など一人ひとりの人物が、詳しく書かれていて、祐一は、祐一に関係した人の言葉のみで人物が描かれていて、彼自身の感情は全く描かれていない。本を読んでから映画をみたので、予備知識があって見ることができ、それはそれで楽しかったが、逆に、映画をみた後で、もっとこの人のことが知りたいと思ったら、本を読むというのも、おもしろいかもしれないと思った。本と映画では、ストーリーが異なる部分も多いし、映画では描かれていない人物も、本では登場する。どちらも、おもしろいので、読んでいない人、観ていない人はぜひ!!おすすめです。悪人(上)悪人(下)