朝日新聞 真央らしく
真央らしく 6月 ロシアで2週間・バレエ教師・音響スタッフも プログラム作り着々と ロシアに着いた夜、浅田真央はタチアナ・タラソワ・コーチから約10種類の曲をもらった。 5月上旬、モスクワ郊外のノボゴルスク・トレーニングセンターでの2週間。今季のプログラム作りが始まった。 曲はショートプログラム(SP)、フリー、エキシビションの候補だった。雄大なクラシックもあれば、アップテンポな曲もあった。 その夜、一緒に聴いたコーチから「(どの曲がいいのか)1日考えてみなさい」と言われた。でも、「自分ではなかなか決めれなかった。」 翌日、コーチが選んだフリーの候補曲で「自由に滑りなさい」と指示された。 ジャンプは跳ばず、ステップを踏み、手の振りをつけ、自分なりに表現した。リンクサイドからバレエ教師や音響スタッフも見守る。 「先生は『こういう動きはできる?』とか確認しながら。実際に滑って、自分に合うものを一緒に考えていきました」。 音楽を変えたり、戻したり、曲を絞り込むのに3日間を費やした。 フリーの約4分間にジャンプ、スピン、ステップなどの要素をちりばめる。 構成の仕方は振付師によって様々だ。タチアナ・コーチは今回、ステップから作り始めた。 どんな足の動き、上体の振りを組み合わせるのか、浅田が滑った感触を生かしながら作る。 「それから最初のポーズ作りがスタートする。あとは、曲の流れ通りに決めていきました」 それでも「フリーはだいぶできましたが、SPとエキシビションは中途半端に終わってしまいました」。 続きを仕上げるため、6月後半にもう一度モスクワへ行く。「できあがるのが楽しみです」 採点は技の難易度に応じてレベル、得点が変わる。 「エキシビションとかは自分でも付け加えてみたりするんですけど、試合用のプログラムは自分ではできないですね。 試合はルールがすごくたくさんあるから、自分ではなかなかできないんです」。専門家が演技構成を練り上げなければ高得点は狙えない。 かつて浅田の振り付けをしたグランプリ東海クラブ(名古屋)の樋口美穂子コーチは「毎年ルールを勉強しながらのプログラム作り。選手の個性を生かす必要もある」。 振付師の宮本賢二さんは「スピンなら何秒、ジャンプなら何秒など時間を頭に入れながらの作業。限られた要素の中で意外性も出していかないといけない」と話す。 世界での活躍を意識し始めてから、浅田は海外の著名な振付師にプログラム作りを依頼することが多くなった。 ただ、コーチと振付師が分業制だと大変なこともある。シーズン中、選手が勝手にプログラムを変更するのを好まない振付師もいる。 「一時期はロシアに行ったり、カナダに行ったり、アメリカに行ったりと、多い時は3つの国に行かないといけなかった」 だから、タラソワ・コーチが振付師を兼ねているメリットは大きい。「普段の練習から一緒に手直しができますから。 プログラムは試合をこなしていくたびにレベルアップしていくものだと思う」。完成の最終目標は、来年2月の五輪だ。(坂上武司)