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インタビュー Vo.5

日本の映画業界を代表する方々をゲストに迎え、トークイベントや貴重な作品を上映する毎年恒例のオールナイト企画、「映画人の視点」。この特集は全3夜で行われます。今回の対談企画は、「映画人の視点」の第3夜「映画の出来は弾丸の数と火薬の量」にゲストとして登壇される、脚本家の柏原寛司さんです。柏原さんには、脚本家になったきっかけや、「過去から未来へ」という本年度のテーマのように、今の若い世代について、新旧の映画についてお話を伺ってきました




斉藤有希、下野篤史(TIFF学生応援団) × 柏原寛司さん(脚本家 / 映画人の視点ゲスト)

映画人の視点

―柏原さんがこの業界に入ったきっかけを教えてください。

柏原寛司さん(以下:柏原さん):映画監督になりたかったんです。(地元の)人形町にいくつも映画館があったので、そこで子供の頃からよく映画を見ていました。それと、中学の頃に西部劇のリバイバルブームが来て、ジョン・フォード監督やジョン・ウェインの作品は全部見ました。そこから、西部劇マニアになったんです。昔はテレビでも西部劇をやっていたので『ローハイド』や『ガンスモーク』も見てました。ジョン・ウェインが監督した『アラモ』は、映画館で36回見ました(笑)。12回目くらいからセリフを全部覚えてしまったので、字幕を見なくてもセリフがわかる。字幕を読まなくなると、そのうち映画の細かい部分に目がいくようになった。場面は同じでもカットが変わると空の色が違ったり、あぁ違う日に撮影したんだなとか。そこから映画がどうやって作られていくかにも興味を持ち始めました。
ずっと洋画を見ていましたね。でも、友達の親父さん、木場の土建屋だったんですけど、『用心棒』、『椿三十郎』を薦められた。これが衝撃的だった。それから、三船敏郎主演の黒澤映画を見るようになって三船さんのファンになりました。
映画監督になりたかったので、日大芸術学部を受験しようと思ったんですが、落ちてしまった(笑)。で、予備校に通い始めたんだけど、シナリオの本を読んでいたらその中で黒澤明監督が、「監督になるにはシナリオが書けなきゃいけない」って。「じゃあ」ってことで、シナリオ研究所に通い始めたんです。親には内緒で(笑)。親には予備校に通うって、授業料をもらったんですが、そのお金でまず(車の)免許取って、残りをシナリオ研究所に払った(笑)。

―シナリオ研究所時代はどんな日々を送っていましたか?

柏原さん:監督のゼミがあって、そこで出会った吉田憲二さんにくっついて日活に出入りしたり。研究所は半年で終わってしまうので、その後は研究所で基礎を教えてくださった新井一さんの家に通って(シナリオの)勉強してました。そのうち新井さんが、シナリオセンターというのを新しく作るということでそこの第1期のメンバーになりました。でも、監督になりたかったから、まずは助監督にならないといけない。助監督になるには大卒じゃないと雇ってもらえない。で、結局三浪で日芸に入りました。大学2年の時に「クレクレタコラ」という5分もののテレビ番組、これ子供向けなんだけど、凶悪な話で(笑)、このシナリオを書くメンバーになって、プロとして活動をスタートしました。なぜかこの番組の評判がよかったんです(笑)。その後は東宝でアルバイトをしながら、「傷だらけの天使」と「俺たちの勲章」のシナリオを大学4年の時に書いてましたね。大学4年のときに、助監督になる試験を受けることになったんですが、試験当日に財布を忘れたんです(笑)。で、試験会場に行けなくて、そのまま脚本家になりました(笑)

映画人の視点


―脚本はどれくらいの時間で書かれるんですか?

柏原さん:昔は早かったですよ。1時間ものだったら2日、2時間ものは、3~4日で書いてました。今だったら1時間ものは、半年、映画だったら1年かな(笑)。

―柏原さんの書かれた脚本の登場人物はどうやって決めるんですか?

柏原さん:アメリカの西部劇、アクションものにかなり影響を受けていますよ。西部劇も刑事モノも基本バディ(2人1組)の形式がほとんどなので、まずはそういうところから入り、西部劇によくある、あぶない時ほどジョークを言ったりする、なんていうところはものすごく影響を受けました。自分で書く刑事モノの特徴としては、まず「刑事がやらないようなこと」をやる(笑)。あと激しい銃撃戦(笑)。弾の重さより、弾の量だね(笑)。

―映画の魅力はどこにあると思いますか?

柏原さん:映画は作品としてだけではなくて、細かい部分にもすごく魅力がある。俳優さんのしぐさやファッションとか、まさににそう。スティーブ・マックイーンの銃の使い方には興奮したね(笑)『ゲッタウェイ』を見た後、皆モデルガンのショットガンを買ってました(笑)。『大脱走』の時はバイク(笑)。ファッションで見ても、『大脱走』の時はA2(フライトジャケット)、『ハンター』の時は、MA1がものすごく流行った。『ブリット』を見たら、黒のジャケットに黒のタートルネックだよね。みんな買ってたよ。みんなマックイーン(笑)。洋服を買う時に、店員さんに「あの作品で着てた服をください。」っていって困らせてました(笑)。そのくらい、映画のファッションに影響を受けていた。俳優さんは、ポール・ニューマンに影響を受けている人が多いですね。こういうのって、なかなか今はないよね。今の人たちも、もっといろんな角度から単純に映画を楽しめばいいんじゃないかな。一人でもすごいスターが出れば変わるかもしれないね。

映画人の視点

―今年の映画人の視点で見て欲しいところは?

柏原さん:上映する作品『ゲッタウェイ』、『ロイ・ビーン』の2本は男の夢のような話だから、いい気持になれますよね(笑)。『ロイ・ビーン』のように、ずっと憧れの女性のポスターを貼ってるエピソードとか、男なら共感できると思う。今で言うなら、携帯の待ち受け画面とかが、そうだよね。僕の携帯の待ち受けは、ビヨンセだけど(笑)。ん~、作品のキャラクターを楽しんでもらえればいいと思います。

―若い世代の人に向けて


柏原さん:だれか好きな人を見つけて欲しい。監督でも俳優でもいいから、好きな人を見つけて欲しい。誰かに影響を受けることは非常に大事。いま活躍している監督たちもみんなそうだと思う。たとえ真似になってもいいんですよ。自分なりに、その好きな監督とかに敬意を表して作ったって思えばいいと思う。今の監督さんたちもそういった道を通ってきていると思いますよ。




柏原さんはとても気さくな方で、笑いの絶えない対談となりました。子供の頃から今までずっと変わらない映画対する熱い想いなどは、今の私たちのような若い世代の人たちに、何か大事なことを思い出させてくれるようでした。あっという間で、もっと柏原さんのお話を聞きたかったですが、この続きは10月29日(土)の映画人の視点で聞けたらと思います。


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