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2020/09/05(土)05:25

残念な警察官

ノンフィクション(59)

​ 残念な警察官〜内部の視点で読み解く組織の失敗学〜【電子書籍】[ 古野まほろ ]​  著者は元警察キャリアで、警察大学校で警察不祥事について授業を持ったことがあるという。  今を去ること20年前警察の不祥事が相次ぎ、一連の警察改革が始まった。  ところが今の警察官の中にはこの不祥事のオンパレードを知らない者が多くなったのだという。  著者はそこをまず嘆いて見せていましたな。  警察キャリアとは言え現場も少しはかじっているので警察のことをしれたければまず本書を読んでほしいなと警察小説や推理小説の書き手にまずもって申し上げたい。  警察の基本的なことも詳細に記してある。  それ以上に、桶川事件、神奈川事件、新潟雪見酒事件、石橋事件という警察4大不祥事について、 ​ 私は、この『腐ったミカン型』と『腐った果樹園型』の識別は、とても重要だと考えます。  市民として言えば、『腐ったミカン』によるものは、仕方がない。  それが果樹園の主によって、適切に認知され処理されるのなら――被害者に対する慚愧の念やお詫びを別とすれば――ミカン栽培上、前提としなければならないリスクです(果樹園の主がそんなことを公言できないのは、言うまでもありませんが)。​として、警察官個人の資質か(腐ったミカン)、警察組織の問題か(腐った果樹園)の観点から詳述する。  特に桶川事件は警察内部で忘れようとしても忘れられない不祥事であり、本件捜査の責任者たる上尾警察署刑事第二課長は、 ​ 刑事第二課長の職に就くまで、主として鑑識業務に従事してきた。  捜査に従事した経験がなく、捜査の実務がよくわかっていない。  よって、自らが捜査を担当するのを回避し、全て部下に担当させた。​上、その下に牢名主様的な大ベテランの知能犯捜査一途の警部補がおり、彼が本件に関して何ら積極的な行動を起こさなかったことが後に明らかになっている。  そして実働の部下巡査長との3人が懲戒免職処分で警察の世界を去っているのだ。  警察内部では本件はまさに喉に刺さった魚の小骨でしょうな。  本当に重要な案件で、警部、警部補はおろか実働の巡査長まで懲戒免職処分ですからね。  本件が著者がいう腐ったミカンなのか腐った果樹園なのかについては本書では腐った果樹園論を主張しているけれど、それ以上にそれぞれが腐った果実であったという点も否めないと著者の書きっぷりを読んでいると思えてくる。  本書は現代警察を考察する上で欠かせない好著である。

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