今日、何読んだ？

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スタートライン【電子書籍】[ 喜多川泰 ]​

　人間の頭も上書きされる。
　そのことには薄々気づいていた。
　今回本作を読みさらに昨日書いた、糸、を立て続けに読んだものだから完全にこの2つの小説が私の記憶の中で重なってしまった。
　私は本作を読んだ時点でとても面白い小説と思ったし、糸、を読み始めた段階ではあまりのもたもた感に読むのをやめようかと思ったほどだった。
　ところがそうではなかった。
　あとのほうが、つまり、糸、の方が圧倒的に泣かされてしまって、こちらつまり、スタートライン、のいいところも、糸、の記憶に入り込んだりして、そして間違いなく上書きされたのだった。
　だから立花隆（敬称略）はいうのだ。
　知的生活に小説は必要ないと。
　たしかにそう思うけれども、本作だって捨てたものじゃない。
　恋愛小説としての筋道が立っている。
　そこが面白いのだ。
　それにしても小説家のストーリーテリングのすごいことよ。
　もしそれが経験譚ならすごい経験をしているということになろうが、多分空想でしょう、それがすごい。　
　突然隣に並んだ転校生に恋をし告白してもその返事の場所に彼女は現れず、そこでうじうじせず新たな生活に向かう主人公には共感できる。
　それができないのが青春というものではなかろうか。
　うじうじしているうちに老年になるのだ人は。