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2021.05.01
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カテゴリ:小説

夢のゆくえ [ 磯貝治良 ]

 本作は良という少年が主人公の中編が1編と短編が数編載っているものだ。
 本作で特徴的なのは在日に関する記述だ。
 ヨシダ・カツトシ君というのは、かれの本名ではなかった。
 本名は、崔浩吉くんであった。
 日本がとなりの国の朝鮮を侵略し、一九一〇年から一九四五年八月十五日まで三十六年ものながいあいだ植民地統治をしたとき、朝鮮人も天皇の赤子として日本人と一視同仁だなどとすごく勝手なことをいいだし、一九三九年に「創氏改名令」というものを出した。
 朝鮮人の姓名を日本ふうにかえろというわけだ。
 そこで朝鮮人のおおくは、自分が朝鮮民族であることをすこしでも主張しようと、抵抗のこころをこめて李本とか、金山とか、崔川とか、本名をのこして改姓した。
 ところがヨシダ・カツトシ君の父親はそれができなかった。
 炭坑ではたらかされていた父親は、吉田という日本人監督の姓をつけるよう、ほかの同じ班の同胞といっしょに強制されたからである。
 そこで当時三歳だったチェ・ホギル君もヨシダ・カツトシと改名され、やがて日本が戦争に負けてからも、その名まえで呼ばれることになってしまった。
 ​というようなことで作者は在日の方と深く関わりがあったのではなかろうか。
 その中にヨシダ・カツトシ君という友達もいたということだろう。
 韓国朝鮮に関しては書けば書くほどヘイトと言われそうなのでこの辺にしておくけれども、ただ作者が本書に書いているような一方的な日本の侵略ではなかったということだけは一言添えておきたい。
 ちょうど大東亜戦争の辺りの思い出を作者は書いたのだろうか。
 諸君先生と言う話はとても面白かった。
「そのばあいは、すこし走りなさい」諸君先生は、表情ひとつかえず、そう答えた。
 良は中学校にはいると、小学校のころから大好きで三社さんの境内できたえた腕をふるうべく、野球部に入部したが、おどろいたことに、野球部の顧問は諸君先生だった。
 かれがおどろいたのは、諸君先生が小柄で動作も「急がずあわてず」の信念どおり、いたって緩慢であり、野球の指導などできそうにみえなかったからだけでなく、じっさいに野球をしたこともなく、ルールのルの字も知ってはいなかったからだ。
 諸君先生は、生徒たちが練習中にそらしたり打ちそこねたボールがすぐ足もとにころがってきても、かたくなに拾おうとさえしなかった。
 ただし、たいへん熱心な顧問であり、放課後の練習には一日として欠かさず顔をだして、バック・ネットのまえに腕ぐみして立ち、生徒のうごきを真剣な眼で追っていた。
 そして、打撃練習中の部員がからぶりなどすると、「ボールがあたるように、考えてふりなさい」と、たったひとこと、だが適切な忠告をした。
​ というようなのが諸君先生だ
 野球なんか何も知らないのに腕を組んで、ボールが当たるように考えて振りなさい、というのはけだし名言だ。
 とてもいい。
 結局この諸君先生は豆腐屋さんになってしまうのだけれども、そういう人生があってもよかろう。
 いやそういう人生だけだったのかも知れない、昔は。
 思い起こせば、私の父も様々な仕事をして私を育ててくれた。
 私のように一つの仕事を終えて満足感、充足感があるようなそんな気持ちにさせてくれたのは、実は父が様々な転職を重ねた結果だということに気づいた。
 人生というのは、満足するためには満足者の支えになる人々の努力がなければ成り立たないものなんだなと今更ながら考えさせられたことである。





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最終更新日  2021.05.01 05:00:07
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