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2023/01/26(木)05:00

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―

ノンフィクション(59)

消された一家ー北九州・連続監禁殺人事件ー(新潮文庫)【電子書籍】[ 豊田正義 ]  さて私は自分の不明を恥じなければならない。 それにしてもなんということなんだ,こんな重大な事件を見逃していたなんて…。 どうも本件については,どうやら報道規制が敷かれていたらしい。 だとすると,そっちの方が問題じゃないのか。 本書を読めば本件がいかに残虐な事件であったかということがわかる。 それこそ史上稀に見る猟奇事件である。 なのになぜこの事件は全国的に有名にならなかったのか。 本件以後も本件以前も本件のようなあるいは本件に似た猟奇的な事件はあって,それについてはきちんと報道がなされていたのではないのか。 または多くの著作家が世に出していたのではないのか。 だから私たちはそのような実話があってそして事実は小説より奇なりなどと言っているのだ。 しかし本件については正直に申し上げて,私は全くあずかり知らぬ事件だったのだ。 何という不覚か。 また何と言う悔しさか。 次に本件をこのような形で世に出した豊田正義という人を思うに,実に立派な著述であったと言わせてもらいたい。  著者に感謝である。 本件をきちんと読み込んでいる。 本件の問題点を既に DV という立場からも読み解いている。  いっぽうマインドコントロールという問題点も本書では文章によって明らかになっている。 主犯で今現在死刑囚である松永太という人間の言い分もきちんと載せている。 それによって実にフェアなノンフィクションになった。 というのは両方の言い分がきちんとイーブンになって初めてフェアというものであり,そもそも裁判そのものが反証,反証の繰り返しということを考えれば,著者が松永太あるいは緒方純子どちらにもくみすることなく公平に記事を書いた分,吾々読み手は逆にきちんと判断することができたのである。 ようするにこの種の事件の真相を読み手に判断させるためには本書著者のような公平な書き方が必要だということである。 いわば書物法廷ですな。 とりわけ最終盤における緒方純子からの手紙は,本書が本件の真相を明らかにしたことに間違いないということが分かる,取材者である著者の力量の証だったということになろう。 以上のようにノンフィクションとしては異例の報道規制の敷かれた事案についてこれほど明らかにしてくれて私はそれこそ死ぬ前にこの本を読めたことに感謝する。 なぜなら私はミステリーリーダーだからだ。 たしかに本件は知られていない事件だった。 他方ではこのような残虐な事件について様々報道されているにも関わらずである。 願わくばなぜ本件が報道規制され,豊田正義という著者しか明らかにできなかったのかということを明らかにしてもらいたい。 報道規制の理由があまりにも残虐だからでは納得できない。(11/4記)

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