多様性の科学
多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織【電子書籍】[ マシュー・サイド ] 多様性とはようするに, たんに集合知を高める要素というばかりでなく,独自の進化を導く要素にもなる。 ヘンリックの言葉を借りれば,「人類に成功をもたらすカギ」なのだ。というものだ。 人類の繁栄は多様性があったからで, ただ我々の祖先には,重要な,しかし見落とされがちな強みがあった。 社会性があった(社交的だった)のだ。 人類の祖先はほかの種より大きな,より密につながり合った集団で生活していた。 その違いが劇的な繁栄へとつながった。 なぜか? 密な社会的集団があれば,その中で学習が進む。 たとえ一人ひとりは食物を探したり道具を作ったりといった初歩的な知識しかなくて も,密な集団に属していれば仲間から学べる。 すでに頭のいい者でさえ,まわりから学ぶことは多い。 1人なら一生かけてやっと学べるような知恵を集団から得られる。ということで,ネアンデルタール人になくて人類にあったのが多様性ということになる。 多様性と平均値は相反する。 つまり, 真の問題は、平均値にすべてピタリと当てはまるパイロットなど存在しないのに,平均値を採用した結果,一人一人違う多様なパイロットのサイズにコクピットが合わず事故が続発したことがあった。 平均値の危うさは,GI値の分野にも及ぶ。 つまり, 人間の多様性という重要な要素を無視している。 エランは言う。 いわゆる「GI値」を見てみるとよくわかると思います。 これは血糖値の上がりやすさを食品ごとに表す数値です。 食品ごとに計測した,被験者グループの血糖値の反応をもとに,1~100の間で低GI から高GIまでランク付けされます。らしい。 極端に言えばたとえば私が今採用している食べ順は,効果的な人もいるだろうしそうでない人もいるだろうということらしいのだ。 いずれにしろ平均値が危うい。 本書では上司に対する進言の重要性も論じられていた。 いわく, 米国運輸安全委員会によれば,30件以上の墜落事故が,副操縦士ら乗組員が機長に進言で きずにいたことに起因しているという。 医療現場における26件の研究を広範に分析したあるデータでも,上司に進言し損なった ことが「伝達ミスによる事故の重要な要因」だったと結論付けている。とのこと。 現代は多様性の時代だ。 だからその多様性というのはいったいどういうことなのかということを本書で勉強した。 多様性というもやっとした概念を本書が少しは具体的に示唆してくれたように思う。 私が今の段階で理解したことは多様性とは人の話に耳を傾けることであるということである。(3/23記)