パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子
パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子【電子書籍】[ 内藤 了 ] これは、藤堂比奈子以前の、死神女史こと石上妙子の院生時代の話。 まあ、一種のスピン、オフですね。 当然かつての夫であった、若かりしころの厚田巌男刑事も出てくる。 そして本作の作品の特徴は、今までのシリーズのようなおどろおどろしさはなく、死体現象、微物を駆使しての純然たるミステリーだ。 本シリーズでは屈指の出来上がりだ。 だだどうしても検視を検死と書いたり、長野の事件を強引に警視庁が捜査したり、警察が明らかに不審な点がある死体現象に関し、自殺でおわそうとするなどの、現実離れした点は、枚挙に暇無い。 けれどもそういうミスを無視して読み進めば、本作のできの良さにびっくりしてしまうだろう。 連続女性殺人事件の犯人が、作中冒頭から出て死神女史に絡みついていたり、中盤、あっという間に白いカローラが出てきて、なだれを打ったように犯人が割れたりと‥、そこまではよろしい、 けれど、ミステリーリーダーにかかったら、残りページを計算したら明らかにもう一波乱来ることは十分予想できたし、しつこいほどの、サー・ジョージにかかる死神女史に対するアタックから、当然彼もまた何かに絡んでいるだろうなとういことがわかる。 しかしそれにしても、内藤の現場描写力は鬼気迫る。 死体現象について、かなり勉強したものと思う。 それを磨き抜いた文章力で表現して、読み手にその状況をはっきりさせるのだから、その才能は半端ない。(1/20記)