テーマ:本のある暮らし(3185)
カテゴリ:手に取った本の続きです
さて、なぜスズランの花=『エマ』かと申しますと、作品を読まれた方はお分かりだと思いますが、このスズランの花が作品の転換点で重要な役割を果たしているからなのです。 その場面とは、コミック版では2巻目の終わり、14話の「さよならエマ(後編)」と3巻目の15話「風」、小説版では2巻目の終わりで、アニメ版では最終話となります。ケリー婦人が亡くなって行く当てのないエマは、ジョーンズ坊ちゃんとの別れも果たすことなく(実は、すれ違いになってしまったのですよね)ロンドンを後にキングクロス駅よりグレート・ノーザン鉄道に乗って生まれ故郷(と思しき土地)へと向かおうとします。その時、キングクロス駅で昔の自分の姿を映したような幼い花売りの少女からスズランの花束を買います。そして、遅れて駅に駆け込んだジョーンズ坊ちゃんも同じくスズランの花を買うのですが、その目には涙が…。その時、花売りの少女が坊ちゃんに対して「スズランの花ことばは、『幸福が戻ってくる』っていうんですよ」と言います。この場面の描写はコミックやアニメより小説版の方が細やかですね。さすがは、久美佐織さんです。ちなみにスズランは別名、「君影草」と言って「遠くにいる人を忍ぶ花」という意味があるのです。さすがですね。花に二重の意味を持たせて、物語に深みとその先の展開をさりげなく匂わせるなんて。ちなみに『紫雲国物語』でも同じように花に二重の意味を持たせる洒落たことをやっています。 ちなみに、このスズランの花が縁となり(その他、駅で間違えてエレノア奥様に声をかけられたとか、列車のコンパートメントがかしまし娘のターシャと一緒だったとかありますが)、エマはハワースのドイツ人貿易商、メルダース家に雇われることなるのです。 次に、スズランの花が出てくるのが最終話「しあわせの花」です。艱難辛苦を乗り越え、ようやく二人で一緒になることを決意したジョーンズ君とエマ。そこで、二人は夜会へと出掛けることとなります。これは推測するに、田舎、ハワースに戻ってからと言う点と、ドロテア奥様の「練習台として最適」という言葉から、社交界へのお披露目的意味合い、つまりエマがジョーンズ君と一緒に新しい世界へと踏み出すことを暗示していているのだと思います。ラストのシーンでは、7ページも使って夜会へ出掛けるシーン、ジョーンズ君がエマの手を取って自分の腕にまわす様子を実に細やかに描きこんでいます(森さんの執念ですね、これは)。最後は、1ページ丸々使って正装したジョーンズ君と着飾ったエマ(着飾るまで、またまたオーレリア母様とドロテア奥様のおもちゃ、服はあーだ、靴はどうだ、髪型、アクセサリー、扇、手袋等々の品定めの事ですが、にされています)が扉に向かって進むシーンで終わっています。うーん、この続きも読んでみたいな~(でも、この辺りで終わっておかないと収拾がつかなくなるような気もしますがね)。 この場面では、スズランの花は「花」そのものでなく、香水として出てきます。オーレリア母様とドロテア奥様が着飾ったエマに対して最後の仕上げ、香水選びをしている時にふとエマの目に入ったスズランの香水。思わず手に取ったエマに対してドロテア奥様は「雰囲気にも合うし」と言ってスズランの香水を選びます。そして、ジョーンズ君も当然、スズランの香りに気づくわけです。その時の二人の会話と表情は…、『エマ』の7巻を買って確認して下さい。 あ~ぁ、ついに出たー!と言う感じですね。はい、森薫さんの監修の下、なんと1年もかけて打ち合わせを重ね(アニメと同じくらいの手間をかけているような気が…)、こだわりにこだわって作り上げた『英國戀物語エマ』のフィギュアだそうです。ちなみに、上段左からエレノア嬢、グレイス姉様(うーん、二人とも舞踏会仕様だ)。真ん中はハタキを持ったエマ(この画像ではわかりませんが、スカートのすそから猫が顔をのぞかせているのが…)。そして、下段左からヴィヴィアン&コリンのお子様組みと、なぜかハキムガールというセットになっています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[手に取った本の続きです] カテゴリの最新記事
スズランの
花言葉は 幸福が訪れる、幸福の再来、幸福のシンボル、 純潔、純愛 清らかな愛、繊細、優雅、 意識しない美しさ、なまめかしさ 謙遜 これを全巻読まれた方は まさにエマそのものでは無いでしょうか? ラストもスズランの台詞で終わっていますので 各所にスズランというキーを置いているのは にくいほどの配慮を感じます。 (2006年07月14日 12時34分12秒)
katu644さん、ご訪問&コメントありがとうございます。
>スズランの > >花言葉は >幸福が訪れる、幸福の再来、幸福のシンボル、 >純潔、純愛 >清らかな愛、繊細、優雅、 >意識しない美しさ、なまめかしさ >謙遜 > >これを全巻読まれた方は >まさにエマそのものでは無いでしょうか? > まさしくその通りです!!!本当に素晴らしい(感嘆符を二乗!) >ラストもスズランの台詞で終わっていますので >各所にスズランというキーを置いているのは >にくいほどの配慮を感じます。 ----- 本当に、森薫さんの『エマ』は心憎いほどの気配りが随所に感じられて、些細な部分まで描写が細やかに描かれていて、手抜き無し!と言うような、作品でしたね。 本編は終わりましたが、『コミックビーム』の9月号から外伝的読切作品が連載されるので、それが待ち遠しいです。初回は、若き日のケリー先生と旦那さんのダグさんの逸話と言う事なので。期待度が天井知らずで上昇中です。 (2006年07月14日 19時54分49秒) |
|