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俺とユーロとC.D.と・・・(何

凶作(何


しんしんと降る雪の下で、私は彼を待っていた。
一秒一分がまるで風のように過ぎ行く、とても速く
儚い「時間」という空間の中で、私は彼を待ち続けていた。

東京タワーのすぐ下に、ただ一人でいるちっぽけな私。
まるで世界から見捨てられ生きていく事さえ難しいような
孤児というイメージをも彷彿させるような・・・そんな感じの私。
それでも私は彼を待ち続けた。私一人で待ち続けていたなんて
事実は、正直私にとってはどうでも良いモノだったのだ。

時計の針は11時30分を差している。夜の賑やかな人並みも、
通り過ぎていく車や電車も、時間の経過と共に減り始める。
私はとても怖かった。いつしか私が一人になってしまうかもしれない、と
考えるだけで涙が出てきそうだった。
平常心を取り戻し、「彼を待つ」という意識をまた持ち始めた頃には
私の目には、大粒の涙が溢れていた。

「彼が来るんだもの・・・私は一人なんかじゃ無い・・・・!」

私は自分にそう言い聞かせ、涙を拭った。
今にも溢れそうな涙もその勢いを止め、再び私は元の意識に
戻る事が出来た。それでも私は、やっぱり安心感の存在しない
この世の中に、不安を感じていた。

愛する人を手にした安心感はあった。
それでも、自分という存在が裏切られる事が怖かった。
私は彼を愛していたから、彼も私を愛しているという意識を
もって行動していた私が、初めて自分の理念に疑問を向けた瞬間だった。

「・・で・・・でも・・・・怖い・・・よぉ・・・・」

私は待ち続けるのが怖くて怖くて仕方なかった。
私みたいなちっぽけな存在を待ってくれる人が本当に存在するのか?
・・そして、私は本当に彼を愛しているのか?
答えが直に「真実」となって現れる今、私は非常に大きな
恐怖感を抱いて、彼を待ち続けていた。

・・・やっぱり、怖い。
・・本当は私なんて、愛されてもいないのかもしれない・・・

街は一面のクリスマスムード。華やかな飾りつけにライトアップされた
ツリーが光る中、私はただ一人、恐怖感を抱いていた。
外は明るいのに、明るくなれない自分に嫌悪感を抱いたりもした。それでも
私は、今の自分が本当の自分であると信じていたいからこそ
自分にあえて嫌悪感を抱いたのかもしれない、と言い聞かせた。

・・自分が自分でない気がする。
それでも私は今の自分で、彼を待つ資格があるのだろうか・・・?
・・身体が少しずつ震え始めたのが分かった。

・・・寒い。
・・・愛する人を待っているのに、こんなに寒いだなんて・・・

「冷たいよぉ・・・・・寒いよぉ・・・・・・」

私はもう弱気になっていた。彼を待っていたなんていう事実も
何処かへ行ってしまうような、そんな寒さだった。
父母を失ったその時から、私の側に寄り添ってくれた彼がいたから
私は手に入れられた「暖かさ」があった。

「・・・本当に・・・・来てくれるのかな・・・・・?」

私はもう、半信半疑の状態になっていた。
彼がもう私を裏切ったのなら、私も彼を裏切ってやる・・・・私は
彼に「怒り」さえも押し付けているような状態になってしまった。
愛している筈ならば、本当にこんな事はしないんじゃ・・・と
そんな事も思ったが、今の私にはそうした事実は自分を揺るがす
キーにさえもならなかったのだ。

・・・・誰かの声がする。
・・・とても親近感のある、暖かい声が・・・・・・


「・・・・やぁ。遅れちゃった・・かな?」


・・・彼だ。

私はすぐさま彼に抱き付いた。もう彼に対する「怒り」なんて
何処かに吹っ飛んでしまったかのような、寒さを振り切る
勢いで彼に「ぎゅっ」と抱き付いた。
私が本当に愛しているから、彼に出来る行動なのだと
私は改めて「彼」の愛を感じられたような、そんな気もした。

「・・・寒かった・・・冷たかった・・・・・!」
「・・ゴメン・・・結構遅れちゃったのは分かってたんだけど。。。」
「・・・バカぁ・・・・・バカバカバカぁ・・・・・!!」
「・・・・・でもさ・・・・」
「・・・・何?」


「・・・・・君の身体、とっても暖かかった・・・・・」


「・・・・・・んもぅ・・・・」

私は彼の言葉を聞いた時、本当の「安心感」を手に入れる事が出来た。
ちょっぴり彼の遅さに怒ったりもしたけれど、それが本当の彼の姿だと
知る事が出来た私の心は、ちょっぴり嬉しかった。
彼がいるから、彼がいたからこそ私は彼を抱く事が出来た。
彼無しにして、私は生きていけないのかもしれない・・・そう思う時さえあった。

「・・・で、後もう少し・・・・・だよね?」
「・・・・・・うん。」

私は彼と、そっと消灯の時間を待っていた。
街を象徴する強大なる光が姿を消したその時が、私が「彼だけを信じている」と
言う事が出来る、唯一の瞬間なのだから・・・・・。

「・・・・・・っ・・・」

光は消えた。まるで街全体が暗黒に包まれたかのように
とても暗く、恐ろしささえ感じるような街並みが、其処にはあった。
まるで、本当に夜と言えるような・・・ちょっぴり怖い街が・・・・

・・・それでも、私は怖さなんて感じなかった。

彼という存在が、今も生きているから。
優しくて素敵な彼が、いつでも私の側にいてくれるから。

・・・そして、

・・・私が何時までも、彼という存在を愛しているから・・・・

「・・・・ん・・・・・」

・・・私は彼と唇を重ね合わせた。
・・まるでとろけてしまいそうな、甘くて素敵なキスを、私は彼と・・・・・


「ぶっちゅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・」

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Hahaha...全部フィクションの凶悪作品です(何
昨日硬式ハンガーが作った一発ネタを改良して
更にドラマチック風(何)に仕上げてみたのですが
こりゃ駄目だ!何かいつもの手腕が発揮されんぞ!orzorz
・・・でもやっぱりラストの「ぶっちゅぅぅぅぅ・・・」はマズイな(笑)。

2006年12月25日製作
2006年12月26日リメイクして公開


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