第二話ある日、俺は突如として考え始めた。『何故ヤツの様な妹が俺にはいるんだろう』と。 元々、親の勝手な都合で産まれたのかもしれないが そこら辺を考えると頭が痛くて仕方が無い。 あえて考えないようにしながらも、つい脳裏では考えてしまうのが現状であり その答えが中々見つからないってのも困ったモノだ。 しかしそんな俺を全くと言っていい程気にしていない御気楽者・雀は 勝手に俺に寄り添っては新聞を見たりテレビを横取りしたりとかなりの悪戯っ子ぶりを見せている。 『あれ、お兄ちゃん、写真集とか書いてあるけど、もしかして こういうのが趣味だったのかなぁー・・・?』 『うわっ、す、雀ッ!・・・何だよいきなり。』 たまたま見てただけだっつーの。第一普通にテレビ欄の近くを見てるだけで どうしてそう「エロ」だと思うのかどうかっていうのが疑問だ。 『だってさぁ、ホラ・・・お姉ちゃんのおっきなおっぱいとか水着姿とか 沢山あるじゃないのよー』 『だから、俺はそういうのは趣味じゃないって。第一こんなの見てどうするって言うんだよ。』 『萌える』 ・・・え、コイツ珍しい事言ったな。つーかその趣味の範囲を十二歳で知り始めたあたり、オタクの仲間入りも難しくは無さそうだが 個人的にそういう趣味に走るのは多少のこと避けてほしいと思うんだよなぁ・・・ 『・・・お前、何処でその言葉を知った?』 『流行語ー!ていうか、大分使われるようになったよね、この言葉。』 この時俺は確かに思った。「流行とは恐ろしい」と。 『・・・流行語、か・・・。』 『で、何で話を逸らすのさー。元はと言えばお兄ちゃんがあんなエッチな 所見てるからなんだよ?』 『うるせー!だから俺はエロじゃねぇって何回言えば分かるんだ!』 『裁判長として正当な理由が無い限り、私はその意見を認める意義などありません。』 さ、裁判長?気がつけばお前、妙なネタに走ってる気が・・・ そう思いながらもノリにノって、俺もつい言ってしまった。 『・・・よし、言ってやろうじゃありませんか。』 『なるべく自らの正当性のみを主張せず、世の公平さを含めた文章で 意見自体の正当性を表現して下さい』 『自らの身体の欲望が僕自身に沸かない限り、身体が決して性の欲望に 目覚める事は無く、胸や股間を見た所で僕の欲望が目覚めるだなんて 事実は決してありません。ましてや一般的な世論からすればこの年代に なってもエロと呼ばれる人物は少数ではありますが存在しないという 決定的な証拠が成立しています。性に目覚める者は早い内からその凄さに 目覚めるようですが、僕自身はそのような事実を断定した訳では御座いません』 ・・・何だこれは。つーかこんな意見で本当に良いのか・・・。 第一エロについてこんな一般的な生活の場で語る俺って・・・ 『・・・良いでしょう。貴方の意見を認めます。』 『やったー!これでついに俺は・・・!』 『オタの仲間入り!って事だね★』 『何がやねん・・・つーかこんなネタに引っ張り込むなよ・・・』 『いや、だって、毎日が平凡だと面白くないからさぁ、時にこういう遊びとかを入れてみるのって何かいいかなぁって』 『・・・マジで今度ブチ殺すぞお前』 ・・・平凡だと面白くないからって、どういう考えからその結論が出てくるか全く理解出来ない。子供とは恐ろしいモノだ。 ならば、そのような理由が出てくるとすれば、ヤツから直接あの理由を聞きだせるかもしれない。 俺はそう考えて、一発勝負に出た。 『あ、あのさ・・・』 『何?どしたの?急に改まって。』 『正直に言うんだけどよぉ・・・』 『だから何だって。早く言いなよ。』 『お前のような妹が、何で俺にいるんだろうな・・・って。』 『・・・』 その時、場に静寂の時が流れた。 しかしその答えはすぐさま、俺に帰って来た。 そっと微笑んだ妹の顔を見て。 『私には分かんないけど、お父さんとお母さんが死んじゃう前に残してくれた 同じ血を持つ妹・・・だと思うよ。』 『す、雀・・・っ!』 俺の眼からは止め処なく涙が溢れ出した。父母の死を、俺はこの目にしっかりと焼き付けていたからだ。 あの時の事なんてもう思い出したくないという俺の考えは脳裏を打ち破り、 封印された記憶が俺に流れてくるような想いがした。 『お兄ちゃん・・・仕方ないよね、今だけは・・・ 私の胸で、思いっきり泣いていいから・・・ね。』 父の死だけを見届けてくれた雀だからこそ言ってくれたこの言葉。 そして、アイツの胸には、母の温もりが隠されている事を、俺は知った。 そう、こんな奴が何で俺の妹なのか。 それは、死んだ父母が残してくれた、俺に対する愛情の表れなのかもしれない・・・。 -------------------------------------- 最初と最後で全く違う顔を見せるストーリーっす。 まあ、父母死んでちゃ泣くのも当然だわ。うん。とか自分なりに納得してましたよ^^; 因みに途中にある裁判長ネタですが、以前ハマったゲームの名残です。ハイ。 しかし兄妹モノって本当にネタが良く出て来ますね。気がつけば日常から出てくるようなものですから・・・いやホント^^; 僕も以前新聞読んでてたまたま写真集欄見てただけで 「エロ」って母に言われた事ありましたしorz 2006年4月16日製作 (Monkey / Mark Farinaは意外と良作かも・・・) |