第三話ピンポーン...ある日の夜、突如としてインターホンが鳴った。 元々客人さえも少ない俺の家にとっちゃ、俺達以外でインターホンが 鳴る事自体が「奇跡」とも呼べるべきモノだった。 『誰だ・・・こんな時間に。』 時計は既に午後7時を回っており、相変わらず雀にテレビは 占拠されっぱなし状態であった為、仕方なく俺がドアを開けた。 第一、夜のテレビ争奪戦には大方雀が勝利する場合があり、 今回の『リビングヶ関の戦い』でも雀に勝敗が上がった。 戦局的に一対一まで何とか道具を使う雀を素手で受け止めた俺だが、 秘策としての『火矢(俗に言うチャッ○マン)』を出し突如として 脅迫行為に入った為、仕方なく白旗を上げるしかなかった。 ・・・つーか、いつの間にリビングから盗ったんだ、アイツは。 気がつけば色々無くなってるだけあって、必ず夜の争奪戦に いざという時活用出来るアイツの瞬間的判断力というのは恐ろしいモノだ。 あ。客が待ってた。こんな事を考えている場合じゃねぇな。 そろそろ開けてやらねば。 『何方ですか・・・?うわぁっ!』 そう言うと、俺は突如として巨大な何かに倒された。 いや、巨大とか言うと彼女が怒るのは周知の事実ではあるが。 『ハーイ!久しぶりだわねー、雀ちゃん♪』 『わーい!広江ちゃんだぁ~!』 ・・・えっと、コイツの名前は『佐藤 広江(さとう ひろえ)』。 良くある苗字がある意味代表的な俺の同級生。アイツ自身の好意で 俺と雀との暮らしを時々手助けしてしくれるようにはなったんだが、 逆に言えば結構問題ある性格なんだよなぁ・・・。来る度にやたらと 雀を可愛がったり、突如として何か企画したりと ある意味でなくともとんでもないムードメーカーだ。うむ。 まぁ家事全般は万能なんで文句の付けようが無いのだが、そういう ハチャメチャな点さえどうにかしてくれれば・・・なぁ。 『ふにふにふにふにふにふにふにふに・・・』 『ちょ、触りすぎだよぉ・・・広江ちゃぁん』 『え~?だってぇ、雀ちゃんのほっぺがこんなにふにふにだからさぁ・・・』 『だからってそんなに触られても、ちょっと困るんだけどぉ・・・』 『だったら、もっと触っちゃお♪ふにふにふにふにふにふに・・・』 『やめんかぁっ!見てるこっちが恥ずかしいだろ、ボケッ。』 『あ~、さては優一くん、雀ちゃんのほっぺ触るのが羨ましいんでしょ?』 『んな訳ねえだろっ!誰が人の妹の汚い頬なんか好きになるかっ。』 『・・・ちょ、それは流石に聞き捨てならないよ、お兄ちゃん・・・』 目を向けた時には、雀の全体装備か完全に変化していた。 頭の部分に二つの蝋燭を付け、ハチマキか何かで縛ってあるあたり 明らかにアレの意識だと思うが、そこで衣装が足りないからって 何故体操服にしたのかが一番気になる。スゲェ妙だぞお前ら。 『・・・いや、何やってんだお前ら』 『呪いの準備』 ・・・ちょっと待て。マジか。マジでやる気なのか。 流石にやられるとこっちの身が後でどうなるか分からん。まだ一人暮らしを 始めたばっかりの身に天災なんかが降りかかったらそれこそ涙モノなのは 明らかに分かっている。資金的な問題もあまり良いモノではないし、 決して解決出来る様な状況ではないのに、俺だけ呪い死んだら どうやって生きてく気なんだ?・・・そう考え、俺は何故か 見栄を張るように言い張った。 『・・別にやってもいいとは思うが、俺が死んだらこの家どうすんだよ? たった六年のお前だけが稼いで生きていけると思うか?えぇ?』 何となく怖かったので最後に「えぇ?」も付けた。でないと、マジに 呪われそうな気がした。ただ、元はと言えば人の頬を批判しただけで 何故呪い殺されなければいけなかったのか意味が全く分からん。 そう言うと、雀は気を落としたかのように人形を、ぽと、と落とし その場に挫折ポーズになった。そんなに落ち込む事じゃねえ気がする。 『そうだった!こんなにブスで親父臭いオタなお兄ちゃんでも 一緒に生きていかないと、私の生活は保障されないんだった・・・!』 『そうだよ雀ちゃん!こんなに辛い細っちょオタオタお兄ちゃんでも 一緒に生きなきゃいけない運命なのよぉ・・・!』 『お前ら二人、磔にして殺すぞ。』 ・・・正直言って今の一言で腹が立った。親父臭いとか言うんじゃねぇ。 確かにもう18にはなったが、細っちょとは何だ。そこまで俺は ヒョロっとした身体なんかになってねえぞ・・・。 『・・・えぇ~、折角面白かったから呪ってみようと思ったのに。』 『個人的にその意見に賛成かしらね。面白くなったら呪ってみるって 何となく楽しそうじゃない?』 『何処がだ~!つーか俺を呪うとするなぁ! いつ死ぬか分かんねえじゃねえかよ、畜生ッ!』 お遊びですか。そうですか。と言わんばかりの会話。 つーかこんな奴等と共に、本当に生きていけるのだろうか、俺は・・・? ・・・とりあえずその後ではあるが、まぁ広江は一応部屋の掃除とかも してくれたし、普段は俺がやる食事も今日は作ってくれた。 元々そこら辺に関してはかなりの腕を持つ広江にとっては、「ついで」として やってくれたのかもしれんな。・・・ただ、頼むから呪い殺さないでくれ。 『わーい!大好きなカレーだぁ!』 子供のように舞い上がる雀。・・・いや、子供かコレは。 俺の方の色だけ微妙に違うような感じがしたが、目の錯覚だったらしい。 ・・・いやはや、恨みとは恐ろしいモノだ・・・だなんて思ったりして。 『・・・あのさぁ、俺のだけ毒入り、とかいうオチはねぇよな?』 『特に何もしてないわよ?それ普通のカレーだし。』 『・・・だよな。イヤ、流石に俺、呪い殺されるかな・・・なんて思って。』 『ま、まだ信じてたの!?意外・・・。』 『意外って、あそこまで暗い顔されちゃ信じられなくもなるだろうが!』 『ウソウソ。あんな顔してゴメンね、ホントに☆』 ・・・と言って、何故か俺の頬にそっとキスをした広江。 何となくだけど、迷いと幸福感に満ちた夕食だった。 ま、何にせよ疲れた一日だったな・・・。いきなり広江が来るや否や 突如として雀とは絡むし俺を呪い殺そうとするしで、とにもかくにも アイツの恐ろしい人間性が改めて表に出た気がする。 『じゃーねっ!今度来れるのはいつか分からないけど、 ま、同じ学校だから大丈夫でしょ!』 『じゃーねー、広江ちゃんっ!』 『・・・広江ちゃん、行っちゃったね。』 『相変わらず来てから帰るまでかなりハチャメチャだったなぁ・・・』 『嗚呼、男の背中が哀愁を誘うぜ・・・ さよならは言わねぇ。在るのは、愛と仁義だけだ・・・』 『・・・?それ、誰に教わった?』 『広江ちゃん♪』 ・・・あの野郎・・・一体何を雀に教えたんだか・・・。 今度きたらマジでブチ殺すぞ・・・。 ----------------------- ・・・ハイ。ギャグ一直線です。あんまり派手さは抑えてしまいましたが^^; 要するに新キャラ登場よ!みたいな雰囲気ですよ。ええ。 因みに雀と揃わせてみたのは今回が初めて。初登場にしてあのコンビの良さですが昔からの付き合いって事で。 つーか今回かなり手抜きかも?orz 2006年4月23日製作 |