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俺とユーロとC.D.と・・・(何

第4話『見えない心』

プルルルル...プルルルル...

ある日、心菜の携帯電話が、突如としてうなりを上げた。
誰かからの呼び声である事は、私も分かっている。
それが誰なのかは、勿論私が知る余地も無い。
私と心菜の家族以外なのかな・・・?なんて考えてもみたが、それだけ
考えていると頭が痛くなって仕方がなかった。
私は気付かぬ顔をしている心菜を見て、そっと指摘してあげた。

『電話、出ないの?』

普段とは違いちょっと焦ってる感じに見えた心菜に、私はどう言えばいいか
少し戸惑ってしまった。でも心菜は、私に対して口を開いてくれた。
ただ、いつもとは何となく違う雰囲気がする・・・私はそう感じた。

『・・いいの。どうせお母さんだし。』

『ふ~ん・・・』

そんなに遅くまで何処行ってたの?と母に聞かれるのが怖いのか何なのか、
いつもと違う笑顔を私に見せた心菜。
でも確かに、私は今の彼女を見て、「変だ」という考えはより強くなった。

『絶対、いつもの心菜じゃない・・・』

私はそう思った。むしろ、同じ親友だから分かってしまう事実なのかもしれない。
何かを隠しているような、そんな口調で私に対して話しかけている事に
私は気付いた。何かを必死に隠そうとしているような、そんな感じの顔だった。

頬は赤く、少し指摘しただけでここまで顔が変わる心菜なんて
今まで見た事が無い・・・私は、心菜に存在する見えない「何か」を
知ってしまった気がした。自分自身で「そんなモノはない」と拒否しても
真相と現実はそれを鮮明に表している。私は信じたくない本当の心菜を
この目で見てしまったのかも・・・と、つい深く考えてしまった。

そんな目で見ていながらも、私は何食わない顔をしている心菜を
見る事が、何よりの幸せであった。それが偽りであったとしても
せめて、私の身体だけは癒して欲しい・・・そう考えていた。
次第に私は、心菜に対する先程までの真相を自らからシャットダウン
する体制に入り、笑っている心菜を見る事だけに集中しよう、と
考えたのだ。

私は以前と変わらないままの心菜を見ながら、
卒業式までの思い出づくりを続行している。

・・・卒業式まで、残り3日・・・。


『ねぇ~飛織、ここでプリクラ撮ってかない?』

『プリクラ?良いと思うよっ。』

『んじゃま、撮っていくとしますかぁ~♪』

そんな気楽な会話を交しながら、私と心菜はプリクラを撮った。
とても綺麗に、そして良く映っていた。
互いの笑顔がまるで美術品のように、光り輝く程のインパクトを放っていた。
勿論、先程の何気ない会話も、私と心菜だけにしか作れない
最高の『思い出』の形として、心の内に永遠に残る事となった。

こんな気楽な事でも、友情って残せるんだなぁ・・・

そんな事実をしみじみと知った私に、撮った画像を眺めている
心菜は、笑顔で私に話しかけてきた。
まるで天使のような、光に満ちた笑顔だった。

『綺麗に映ってるねっ!』

まるで子供のような元気さを私に振り撒いて、心菜は見ている。
そう、まるで昔の私達のような、変わらない友情がそこにはあると、私は
確信した。
ただ、泰斗の事を思うと、心菜の顔を見ていても、どうしても落ち込んだ
顔になってしまう。どうしてそこまで、私は泰斗に嫌われてしまったのか、
私は考えていた。

本当はもう、私は『好き』だなんて考えていないハズなのに・・・

『・・・うん。』

少しブランクを空けて、私は答えた。本当は、私の今の状況からでは
とてもじゃないけど心菜のような明るい顔で答える事は出来ない。
だから、せめてもの礼儀として、精一杯今で表現できる「笑顔」で
私は答えた。

『そうでしょそうでしょ!?ほら、特に飛織の顔なんかぁ~』

『な、何よっ・・・』

『この柔らかいほっぺなんかホラ、ぷ~にぷに♪』

『さ、触らないでよっ!ちょっと・・・恥ずかしいじゃないっ・・・』

『ゴメンゴメンッ。可愛く映ってるんだし、これはこれで良いと思うよ。』

『そ、そうかな・・・?』

『そうだよそうだよ!だから、そんな恥ずかしがらないで・・・』

『その手は・・・さては、また触る気だなぁ~?』

『あはははっ。バレちゃったかぁ・・・♪』

そんなのん気な会話が、私には嬉しかった。
この時の心菜は、一際輝いていた。今落ち込んでいる私をも
癒してくれるような、綺麗で自然な笑顔だった。私はこんな友を持てて、
本当に幸せだなぁ、と感じた。もはや、さっきまでの思いはその笑顔で
消えて行き、私は再び明るい笑顔を取り戻した。

ただ、忘れ去られた「恋」は何処へやら・・・

私には、また少しずつ影が潜み始めた。
実感できていても、避ける事の出来ないこの状況に、私は抵抗さえも
しなくなっていった。
自分は、そこまで暗い人間じゃない・・・
短時間の感情の激しい変化を繰り返している内に、自分が自分でなくなるような
感じを私は覚えた。

『これは、本当に私なのだろうか・・・』

また一つ、疑問が加わった。こんな調子であと3日だけど、本当に私は
泰斗の元へと戻れるかな・・・?
未だに諦めきれない僅かな希望は、私を影と光の間で「困惑」という名の渦へと巻き込んでいった。

『さ、行こ!』

彼女の笑顔に釣られながら、私は心菜と手を繋いで、また歩き始めた。
そう、これがあの疑惑の「全て」となる事も分からないままに・・・

歩き始めて数分後。心菜は、どこかの人とぶつかってしまった。

『きゃぁっ!』

叫んだ頃には時既に遅く、心菜は歩道にバタンと尻もちをついてしまった。

『ご、ごめん・・・』

私は目を疑った。しかし、真実はそれを見捨てなかった。
これは夢ではないのかという衝動にも襲われたが、自分の瞳からは
その全てを真相だと認める映像を映し出していた。


・・・そう、心菜とぶつかったのは、泰斗だったのだ。


『い・・・いいよ。さ、お先に』

泰斗はそう言われると、私を横切り、ゆっくりと歩き出した。
私はただ立っている事しか出来なかった。

私は心菜の「表情」にこれまでに無い程の変化があった事に気付いた。

今までに無いような、ドキッとした顔。
そして、途端に私に『何か』を教えるかのようにちょっとだけ私に振り向いた心菜・・・

私は何を信じればいいのか分からなくなった。
でも、全てを知れば否が応でも真実を受け止められると、私は強引ながらに
結論を出した。

『どうしたの?は、早く行こうよ~。』

ちょっぴり焦った感じの顔をしている心菜を見て、私は途端に
「ここで忘れちゃいけない」と、全てを知る決心をした。
そして、己としての決意を決めた私は、正直に心菜にこう聞いた。

『心菜・・・』

『な、何・・・?』


『心菜は泰斗の事、どう思ってるの・・・?』


聞いてしまったという後悔と衝撃が、私を襲った。
でも、きっと私の予想は裏切らない答えになるだろうと、少しでも
真実から逃げようとする私の心は、以前としてその事実を否定している。
しかし現実は、全てを映し出した。


『・・・好き、泰斗君のこと・・・』


『・・・っ!』

私は全てを知った。終わらない問が、一つ解かれた気がした。
思ってもみなかったようなこの事実。私はどう認め、これからどのように
心菜と接していけばいいか・・・
私の心は更に終わることの無い迷宮へと入って行く事を、確かに実感してしまった。

卒業まで、あと3日。

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うぁー、疲れたorz
メチャクソ疲れました。正直言って念入れすぎました^^;
今までに無い程プリクラシーンに和んだような雰囲気を
詰め込んだような・・・そんな感じさえしてきます^^;
ただ、実質どうかと言うとあまり女の子らしさが出ていないのは
書いてる僕自身が男だから・・・?orz

2006年4月19日製作


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