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俺とユーロとC.D.と・・・(何

第12話『出発点』

私と泰斗の関係も、少しずつではあるけれど
本当の「恋人」として、お互いを認めていくようになってから
ちょっとスローだけど、それでもスムーズに進むようになっていた。
今までと違うカタチで私にアタックした泰斗と、それを
受け入れる覚悟を決した私。
様々な想いを重ねながらも、決して「嫌い」という感情をお互いが
見せる事は無く、この恋は「偽り」を残して進行している・・・。

だから私は、泰斗に「全て」を言って、もう一度偽りの無い
恋人として、仲良くなりたい。
あの卒業式で、私は言えなかった事があるから・・・。

『んん~・・今日も、やっと終わったかぁ・・・』

ちょっと欠伸しながら言う私。高校に入ってからの授業時間の
増加等で、やはり一日が長く思えるようになってきた。
それでも毎日の睡眠時間があまり無いのか、多少授業中
寝ちゃうようになったのは、ちょっとマズいかな・・・なんて苦笑いしながら
私はバッグを持ち、帰ろうとしていた。
だけど、私が言いたかった「全て」を、泰斗に以前として話して
いなかった事に気付き、ちょっと不安にも思えてきた。

『泰斗にはまだ何にも言ってないけど・・・
     大丈夫かなぁ、泰斗に言わないで・・・』

「偽り」を残して進み始めた恋は少しずつその形を変え始め
時期的にはまだまだではあるけれど、それでも大分お互いがお互いを
「愛する」という感情になっていく事を実感出来るようになっていた。
それでもやっぱり大切な人に、嘘をついてちゃいけないと考えた
私は、必死になって泰斗を探し始めた。

『泰斗~・・・』

人気が無くなった廊下に、私の泰斗を呼ぶ声が響き、その音は
重ねるように奥へ奥へと響いていく。
しかしその声に答える者は誰一人としていなく、私はただ泰斗だけを
探して、西へ東へ歩き回った。
それでも泰斗は見つからない。どうしても諦めきれない私の中では
少しずつ涙が落ちてきながらも、必死になって諦めようとする
私を受け止めていた。

「こんな時に限っていないとしても、泰斗は絶対何処かにいる・・・
                  だから、諦めないで、私・・・!」

自分にそう言い聞かせると、落ち気味だった私はまた気を取り直して
泰斗だけをただひたすら探し続けた。
何がどうなっても、泰斗がいなきゃ私は駄目だと考え続けていた。

「他の誰でもない、あの人だけにしか言えない事がある・・・」

この考えを決して曲げようとしなかった私は、意地でも泰斗を探した。
隅から隅まで、はたまた体育館まで私は探し続けた。
それでも私は、この学校内でひたすら泰斗を探そうと思っていた。
別に拘る事も無かったハズだが、どうしても私の考えは曲がる事を
知らなかった。

だって、ここじゃないと、泰斗に言えない気がしたから・・・。

そう考えてちょっぴり呆けていた私の前に、泰斗が突如として現れた。
何故?さっきまで何処にもいなかったのに・・・?と、私は目を疑った。
でも確かにこの現実に、泰斗は私の前にいると、私は現実を鮮明に、且つ
確実に受け止めた。

『ん?どうしたんだ、そんな顔して突っ立ってて・・・』

『・・・・あ、あのね、実は・・・』

『どうした?用件なら早く言ってくれよ・・・』

ちょっと急かしている泰斗を見ながらも、私は恥ずかしくて
中々言い出せなかった「真実」を、心菜のあの時の台詞が
横切った瞬間、私の身体から無理矢理出されたような感じになった。

「飛織は、ただ純粋に、泰斗君が好きじゃなかったの?」

この一言が響くと共に、私の身体は本能的に反応を返し
泰斗に対して、その真実が言えるような状態になっていた。
私はすぅーっと息を吸うと、深呼吸をし、勇気を持って泰斗に言った。


『実はね・・・私、一回だけ、泰斗の事を嫌いになっていたの。』


私は全てを一言で話した。現実に存在した、私と泰斗の全ての事実を
この夕方の廊下で、私は泰斗に言う事が出来た。
それが嬉しさに溢れたモノではなかったという事はちょっと後悔もあったけど
私は自分の言った事に間違いは無かったんだと、改めて胸を張った。

『飛織・・・』

ちょっと残念そうに、でも話した事を素直に受け入れてくれたような
顔で私を見る泰斗。其処に笑顔は無かったけど、その真実を
受け入れてくれた事に対しては、本当に優しくて良い人だな、なんて
思ってもいた。

『・・・本当はね、あの卒業式の時に話そうと思ってたの。
でも、そのチャンスを逃しちゃってからは、中々言い出せなくて・・・
だから、今になって言えると確信してから、泰斗を探し続けて
今、ここで言う事が出来たの・・・』

『・・・』

『言い出すのが遅くなっちゃって、本当にゴメンね。
でも、言い出す事が出来て、今の私は本当に嬉しいと思う。
確かに今まで隠していて本当に悪いとは思っていたけど、これで
正直に、泰斗と付き合う事が出来るし・・・』

『飛織・・・』

正直に、ためらう事なく全てを話した私を見て、泰斗は形容し難い顔を
していた。それでも泰斗は私の話を正直に理解してくれたような顔をしていて、
今までの私を見る目と同じような目で、私を見つめ続けてくれていた。

『・・・話は分かった。ただ、いくら嫌いだって思っていても
           今好きと思っているのなら、それで問題ねぇと思う』

『・・・』

私を慰めるように言ってくれた泰斗が、嬉しかった。
どんな時でも側にいてくれた人だからこそ、そして、私が好きだった
からこそ、泰斗は私を宥めてくれたのかもしれない。
私はこれまでの真実を話した後の冷めた気持ちとは違って、何処と無い
暖かさに包まれた気持ちになっていた。

『俺だって、中3初めの頃はお前の事ちょっと嫌いになってたし、
何処がいいのか分かんねぇ、って感じにはなっていた。
だけど、何時になっても変わる事ないお前を見ていたら、俺は
他の奴には無い「良さ」を持っている・・・と、素直に確信したんだ』

『・・・・!』

泰斗の口から出た正直な気持ちを、私は嫌いになる事なく直球で
受け止めた。私は確かながらに泰斗のもっていた「真実」を
この身体でためらいも無く受け入れる事が出来た・・・。

『だから、昔は昔で、今は今だ。
今、お互いが好きだって思ってるんだから、嫌いって思ってちゃ
この恋なんて、何時になっても進まないと思うぞ?』

『・・・泰斗・・・!』

私は泰斗に抱きついた。全てを受け入れ、そして優しく
慰めてくれた泰斗が、私の前にいてくれた事を、本当に嬉しく
思った。こんな昔のような泰斗が、変わる事なく此処にいる事に
私は本当の「幸せ」を感じられた。

『・・・だから、これからもお互いを考えて
一緒に、側にいてくれよ・・・な?』

『うん・・・うんっ・・・!』

私は泰斗の言葉が、本当に「勇気」と「暖かさ」を持ち合わせている事を
気付いて、改めてその懐の中で言う事が出来た。
ただただ頷いているだけでも、私は泰斗がいてくれて
本当に良いと思う事が、出来た。



そして、この場所から
 私達の恋は、再び「出発点」を迎えるであろう・・・



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ちょっとノリ入ってますが、今回は比較的
原作の設定に沿うようにしたのに、泰斗の性格がまるで違いますねorz
何故かやたらと包容力のあるヤツになってますよ、えぇ^^;
とりあえず原作からの続きモノですが、まだまだ続きますよっ。
多分10くらいで終わる・・・かな?^^;
原作なくとも充分レベル低くて本当にスイマセンorz

2006年5月12日製作


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