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俺とユーロとC.D.と・・・(何

第13話『それぞれの想い』

新たな出発点に立ち、再び加速するかと思っていた私の恋。
でもその予想とは裏腹に、どうしてもお互いの考えの違いに
ケチをつける問題が多発し、結果としてズれた関係に発展して
しまった、私と泰斗。

あんな事なんて、言わなければ良かったのかな・・・?
やっぱり、私の『嫌い』という感情を、一時期だけでも表したと認めた
泰斗は、やっぱり私の事を怒っているの・・・?
ちょっと心の迷いが残っていながらも、今の私にそんな事が
言えるワケが無いと考え、ちょっと意地を張っていた。


思い出してみればあの日、突如として二人に亀裂が起こったんだ・・・


『泰斗~、今日は何か用事ある?』

『ん・・・?いや、別に何も』

『そっか・・・。まぁ、そうと言えばそうだよね』

放課後。時刻は既に4時30分を周っており、
少しずつではあるけれど、日が傾き始めた。
そんな中で、何となく泰斗の事を気遣うような感じで言った私。
でもこの一言は、泰斗にとって何故か強い衝撃を与えたらしく
まるで静かなる鬼のような顔で、泰斗は私を睨んだ。

『・・・・・』

『・・・た、泰斗・・・?』

『そうと言えばそうだって・・・
俺だって其処まで暇な人間じゃねぇんだぞっ!』

まるで私にいきなり怒る感じで怒鳴った泰斗。
思わずこれまでに見た事の無いような怒り顔を見て、私は思わず
今までの泰斗には無かった「怖い」というイメージを植え付けられた。

『泰斗・・・!?それは私だって同じだよ!
でも今日が用事が無いって、それはそれで当たり前として受け止めて
悪いだなんて事は無いじゃない!』

『それが日常的に思われるのが俺は嫌なんだ!
いくらちょっとした一日でも、用事が無いというイメージが人に
インプットされると、大抵毎日とか大きく考えちまうのが普通なんだよ!』

『・・・何で・・・あんな、ちょっとした一言なのに・・・!』

『それでもお前のような人間であれば当然だ!
今になって言うのもアレだが、一度人が「嫌い」だと思った人間は
もう一度でも何度でも、嫌いだと思う時があるのと同じなんだよ・・・!』

『・・・泰斗ッ!』

私は過去に話した「全て」を泰斗に言った事を、今になって後悔した。
あの時の泰斗とは違うような怒り心頭の泰斗を見て、私はこんな時に
その話を持ち出してくるだなんて・・・と、恨みさえも感じていた。

『分かったか、飛お・・・!?』

『・・・もうっ、知らないっ!!』

私はそう言って、涙を振り切って夕方の高校を飛び出した。
傾き落ち行く夕日を背に、私は帰り道を走りぬけた。
もう何がどうなっているか分からない程に私は心中で叫び続け、
自らの気持ちを制御できるまで、身体はただ反応し走り続けていた。

『・・・はぁ・・・はぁ・・・。』

やっと止まった頃には既に家の近くまで来ており、私は
今になって自分の責任だと何度も自分に考えさせた。
確かに泰斗は怒ってあんな事まで言ってしまったけれども、
元を考えてみれば全て私が悪かったんだと、今になって私を責めた。
それでも、泰斗との間に起こったあの喧嘩が、どう変わっても
互いの心に傷をつけてしまった事に、間違いは無かった。

「や、やっぱり、謝らなくちゃ・・・駄目だよね。」

私が悪いという事は分かっていた。それでも反抗し以前として私の
無実を貫き通そうとするもう一つの心は、私の身体を止める。
それでも私はひたすら自分が悪かったんだと自らに念を入れて
ひたすら言い聞かせ、私の心に潜む曲がった心を止めようとただ
努力し続けた。
それは泰斗が、どんな時でも私を守ってくれたから、そして
今のこんな状況であっても、信じられる泰斗がいると分かっていたからだ。

次の日。泰斗がああ言っていた事を、私は少しでも
脳裏に浮かべるとイライラして仕方が無い為、どうしても自分の
気持ちを抑えなくちゃ・・・と努力していた。
泰斗もそんな私を見て、あの時怒ってはいたけれど
今日は少し、私を心配するような目で見ていた。

放課後。昨日の衝突と比べて、今日は極めて静かだった。
私は「今なら言える・・・!」と確信し、機会を待って
泰斗に言おう、とひたすらチャンスを見続けていた。
私は泰斗が帰ろうとしているところを見て、いざと言わんばかりに泰斗を呼び止めた。

『泰斗・・・!』

『ん・・・?どうした?
今日のお前、いつもとチョイ違うから、ちょっと心配したんだぞ・・・?』

一日経つと、やっぱり少し怒りは治まったみたいだなとちょっぴり
安心感を抱いた私。それでも、言う事はきっちり言わなくちゃと
全てに覚悟を決めた私は、もう一度泰斗に素直に全てを言う為、
泰斗に話しかけた。

『昨日は・・・本当にゴメンね。
私、泰斗がそんなに忙しくて大変だなんて、思ってもいなかったから・・・
それで、後になって考えて、あんな風に逆ギレしちゃったけど
本当は私が全部悪いんだって、ちゃんと思ってたの。』

『そんな・・・謝るのは、俺も同じだ。
人の中には皆が揃って同じ考えを持つとは限らず、きっと
お前みたいに考えてくれる奴がいるって、俺はずっと思ってた。
それでも、あの時意地を張って怒っちまって・・・』

お互いがお互いを分かり合えていた恋人だからこそ、言えた謝りの言葉。
泰斗がいたから私は正直に謝れたし、泰斗も多分、私がいたから
こんな風に素直に謝れたんだと思う・・・と、私はそう考えた。
いつになっても変わる事の無いお互いの想いは、こういう時でも
通じ合うモノがあると、私は改めて実感した。

『・・でも、あんな風に言っちゃった私は確かに悪いし、
一度「嫌い」だって思っちゃった以上、確かに何度か嫌いだって
思っちゃうのは、今後もあるかもしれない。
それだけは、私の正直にそう言えると思う・・・。』

『・・・別に、それはみんな同じだ。一度覚えてしまった感情は
何度か心の奥底から返ってくるのは、誰しも変わる事が無い。』

『泰斗・・・』

『・・・ただ、これだけは分かってくれ。
いくらどんな事があって嫌いになったって、この恋は
何事もないように進行していく、という事を。』

『・・・時間、って事・・・?』

『そして誰が好きになって誰が嫌いになったって、俺は構わない。
お前が選んでそう思える人間なら、その意志に従えばいい。
別にそれにどう言っても、お前自身の選択なら、俺の言った事に反対したっていいだろう・・・。』

『た、泰斗・・・』

『ん・・・?』


『私、やっぱり好きな人は一人しかいないみたい・・・』



『・・・俺も、同じだ・・・・』



同じ胸の中で抱かれ、暖かみのある懐の中でそう思った私。
何時になっても変わる事の無い泰斗の素直な心に、私は本当に
昔のままで良かったと、改めて感じた。



やっぱり、私は泰斗が大好き・・・!



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疲れた~・・・。ちょっとノリ入ってますしちょっと暗めに仕立て上げた
つもりなんですが、やけに明るくてスイマセン・・・orz
更に作品レベルの低下には追い討ちをかけるような感じで、以前として
あんまり面白味が無いオチになってます・・・何でだろ?^^;

2006年5月12日製作


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