医療報道を斬る

2007/06/25(月)04:26

大淀病院産婦人科医師を支持します

医療(399)

無実でも 勝ち取る必要 ある辛さ  このブログは未明にアップすると前日の日付になってしまう。今はすでに25日。今日は大淀病院で起きた、妊婦が脳内出血で亡くなった事例の民事裁判が開始される日だ。確かに亡くなった患者はお気の毒だし、ご遺族も無念であろうことは理解できる。だからといって、罪のない当事者、場合によっては感謝しなければならない当事者に当たることは容認できない。亡くなったのは、あくまで脳内出血という病気のせいであり、医師のせいではないのだ。  大淀病院の事例とは、こんな事例。(記事内容はあくまで遺族側の視点) 「異常見過ごし死亡」 遺族、大淀町と医師を提訴 記事:毎日新聞社【2007年5月24日】 奈良・妊婦転送死亡:「異常見過ごし死亡」 遺族、大淀町と医師を提訴  奈良県大淀町立大淀病院で昨年8月、同県五條市の高崎実香さん(当時32歳)が分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、転送先で脳内出血で死亡した問題で、遺族は23日、病院を経営する大淀町と担当産科医を相手取り、慰謝料など損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。「大淀病院の担当医が脳の異常を見過ごしたことが死亡につながった」と過失責任を主張している。(29面に関連記事)  提訴したのは夫晋輔さん(25)と、転送先で生まれた9カ月の長男奏太(そうた)ちゃん。訴状によると、実香さんは昨年8月7日、出産のため大淀病院に入院。翌8日午前0時ごろ頭痛を訴えた後、突然意識を失った。産科医は頭痛と陣痛から来る失神と説明し、仮眠のため退室。同1時40分ごろ、両腕が硬直するなど脳内出血をうかがわせる症状が表れたが、来室した産科医は子癇(しかん)発作(妊婦が分娩中に起こすけいれん)と誤診して処置をせずに病室を離れ、同4時半ごろまで病室に来なかった。  病院は同2時ごろまでに転送先探しを始め、実香さんは19病院で転送を断られた後、大阪府吹田市の国立循環器病センターに同6時ごろ到着。CT(コンピューター断層撮影)で右脳に大血腫が見つかった。奏太ちゃんは帝王切開で生まれたが、実香さんは8日後に死亡した。  死亡診断書では同センター受診時、実香さんの意識が刺激にまったく反応しないレベルに達していたなどとする記載があり、遺族は「脳内出血の発症は午前0時ごろ」と主張。「これ以降、家族らが再三脳の異常を訴えたのに産科医はCTなどの検査をせず、手術でも回復しないほど脳内出血を進行させた」としている。  大淀病院の原育史(やすひと)院長は「今後、司法の場において(立場を)明らかにしてまいりたいと考えております」とのコメントを出した。【中村敦茂】 1)すべての患者を助けられるわけではない。 2)後から考えても完璧な行動を常にとることは不可能。  上記に反対する人はいるだろうか。反対する人は、病院に行ってはいけない。あなたに必要なのは神であり、医師ではない。医師をやっていれば、患者が亡くなることは避けられない。あのとき「ああしていれば」、それとも「こうしていれば」と言う後悔は常にある。患者が亡くなれば、医師だって自分を責めているのだ。周りから見れば無理もないという状況でも、自分を責めているのだ。そうした意識が、ほんの少しずつでも医療を向上させる。  結果が悪かったからミスだったのに違いない。あのとき違う対応だったら助かったに違いない。どちらも言いがかりだ。結果から見て違う対応の方が良かったとしても、そのときの状況では、実際に行われた対応の方が確率的に良かったのなら、問責されるいわれはないのだ。まじめな医師に対する言いがかりは、一瞬で医療を崩壊させた。  この事例ではCTを撮る必要があったのかが争点になるのだろう。確率的には子癇である可能性が高く、子癇であれば安静が第一選択となる。CTを撮らなかったからと言ってミスとは言えない。結果的には脳内出血であったのだから、CTを撮れば診断は付いた。診断は付いても治療は別だ。結局は何処も引き受けてくれなかったのだから、助かった可能性はほとんど無い。後出しじゃんけんの結果論でも助かる可能性は低かったのだ。  結局は避けられない死だったのだが、それでも医療体制の不備は責められるべきだろう。その責任はもちろん行政にある。それなのに、遺族だけでなく、メディアがこぞって医師の個人的責任に矮小化しているのは何故なのか。   ミラーサイト

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